西武ホールディングスは21日、所沢市の西武第二ビル「くすのきホール」にて第13回定時株主総会を開催した。同社代表取締役社長の後藤高志氏が議長を務め、審議では株主から鉄道関連の質問・要望が多数寄せられた。

  • 今年の株主総会では西武池袋線の運転体系に関する質問・要望も

同社は事業報告の中で、鉄道業の平成30年3月期の状況についても紹介している。メットライフドームでのイベント開催や「西武秩父駅前温泉 祭の湯」の開業、秩父エリアのプロモーション強化などにより、旅客輸送人員は前期比1.6%増(うち定期1.8%増、定期外1.3%増)、旅客運輸収入は特急料金見直し(2016年7月)や有料座席指定列車「S-TRAIN」の導入(2017年3月)もあり、前期比1.7%増(うち定期1.8%増、定期外1.6%増)だったという。

鉄道業を含む都市交通・沿線事業における対処すべき課題として、西武鉄道沿線の価値向上を図るため、「ホームドアの設置や西武新宿線連続立体交差化の推進、耐震補強工事等により安全を確保し、安心の提供に努めるとともに、有料座席指定列車や新型特急車両の導入、駅のリニューアルなどによりお客さま満足度の向上を図り、『選ばれる沿線』『選ばれる鉄道』を目指してまいります」とのことだった。

安比奈線用地や「飯能短絡線」は今後活用される?

今年の株主総会では、「第1号議案 剰余金の配当の件」「第2号議案 定款一部変更の件」「第3号議案 取締役8名選任の件」「第4号議案 監査役2名選任の件」「第5号議案 取締役の報酬額改定の件」について審議が行われた。

  • 株主総会は所沢駅前の西武第二ビル「くすのきホール」で行われた

株主からの最初の質問は「安比奈線が廃止されてしまいましたが、その後どのようになさるのでしょうか」という内容。安比奈線(南大塚~安比奈間)は半世紀以上にわたる休止を経て、2017年5月31日をもって廃止されている。質問に答えた西武鉄道取締役 常務執行役員の飯田則昭氏は、「そもそもの計画として持っていた車両基地の整備計画を廃止し、後に鉄道事業も廃止。今後に関して川越市および関係機関、地域の方々と検討を進めており、当社が所有する用地の活用についても同様です」と答えた。

相鉄・東急直通線が2022年度下期に開業予定ということもあり、「新横浜駅と直通電車が走れるようになるのではないかと思います。直通電車等は考えているでしょうか」との質問もあったが、飯田氏によれば「現時点で計画として進めているものはありません」とのこと。

別の株主からは、いわゆる「飯能短絡線」に関して質問が出た。「飯能駅の手前から右にカーブし、東飯能駅に直接進める土地が確保されています。あそこにレールを敷いていただければ、ダイレクトに西武秩父方面に行けるのですが、今後どのように活用していくのでしょうか」と聞く株主に、飯田氏は「現在の池袋線の輸送需要をみたとき、短絡線の整備はまだ実施する段階ではないと考えています。今後も将来の輸送需要を見定めながら、必要なことを進めていきたい」と答えた。

乗務員の労務管理に言及する株主も多かった。他社線との接続に起因する遅延の影響で、終点の駅で「折返しのため、乗務員がホームを走って移動するケースをときどき見かけます。ダイヤの構成上、かなり無理が生じているのではないか」との指摘もあり、西武鉄道からは「安定運行も大切ですが、ホームを歩くお客さまに怪我させる、あるいは乗務員自身が転んで怪我をするなど、あってはならないこと。折返し時間が定められている中でも安全な作業が行えるよう努めたい」との答えが返ってきた。

「石神井公園駅より手前の駅を軽視しているのでは?」

今年の株主総会では、椎名町~練馬高野台間の7駅(練馬駅は除く)を中心に、池袋線の運転体系に関する質問が続いた。これら7駅に停車する列車は各駅停車のみ。都心から近いにもかかわらず、次の列車まで10分程度待たされることもあるという。

