アーティスト・鈴木このみが5月19日、東京・日比谷野外大音楽堂にて「鈴木このみ 4th Live Tour ~Magic Hour~」東京公演を開催。ツアータイトル通り、詰めかけた2,500人以上のファンに一瞬にも感じられるような、あっという間のマジックアワーをプレゼントした。

  • 鈴木このみ

▼序盤から、ツアーのベストを更新する盛り上がり!

長期予報では雨が予想されていたこの日、蓋を開ければ雨は朝のうちには上がり、万全の状態での開催に。空に白雲と、その切れ間から青空も顔をのぞかせるなか、ライブスタートの時間に。SEの流れるなか鈴木が登場すると1曲目は「THERE IS A REASON」、ピアノの旋律に合わせて清らかさを前に出した歌声を響かせる。Bメロで大きな深みを見せたりと、その緩急の幅から彼女の成長を改めて感じさせると、サビの「君がそこにいるから」のフレーズでさーっと会場をさらって2,500人以上の"君"とつながる鈴木。

その歌声はDメロで、細かいビブラートをまといながらさらに力強さを増し、大サビで最高潮に達して観客を魅了。そのまま「Join us」のイントロでシャウトを響かせ、完全にスイッチを入れる。より明確に客席へと視線を送り指をさすと、観客もコールやジャンプでそれに応答。それを目にした鈴木は1サビ明けに「サイコー!」とシャウトすると、自身もファンもバンドメンバーも、全員参加でこの曲を作り上げる。

その熱量をさらに推進力押してぶっ放していったのが、続く「Blow out」だ。歌声にはさらに力強さが増し、2サビ明けのフェイクも気持ちよさそうにバーンと打ち出されたものに。それに続けたのが、自らが作詞作曲を手がけた「夢へ繋ぐ今」。希望に向けて高らかに伸びやかに、それでいて単なる力押しにとどまらない絶妙なメリハリも併せ持った歌声を、ゆっくりステージを歩きながら披露する。そうして観客とこの曲でつながるという点も、また大きな意味を持っているのではないだろうか。

歌い終わって一礼した鈴木は、「ついにこの日がやってきました……ツアーファイナル! やおーん!!」と雄叫びを上げる。改めてこの天候を喜び「早くも幸せな気持ちに満たされてる」と語るも、ライブはまだ序盤戦。「今日はとことん飛ばしていくつもりなので、しっかりついてきてください!」と呼びかけると、爽やかな空気にぴったりな夏の曲「アルカテイル」へ。

清涼感が強めのこの曲に合わせたボーカルワークをみせ、サビでのロングトーンも強めに入りながら押し切らずにスーッと締めた点に、彼女の今の巧みさを感じさせられると、今度は一転ハイスピードなロックチューン「東のシンドバッド」へ。

イントロ中に再び場内を煽ると、サビでは思いっきり蹴り上げたりとアツいアツいステージング。大サビでボーカルに宿った荒々しさも、「アルカテイル」とのコントラストでよりインパクトのあるものに。そして、さらに強く激しいナンバー「Redo」へ。2コーラス目で次々と上がるコールを受けて、鈴木もボルテージが高まったのかサビ前に力強いシャウト。さらにサビ明けにはオフマイクで「もっともっとー!」とさらに会場の熱を引き上げ、ぐいぐいと会場を高めていった。その様子は、曲明けに「名古屋・大阪をもう上回ってる気がします」と語られるほどのものだった。

▼この日のために生まれた曲を、みんなのいちばん近くで

そしてMCでの話題は、赤のペンライトに染まった客席を見てライブグッズの話に。続けてタオルへと話題が移ると、「汗拭くのもいいけど、回すほうが楽しいじゃない!」とフルと、この野音のために誕生したタオル曲「Sky Blue OASIS」へ。簡単に口頭で振り付けをおさらいすると、頭サビを歌い終わって鈴木がステージを降りて会場通路へ! 歌いながら会場中央のステージへと到着。これには元々ステージから遠めだった後方エリアのファンも大興奮だ。

そして「近ーい!」と嬉しそうにシャウトすると、サビからは雲の切れ間にのぞくブルースカイと、360度自らを囲んだファンへ向けて気持ちよさそうに歌声を響かせていく。次々とあらゆる方向を向きながら、2サビ明けにもファンをもうひと煽り。鈴木自身も髪を振り乱しての会場全体が超絶楽しんだ1曲となり、ラスサビ後には振り上げたタオルをそのまま客席へと投げ込むファンサービスで、さらに客席は沸く。

歌い終わると「背中から声を感じるって不思議!」とはしゃぎ、改めてコールを要求。その圧に改めて感動したところで、そのまま久々の披露となる「Tomorrow’s best」へ。ここでも360度のステージを活用する鈴木と、久しぶりとは思えないほどに統率感あるファンのコールとジャンプが繋がる。そして鈴木が今度は先ほどとは逆側の通路を使ってメインステージに戻ると、2サビ明けの間奏をバンドタイムとして活用し、早替え。早口なサビも楽しそうに、ときに荒々しく乗りこなしていくた。

歌い終わった鈴木は、今度はアコースティックギターを提げつつデビューから今までを振り返る。何も知らなかったからこそ綺麗に見えたものや、自分の見たくない部分にも向き合ったこと――様々なことをゆっくりと語ってくれたが、最後には「過去も過去でよかったけど、それよりも今がいちばんに幸せだなって思います。そう幸せだと思えてるのは、誰かと一緒に走り続けてこられたからで。だからみんなにも、一緒にこれからもっともっと遠くまで走ってほしいな、と思ってます」と続け、その想いを「miss blue」の弾き語りへと乗せる。

穏やかな微笑みとともにギターを奏で始めると、会場中をゆっくりと見回す鈴木。その目線の先にいるファンはじっとステージを見つめ、大切なその想いをこぼさぬようにそっと受け取る。次第に夕暮れを迎えゆく野音で目にできたこの関係こそが、ファンと鈴木との今の絆の形そのものだったように思う。

続く「Love is MY RAIL」も、冒頭部でサビをギター1本で弾き語り。ぴんと張り詰めた空気のなか大切にそのフレーズを歌い切ると、バンドがサウンドを奏で始めて後半戦がスタートする。いつの間にか、時間はブルーのペンライトが映えるような頃合いに。思わず鈴木が「すごくきれいだよー!」と声をかけたその色は、落ちサビでは一気にオレンジに。曲明けに感激から「こんな景色が見れるなんて、思ってなかったです!」と述べたほどの美しい光の源からは、曲の終盤には鈴木のボーカルに呼応するコールも起こり、野音の一体感はさらに高まった。

そして「これから"Magic Hour"、迎えに行きましょう!」との煽りに続いて、「My Days」からいよいよライブはクライマックスへ。速さと力強さを兼ね備えたデジタルロックと、その魅力をメリハリをつけてさらに増幅させる鈴木の歌声とで、場内のボルテージは右肩上がり。「真聖輝のメタモルフォシス」ではイントロで「もっと大きな声、ちょうだい!」とシャウトすると、イヤモニを片耳開けてその声と想いを受け止めエネルギーとし、さらに力強く歌声をぶっ放す。その熱い想いのラリーの末に、サビではファンのジャンプで客席が物理的に揺れていたように感じたのは、きっと気のせいではないだろう。