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――『めざましテレビ』にも密着されましたが、“五十嵐人気”は実感していますか?

あんまり街なかで「あ、五十嵐だ」と指さされることもないので、普通に過ごしてますけど、大泉洋さんとか小池栄子さんとかが、LINEで「見てるよ」「相変わらず怪しい役が上手いね」って連絡をくれましたね。共演経験のある方がみんな見てくださっているみたいで、お芝居を見に行ったりすると、「お、月9俳優がきたよ。売れてるね!」みたいな、一概に応援とは捉え切れないような声をかけられます(笑)

――茶化されてますね(笑)

そうですそうです(笑)。でも、それだけ皆さんが気にされてるドラマだと思うし、実際に僕もこの作品はすごい好きですし、すごく楽しかったですし、やってる僕らの充実感は本当にすごかったんです。それだけで十分と言ったら間違いかもしれないですけど、本当にいい仕事ができたことに対する誇りみたいなものがあるんですよ。副音声で毎回ネタのように数字のことを言ってますが、そのときにゲストの古沢さんもおっしゃってましたけど、好きな方に向けて作って、僕らもその熱量で現場を回していたというところもあるので、その遊びに一緒に参加してくれる視聴者のみなさんが大勢いてうれしいです。「これが面白いよね!」って思う人たちとTwitterやネット上で一緒に盛り上がれるこの“パーティー感”みたいなのがすごく心地良いんですよね。

――この作品は荒唐無稽な部分を含めて楽しむ作品だと思うんですが、真面目に見てしまう方もいらっしゃいますからね。

最近は、口の中がスーッとするキャンディーをなめて口から吹雪が出ることに「※CM上の演出です」ってテロップが入っちゃうような説明過多な世知辛い世の中ですから、矛盾することに逐一反応してしまう方もいるかもしれないですけど、なんでも気軽に情報が取り出せるようになった時代になって、結構知識や情報が邪魔をして素直に楽しめるものも楽しめなくなっているという人がすごく増えているような気がするんです。

実は、僕もわりと重箱の隅をつつく頭でっかちな部分があるんですけど、だからこそ、今回の作品のようなアプローチがすごく必要だと思うんですよね。「頭を空っぽにして見てください」とは言ってますけど、本当に楽しみたい時は、没入していくたびにいろんなものを捨て去ってそこに入り込むということが必要になる分、受動的に呑み込んでいけばいいというよりはむしろちょっとした能動性が必要になってくると思っていて、今はそのカロリーを消費したくない人が多いかなという気がするんですけど、この『コンフィデンスマンJP』に関しては、「君たち見る側も体力使うからな!」という開き直りで制作されている節ありましたよ。だからある意味「見方が試される作品」だなと思いました。

――バラエティの制作者の方と話をしていると、視聴者との「共犯関係」という言葉をよく聞きます。

「共感」よりも「共犯」なんですよね。だから、劇中の言葉を使うのであれば、ダー子(長澤まさみ)たちの協力者である「子猫ちゃん」。視聴者の皆さんも子猫ちゃん気分になって参加するというスタンスが、このドラマの楽しみ方なんじゃないかって思います。

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“やらされてる感”がない古沢良太脚本

――小手さんご自身も舞台の脚本を書かれるそうですが、あらためて『コンフィデンスマンJP』の古沢さんの脚本の魅力はどんなところにありますか?

やっぱりキャラクターが秀逸なのと、やりとりが面白いですよね。設定がぶっ飛んでるって言われがちですけど、あの世界観の中でキャラクターとして生きていると、実は全然突飛なことをしてるような感じにはならないんです。だから、台本をいただいた時も読み進めていて、「あれ?ここ変だなぁ」という気持ちに一切ならない。物語に誘導される操り人形として役が存在しているのではなく、彼らの言動によって物語が回るっていうことがしっかり成立しているからこそ、何かをやらされてる感というか、違和感がない。そういう意味では、本当にやりやすかったですし、たぶん他のみんなもふざけやすかったでしょうし、だから不思議なことに、すごく早く読み終えちゃんですよね。

――台本を読んで、一旦考えて詰まるようなことがないんですね。

コンゲーム(信用詐欺)が題材だと、頭脳戦とか心理戦とか、騙し騙されみたいなロジックの戦いだったりするから、絶対的に脳みそを使うはずなんですけど、不思議と使わないんですよね。感覚や感情や思想で筋を追える本だから、これだけ入り組んだ話でそれができるのはやっぱりすごいことだなって思います。

――その分、古沢さんがものすごく緻密に計算をしているのかもしれませんね。

あとは、ブラックユーモアのセンス。イギリスほど毒があるわけでもなければ、アメリカほど批評的でもない絶妙なさじ加減で、油断した心にたまにグサッと刺さるんですよね。それが気持ちいい! とにかく視点がシニカルで、たぶん古沢さんって人間愛が深いわりには、対人関係で客観性を失わない孤高の人だったんじゃないかなぁと(笑)

――いろいろお話を聞かせいただき、ありがとうございました。最後に、最終話(第10話、6月11日放送)の見どころをお願いします。

見ている方にとっては、「そういうことか!」と本当に意外な結末が待っています。このドラマを見続けてくれた人に対する、すごくでかい贈り物だと思うので、そこをぜひ楽しみにしていただきたいというのと、これまで9話やってきたものとは明らかにちょっと違う10話だったりするので、一体何が起こるのか…。その部分を楽しみにしていただければと思います。ご期待ください!

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  • 6月11日放送の最終話より (C)フジテレビ