6月15日から劇場公開される劇場アニメ『ニンジャバットマン』。日本の戦国時代に飛ばされたバットマンが、宿敵ジョーカーたちと戦うエンターテインメント作品。本作には日本のアニメーションらしさがふんだんに盛り込まれていて、まったく新しいエンターテインメントに仕上がっている。
-
山寺宏一(やまでらこういち)。1961年6月17日生まれ。宮城県出身。アクロスエンタテインメント所属。『ニンジャバットマン』ではバットマン役を演じる(左)
高木渉(たかぎわたる)。7月25日生まれ。千葉県出身。アーツビジョン所属。『ニンジャバットマン』ではジョーカー役を演じる(右)
そこで今回は、バットマン役の山寺宏一とジョーカー役の高木渉に、作品の魅力を語ってもらった。
▼いろんな人に刺さる、興味を持ってもらえる作品になった
――まず、作品をご覧になっていかがでしたか?
山寺 収録自体は結構前だったんですけど、そのときから「すごい作品になるぞ!」という予感はあったんです。完成した映像を観ると、想像以上の素晴らしい出来だと思いました。アメコミのヒーローをモチーフとしているのに、戦国時代の日本が舞台という。それらがうまくミックスされていて、見たこともないような面白い作品になったと思います。
高木 もう期待以上の出来で! これだけプロフェッショナルな方が集結していますから、そういう意味ではガチのぶつかり合いというか。声優部門としても「絵にも音楽にも負けたくない!」という思いでした。まぁ、これは勝ち負けではないので、いい融合をしていきたいと思ったんですけど、それがまさに形になっていたなと。見ていても大満足で、嬉しかったです。
――戦国時代が舞台という時点で驚きだったのですが、設定や脚本を見たときはどう思いましたか?
高木 アフレコの途中で「ここまでやっちゃっていいの?」って思ったところがあったんですよ。でも完成したものを見ると、そこに手を抜かず真剣に遊んでいるところが面白いなと思いました。しかもクオリティが高いので違和感なく見れちゃうんです。やっぱり中島かずきさんの脚本って面白いんだなって。そして、それに神風動画さんの絵と菅野祐悟さんの音楽があいまって、目を見張る素晴らしいエンターテイメントになっていました。
山寺 まぁよくDCコミックスが許したなって(笑)。数あるキャラクターの中でも代表的なものが『バットマン』じゃないですか。その映画を日本のチームが作る、しかも戦国時代に飛ばす。それをよくOKしたなと。僕も最初「これ大丈夫なの?」って思いましたし、バットマンやジョーカーを戦国時代に持っていったらごちゃごちゃになっちゃうんじゃないかなと。結果(メインビジュアルのイラストを指しながら)このビジュアルですからね。侍というか忍者というか……、もうなるべくしてこうなったみたいな感じになっていて、これはナイスアイディアだったんだなと思いました。バットマンも、いつかこうなることを想定してデザインされていたんじゃないかくらいに思いましたよ(笑)。
でも、正直なことを言うと、「新しい『バットマン』の仕事が来ました。忍者です」って言われたときは、「あっ、『レゴ ニンジャゴー』に『バットマン』が出ちゃうんだ」って思いましたけどね(笑)。レゴなら何でもありだろうと思ってたけど違うとなって、「えーー!!!」って。蓋を開けてみたら内容もビジュアルも最高で、これは世界で話題になるんじゃないかと思いました。完成した映像を見て、それが確信に変わりました。いろんな人に刺さる、興味を持ってもらえる作品になったと思います。
――ものすごく日本らしさが詰まったバットマンでしたよね。どういうところが海外の方に響くと思いましたか?
山寺 やっぱり日本と言うと戦国時代みたいなイメージがあるんじゃないですかね。日本のエンターテインメントを象徴するものとして時代劇があると思いますし。若い人ならジャパニメーションとか、カワイイという文化だったりに興味があるのかもしれない。でも、そういう戦国時代や忍者っていう有力なコンテンツを日本人自らが作っているわけですから、それは強みですよね。そこらへんは海外の方にも、今まで描かれてなかった世界だなと思ってもらえるんじゃないかなって思います。
高木 もともと忍者って海外でも人気がありますからね。
山寺 それに裏切りとか謀反も時代モノにはよくあるわけですし、それがバットマンとジョーカーの争いにもうまくシンクロしていた。今までこんなものは観たことがないし、「これが観たかった!」って思ってもらえるんじゃないかな。
高木 何より、わかりやすいですよね。ヒーローと悪がいて、悪いヤツをとっちめる。それがスケールの大きい、迫力満点のエンターテインメントになっている。そういう作品って海外の方も好きなんじゃないかなと思うんです。僕は海外でどういう作品が人気なのかとかに詳しいわけではないんですけど、想像で、こういう面白くてゴージャスなエンターテインメントが好きな印象があるので、それを日本発信で見せられることが嬉しいですね。
――殺陣とかはいかがでしたか? かなりカッコ良かったと思うのですが。
高木 その話もしていたんです。「モーションキャプチャーを付けてたんですか?」って聞いたら、付けてないとおっしゃっていて。すごいアニメーションの技術ですよね。
山寺 キャラクターの表情とかもそうですけど、日本のアニメーターは本当にすごいですよね。
高木 また絵が綺麗だよね!
