▼キラーチューン続きのラストスパートは、このライブ中の"Magic Hour"

気づけば空には三日月が浮かび、ちょうどツアータイトル通りのMagic Hourに。それに合わせて歌われ始めたのは、リリースを間近に控えた新曲「歌えばそこに君がいるから」だ。日没直後の薄明るい空のもと客席は夕焼けのように紅く染まり、自然とファンとが今日だけの、今日しか姿を表さないMagic Hourを作り上げた。そのなかで歌声を響かせる鈴木の表情は、まさしく快心のもの。時としてファルセットも交えて爽やかさも生みつつ、想いいっぱいなパワフルなステージングを展開。今の自分の近く、すなわち"そこ"にいる"君"すべてに向けての強い想いを込めた大切なDメロもしっかりと届けながら、最後まで力強く駆け抜けていった。

アニメ主題歌としては初めて作詞に携わったのがこの曲。「歌う理由は、やっぱり私はここにあるんだなぁと、すごくすごく感じました」と語り一礼すると、ラストスパートに突入。「もっと吠えろー!」とシャウトし突入した「Absolute Soul」は、コール部分を力いっぱい合唱するファンと、二者一体で作り上げていく1曲に。その補完し合う関係、この曲で強く見られたことはたいへん意義深かったのではないだろうか。そしてイントロの音色から大歓声の起こった「DAYS of DASH」では、この日は「投げキッスぶっ放しまーす!」と宣言。さくら色に染まる客席を前にした彼女の歌声は、爽やかかつ活力あるもの。単にパワフルなだけではなくみずみずしさを併せ持つ歌声で、最適に表現しきった。

しかし、彼女にとってのアンセムのひとつであるこの曲がここに置かれたのは実にズルい……などと思っていたら、その上を行くかっ飛ばし曲「Beat your Heart」がスタート。いきなり発射された銀テープが興奮を呼び、サビのラストは観客も声を合わせて大きな大きなコールに。さらに「今日いちばんのジャンプ見せてよー!」のシャウトに続けて、ファンも間奏で思いっきりジャンプ。その後押しを受けた鈴木も、ハイスピードなこの曲を持ち前のパワフルさをもって一気に押し切っていった。

そして最後は、エレキギターを提げての「Moment」。自ら作曲したこの曲を歌う頃には、野音はすっかり夜に。しかし彼女の力強いボーカルと、ファンとの視線のやり取りは最初から変わらない。2サビ明けにはギターと背合わせで笑顔でセッションもこなし、鈴木の「叫べー!」のシャウトに続いて大合唱がスタート。そして跳ねながらステージを往復し、ジャンプエンドで本編を締めくくった。

▼夢をまたひとつ叶えた彼女の、充実感と向上心

鈴木がステージを降りてからも、ステージ上に映し出され続ける"Magic Hour"のツアーロゴ。そこに向けての「こーのみん!」コールが、都会のド真ん中に響き渡る。するとinterludeをバックに鈴木が再登場し、プラネタリウムのようなプロジェクションマッピングをバックに「MY SHINING RAY」を歌唱する。ステージに映った星座、そして観客の白のペンライトという無数の星々に囲まれて歌う"星の歌"での彼女のボーカルは、この日いちばんのたおやかさを持つものに。表情の豊かさに壮大に歌い上げられたサビには、ペンも走らせずただただ聴き入るばかりだった。

この光景は、もちろんライブハウスでは決して観られないもの。それを新鮮だと語り、そして「星空の曲を夜に歌うっていう夢が、ひとつ叶いました」という喜びもあらわにしていた。

ラストに向けて、改めて鈴木から今日を振り返ってのメッセージ。ライブを通じての「気持ちが通じ合ってるような気がしてうれしかったです。『私、生きててよかったなぁ』って、すごい思いました」と素直な想いを口にすれば、さらに武道館やアリーナなどといった、大きな会場へファンを連れていきたいとも宣言。「叶うって、本気で思ってます」と意気を上げると、その先駆けとなるようなFCイベントやアジアツアーの開催を次々に発表。

アジアツアーでは国内も含めての開催となり、札幌や岡山等ツアーで訪れたことのない会場も。そんな「いろんな所に、自分の足で会いに行きたい」という想いを叶えた彼女は、「次への架け橋になるために、思いっきり楽しんで帰りたい」との言葉に続けて、「One day sky」を歌う。

冒頭の雄叫びで一気にアツさを取り戻しつつ、疾走感あるサビではファンのコールとともに一気に盛り上がる。2サビ明けには「みんなで跳ぶよー!」の声で全員でジャンプし、頂点へ向かってぐんぐんボルテージを上げ、ラストナンバー「This game」のイントロへ。

その長いイントロを活かし、「私にもいろんなことがあるように、みんなにもいろんなことがあると思います。それでも、一緒に走っていきたいなと思ってます!」とメッセージを送ってから、曲にその想いを託す。それを受けて歌われた1-Aメロは、とんでもなく心に響くものだったのではないだろうか。その後も自らの想いを思いっきり歌でぶつけていく鈴木。Bメロは旋律に合わせて跳ねるように歌いつつ、サビラストの歌い上げは“圧巻”としか呼べないもの。それはきっと、最高の"君"からの声を受けた鈴木自身のボルテージが、ピークを超えたからこそ生まれたものなのだろう。

ジャンプエンドで曲を締めくくると、会場中に手を振り挨拶。ここで鈴木が「写真撮りたい!」と急遽カメラマンをステージに上げ、ファンをバックに集合写真。さらに、始動を検討していた自身のInstagramの1枚目とすべく自身のスマホでも撮影。ふたつの"初"の記念を作ったところで、鈴木はステージを降りた。

初の野外ライブを見事に成功させ、4度目のツアーを最高の形で締めくくった鈴木。このかけがえのないMagic Hourでの経験や思い出を糧に、鈴木このみはこれからも高みを目指して走り続ける。

▼「鈴木このみ 4th Live Tour ~Magic Hour~」東京公演
2018.05.19@日比谷野外大音楽堂
【SET LIST】
M1.THERE IS A REASON
M2.Join us
M3.Blow out
M4.夢へ繋ぐ今
M5.アルカテイル
M6.東のシンドバッド
M7.Redo
M8.Sky Blue OASIS
M9.Tomorrow’s best
M10.miss blue(弾き語り)
M11.Love is MY RAIL
M12.My Days
M13.真聖輝のメタモルフォシス
M14.歌えばそこに君がいるから
M15.Absolute Soul
M16.DAYS of DASH
M17.Beat your Heart
M18.Moment
EN1.MY SHINING RAY
EN2.One day sky
EN3.This game