江古田駅などを利用するという株主は、今回の株主総会で所沢へ向かうにあたり、「所沢行の各駅停車に乗ったら、練馬駅で清瀬行の各駅停車が地下鉄(東京メトロ・西武有楽町線方面)から来て先発すると放送があり、清瀬行に乗り換えたら『石神井公園駅で急行にお乗換えください』と言われました。同一ホームとはいえ、所沢に来るまでに2回乗換えがあるというのは、あまり便利な鉄道ではないと思います」。池袋線に対して「石神井公園駅より手前の駅を軽視しているのでは?」と常々感じているようで、「たとえば練馬駅で各駅停車に乗り換えるつもりで、池袋駅から準急に乗ったら、地下から上がって来る電車も準急。接続が準急と準急とか、一体どういうダイヤを作られているのかと不思議に思います」と話していた。

この発言に対し、飯田氏は「真摯に受け止めたい」とした上で、「現在のダイヤは各駅停車も含め、池袋線全体の利用状況をもとに作成しています。只今のご意見も踏まえ、今後のダイヤ作成に努めたいと思います」とコメント。同じ株主から「高架化されたときに運賃が上がったと思いますが、京王電鉄のように運賃を値下げする計画はないのでしょうか?」との質問もあり、「2004年以降、特定都市鉄道整備事業として運賃の一部を積立金に回していました。これに関しては、すでに還元が終了していることもあり、現在のところ運賃を改定する予定はございません」とのことだった。

沿線に住んでいるという別の株主も、「各駅停車の7駅、とくに複々線化された3駅(中村橋駅・富士見台駅・練馬高野台駅)はものすごく不便。つい先日、準急で石神井公園駅から各駅停車に乗り継いだときも、15分も列車が来ませんでした」と語る。列車遅延の影響もあり、準急から各駅停車への接続が行われず、特急・急行・準急の通過を待って石神井公園駅始発の各駅停車に乗ることになったという。「もう少し余裕のあるダイヤで、接続の改善もお願いしたい」と要望していた。

  • 西武池袋線を走る10両編成の準急(写真左)と8両編成の各駅停車(同右)

西武池袋線では、各駅停車のみ停車する駅も含めてホームは10両編成対応となっているが、池袋方面の各駅停車は8両編成で運行されており、10両編成の列車が通過する椎名町駅・東長崎駅・江古田駅・桜台駅に関して「何のために10両対応としたのか?」との意見も。飯田氏は「ホームこそ10両分ありますが、その他の運転に必要な設備がまだ整備されていないところです。また、朝の混雑時などほぼすべての電車が稼動している状況ということもあり、現在のところ各駅停車の編成を延ばすことは考えていません」と答えた。

審議は2時間近くに及び、計12名の株主が質問したという。鉄道関係を中心に、ホテル・レジャー事業や建設事業への質問もあったが、今回は埼玉西武ライオンズに関する質問は出なかった。株主からの質問に対して担当者が説明した後、議長を務める後藤氏が補足する場面もあった。

「第4号議案 監査役2名選任の件」に関連し、「2人とも任期が非常に長い。新しい監査役は選任しないのでしょうか?」と質問された際も、後藤氏は「(監査役2名が就任した)2004年は西武グループにとって大変な年でした。グループ全体の信用も毀損し、社外監査役を引き受ける方もいなかった。そういう厳しい状況の中、西武グループ再生のために引き受けていただいたことが、現在に至る大きなステップになったと確信しています」「昨今、日本を代表する企業の不祥事が頻発しています。日本の企業、日本のブランドに対し、海外からも疑いの目を向けられているところですが、初心を忘れないという意味でも、お2人が監査役として西武グループ全体に睨みを効かせることが必要と考え、選任した次第です」と補足している。審議の後は株主の拍手による採決が行われ、いずれも賛成多数により、原案通り可決された。