山寺 しかも刀のアクションだけでなく、もっと大きいものが出てきたりするし(笑)。でもジョーカーとバットマンの戦いで、まさかバットマンが刀を持っているという(笑)。想像できなかったですよね。
高木 まず、そこですよね。
山寺 でもすごく似合ってるし、刀を使った殺陣も向こうではなかなかないだろうし、カッコいいと思ってもらえるんじゃないかなぁ。タランティーノ監督とかはどう思うんですかね。コメントとか寄せてくれないですかね?「僕が一番観たかったのはそれだよぉ」とか言ってくれそうな気がしますけど(笑)。
――力を合わせて戦うところも、日本的と言えば日本的でしたよね。
山寺 ゴッサム・シティもほとんど出てこないですし、そこを離れてどうやって戦うのかっていう話ですからね。
高木 自分の持っている装備が全部使えなくなっちゃうわけですから。人の力を借りないと勝てないバットマン。
山寺 バットマンも「この時代にはこの時代の強さがある」って言うんですよ。その時代の技術を応用してみんなで力を合わせて戦っていくという、そういう感動もありますからね。そうかと思うと、宣教師に化けて、禿頭にバットマークっていう(笑)。
高木 あははは。何であのマークを頭に付けたんだろうね。
山寺 意外とバレバレって脚本に書いてあったけど、意外とじゃなくて普通にバレバレだったけどね……。あんな間抜けなブルース・ウェインが今までいただろうか(笑)。
高木 ひとつの自己アピールですね(笑)。
――今回の劇場作品のアニメーション制作は神風動画初の長編アニメーションとなります。『ポプテピピック』でも話題の会社ですが、神風動画のすごさはどういうところにあるのでしょうか?
高木 『ポプテピピック』は同一キャラクターを違う役者がそれぞれ演じてみる、というスタイルが面白かったですね。あったら面白いなと思いながら今までになかったアニメーションです。そして、同じエピソードでも映像が少し変わってたりするところもあって、やはり映像に対するこだわりというか、職人気質なところを感じますね。
山寺 僕はまず『ニンジャバットマン』の収録でびっくりしたんです。「こんなにすごいクオリティのアニメなんだ!」って。そして知ったのが神風動画さん。その次に『ポプテピピック』が話題だというのをネットのニュースで知って、観てみたら制作が神風動画と書いてあって「嘘だろ!?」って(笑)。「だってあの『ニンジャバットマン』の会社だよ?」って。その振り幅がすごすぎるなと。そして今度はテレビで、企業のことを紹介するコーナーで神風動画を見たんです。この会社は定時に来て、定時に帰る。これまでアニメの世界でそんなことはなかったという報道番組で、「神風動画ってどんな会社なんだ! すごいな」って思いました。
でも、『ポプテピピック』も『ニンジャバットマン』も、面白くて斬新という意味では共通していますよね。いろんな会社も作品によって振り幅はあると思うけど、ここまでの振り幅はそうはないだろうと思いました。今後の日本のアニメ業界において、注目されていくんだろうなって。そのためにも『ニンジャバットマン』がヒットしないとダメですけどね。我々は大絶賛で、絶対にヒットすると信じていますけど。
――最後になりますが、今作は脚本の中島かずきさんの色がすごく出ている作品だと思いました。演じる側から感じた脚本について教えていただけますか?
山寺 演じているほうとしては、ストーリーの流れも面白いですし、細かい台詞のやり取り、ジョーカーとバットマンの温度差のある会話、クスッと笑えるところ、でも熱い……いろんな要素が含まれているエンターテインメントなんです。そもそもアメコミのヒーローであるバットマンを戦国時代に持ってくるという発想がすでにすごいんですけど、それをまとめられるのは、もはや中島さんしかいないんじゃないかと思いますよね。中島さんが担当している劇団☆新感線の舞台だって相当ぶっ飛んだ世界観でやっていますよね。僕が出演したTVアニメ『大江戸ロケット』だって、メチャクチャな話でしたよ。でもすごく楽しかった。いろんなものを融合させるところがすごいんですよね。
高木 それもこれも説得力があるからなんでしょうね。ぶっ飛んだ世界観で好き放題やってお客さんがついてくるかと言われたら、説得力がないとついてこないですからね。作品にすごく引き込まれる感じがあります。あと、僕らはスタジオの録音ブース内にいて、脚本を書かれた中島さんは後ろのコントロールルームにいるのですが、時々「俺大丈夫だったかな?」って心配になるんです。演出の指示は音響監督(岩浪美和さん)から来るものなので、僕は最後までドキドキしていたんです。アフレコが終わっても特に会話も出来なかったので気に入ってもらえなかったかな、なんて思いながら帰ったんですけど、後日の打ち上げ会場で、中島さんのほうから寄って来てくださって「すごく良かったよ、ジョーカー」って言ってくれたのは本当に嬉しかったですね。
山寺 『大江戸ロケット』のときから、中島さんの作品をいっぱいアニメでやればいいのにって思ってたんですよ。そうすれば、それは新しい日本のエンターテインメントになると思ったので。そしてまさに『ニンジャバットマン』もそのひとつ! この作品に続きがあるかはわからないですけど、このスタッフで何かまた新しいエンターテイメントを作るときが来るなら、我々も呼んでほしいですよね。
高木 絶対参加したいですね。
山寺 それもこれも『ニンジャバットマン』がヒットすればこそなので、ぜひよろしくお願いします!
Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C) DC Comics. (C) Warner Bros. Japan LLC