毎年郵送されてくる「ねんきん定期便」という郵便物。大事なものだと知りつつ、内容がよく判らないこともあり、毎回そのまま保管してませんか? 「ねんきん定期便」は皆さんが老後のい将来設計をする際に、非常に大事な資料となります。今回は年金定期便の見かたと、活用方法を紹介します。

  • ねんきん定期便は年金手帳と同じくらい大事な資料

ねんきん定期便とは

「ねんきん定期便」は、日本年金機構が厚生労働省から委託を受け、毎年1回、誕生月に国民年金および厚生年金の加入者の方に対して、年金加入記録の確認と年金制度について理解を深めることを目的として送付しています。

先ず50歳未満の方は、以下の項目を見てみましょう。

1:これまでの年金加入期間
2:これまでの加入実績に応じた年金額【参考】とこれまでの保険料納付額(累計額)※厚生年金の保険料は被保険者負担分のみ表示。

  • 50歳未満の方向けねんきん定期便

また50歳以上の方は、以下の項目を見てみましょう。

3:老齢年金の種類と見込み額
※既に年金受給中の方は対象外
4:最近の月別状況

  • 50歳以上の方向けねんきん定期便

なお、年金の受け取りに必要となる加入期間を確保するための節目となる年齢の方(35歳、45歳及び59歳)や、年金の請求を間近に控えた方には、「封書のねんきん定期便」が送付されています。

「封書のねんきん定期便」を受け取ったら、以下の項目を確認しましょう。

5:これまでの年金加入履歴
6:国民年金の期間の月毎の保険料納付状況
7:厚生年金の期間の月毎の標準報酬月額、賞与額、保険料納付額等が記載されています。

  • 封書のねんきん定期便

また「封書のねんきん定期便」には、年金加入記録の確認方法を記載したパンフレットや、年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合に提出する年金加入記録回答票が同封されています。国民年金法及び厚生年金保険法では、保険料の納付の時効は2年となっていますので、注意して確認して下さい。

ねんきん定期便が届いたら何をすればいい

「ねんきん定期便」が届いたら、記載されている年金加入記録・標準報酬月額や国民年金の納付状況等の内容を確認して下さい。年金加入記録に、「もれ」や「誤り」がある場合には、年金加入記録回答票に必要事項を記入して、同封の返信用封筒で返送するか、お近くの年金事務所に提出して下さい。最寄りの年金事務所は、日本年金機構のホームページで場所を確認することができます。

「ねんきん定期便」に表示されている住所氏名が異なっている場合、厚生年金保険に加入している方は勤務先の事業所へ、国民年金に加入している方はお住まいの市区町村役場へ、厚生年金保険・共済組合等に加入している方の配偶者は配偶者の勤務先の事業所へ変更の申し出をして下さい。

35歳、45歳、59歳の方に送られる封書の「ねんきん定期便」にも、年金加入記録回答票と返信用封筒が同封されています。「もれ」や「誤り」がない場合には、回答する必要はありません。

ねんきん定期便はどう活用できる

「ねんきん定期便」には、みなさんの年金に関する情報が記載されていますが、中身を見ることもなく捨ててしまわれる方もいるようです。しかし、年金に関する情報は、自分の将来や老後の生活設計にも役立てることができます。

例えば、老齢年金の見込み額を知ることができます。さらにこの金額がわかれば、遺族年金の受給額を知ることができます。遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、遺族基礎年金は子(18歳未満または、20歳未満で障害等級1級・2級の子)の人数に応じて定額が加算されていき、遺族厚生年金は老齢厚生年金の4分の3となります。但し、加入月数が300月未満の場合には、300月とする決まりがあります。

※遺族基礎年金は、妻(夫)と子1人の場合は、779,300円+224,300円=1,003,600円となります。子が3人目以降の場合は、74,800円となります。

その他にも、「ねんきん定期便」に記載されている最近の月別状況から、標準報酬月額を参考にすれば、傷病手当金の支給額を知ることができます。傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あり、4日目以降に休んだ日に対して支給されます。支給額は1日につき、標準報酬日額(標準報酬月額÷30)の3分の2の金額が支給されることとなります。

このように、「ねんきん定期便」からは、様々な情報を読み解くことができるのです。これまで「ねんきん定期便」に興味を持たれていなかった方々も一度確認されることをお勧めします。

ねんきんネットを活用しよう

現在、インターネットで年金記録を知ることができるサービス(ねんきんネット)の普及が進められています。24時間いつでも、パソコンやスマートフォンで、すべての期間の年金加入記録を確認することができます。

「ねんきん定期便」に記載されているお客様のアクセスキー(17ケタの数字)や年金手帳に記載されている基礎年金番号等を使用することで、ユーザーIDをインターネットで即時発行することができます。

ねんきんネットでは、以下の情報を確認することが出来ます。
1:ご自身の年金記録の確認
2:将来の年金見込み額の確認
3:電子版「ねんきん定期便」の閲覧
3:日本年金機構から郵送された各種通知書の確認
※スマートフォン版では1、2のみ利用可能

さらに日本年金機構に提出する一部の届け出をパソコンで作成・印刷したり、持ち主のわからない年金記録の検索したりできます。

厚生労働省年金局が発表した、「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」資料によると、平成28年度末現在厚生年金保険受給者の平均年金月額は、148,000円、国民年金受給者の平均年金月額は、55,000円となっています。

この年金額のみで老後を豊かに過ごすことは難しいでしょうが、「ねんきん定期便」を上手く活用し、将来の生活設計を見直すことで、少しでも豊かな生活を送ることができればいいですね。

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所