日本旅行者と韓国旅行者の違いで変わる戦略

ブンケンブルク氏: 「日本と韓国の一番大きな違いは、プランニングサイクルの違いです。海外旅行をする場合、日本人は随分前からどこに行くのか、どのフライトで行くのか、どのツアー等、早い段階からコミットして予約しています。その一方、韓国の人たちはそのプランニングサイクルがずっと短く、割と直前になってから、どこに行くのか何を見たいのか、どの航空会社を使うのかを決めています」

ブンケンブルク氏: 「そのため、航空会社から見ると、韓国よりも日本の方が営業の戦略を決めやすいと言えるでしょう。どのツアーオペレーターと組むのかなど、こちらとしてもしっかり戦略を立てられ、そのための確保ができているという状況です。逆に言うと、韓国は旅行者のプランニングが読みにくいという意味で、戦略的にはリスキーと言えます。

もうひとつ、日本と韓国との違いでは、日本よりも韓国はデジタル先進国であることです。日本はツアーオペレーターもパンフレットもいまだに紙という状況ですが、韓国ではデジタルでリサーチし、デジタルでオファリングをしています。

アジアという話でもう1カ国加えるなら中国ですが、こちらも韓国に比べればもう少し予測がしやすいです。デジタル化も中国はだいぶ進んでいます。ただし、日本に比べると市場としてはそこまで成熟していません。よって、成熟した市場である日本において、旅行代理店やツアーオペレーターとプランニングする方が、確信をもってできるということは大きく違いがあります」

武藤氏: 「韓国におけるオンラインのツアーエージェントを日本と比べた場合、ローカル販売の割合はどのぐらい違いがあるのでしょうか」

ブンケンブルク氏: 「韓国の場合、ローカルのシェアは8割以上と圧倒的で、韓国の就航便はほとんどが韓国ベースで売上げを上げています。政治的な問題もあって、韓国はここ数年、インバウンドがあまり伸びていません。一方、日本においてはインバウンドの需要が大きく伸びています」

武藤氏: 「韓国・日本市場におけるパートナーシップについて、現状と今後の戦略をお聞かせください」

  • 韓国市場には、同じスターアライアンスに加盟するアシアナ航空がある

ブンケンブルク氏: 「パートナーシップはふたつのレベルで考えた方がいいと思います。ひとつはアライアンスと呼ばれるもの。これは基本的には旅行者、特にビジネストラベラーにメリットをもたらすことを、スターアライアンスは焦点に当てています。もうひとつはJVという形態になります。つまり、より深いパートナーシップで、これは旅行者というよりは、ポイントツーポイントのトラフィックそのものに焦点を当てていて、企業とかツアーオペレーターとか旅行代理店とか、一緒になってプロダクトをつくり、プランニングをし、より深くリスクシェアもして展開していくという形態です。

このANAとは5年以上にわたってJVのパートナーシップを組んでいますが、非常に成功していると感じています。双方にとって乗客が増えており、収益性も上がっています。韓国とはアシアナとのパートナーシップに満足していますが、JVではなく、あくまでもスターアライアンスの中でもパートナーのやり取りです」

武藤氏: 「今後、アシアナとのJVの可能性はありますか」

ブンケンブルク氏: 「今のこのスターアライアンスでのパートナーシップに満足しているので、現状、それ以上の提携は計画にはないです」

  • ANAとルフトハンザは2011年より、ジョイントベンチャーを展開している

関空・名古屋路線の拡大も

武藤氏: 「日本の空港について、ルフトハンザグループとしての戦略は、羽田と成田をどうやっていくのでしょうか。また、民営化が進んでいる関西、福岡、新千歳にさらに就航させる計画はあるのでしょうか」

ブンケンブルク氏: 「グループとしては、成田・羽田・関空・名古屋に4カ所に就航しています。関空・名古屋は良好なので、これを拡大していこうという動きもあります。成田・羽田も業績を含めて満足しています。ただし、今、羽田に就航できているのはルフトハンザだけなので、今後、羽田のスロットが増えていけば、場合によっては変わってくるかもしれません。

成田については羽田と違った、成田にアクセスしやすい圏(キャッチメントエリア)があります。そのため、羽田と成田で違った圏内にルフトハンザは両方カバーできているのが現状で、私たちは対象にできるお客さまのエリアを広く持てており、戦略的にもいいことだと考えています」

武藤氏: 「日本の航空会社の戦略について聞かせてください。JVのパートナーであるANAは、新たな中期計画でホワイトスポットを狙うとしており、新規未就航地点に直行路線を展開する計画を発表しました。先ほどの話では、オーストリア航空が東欧にハブとしての玄関口があるという話ですが、今後、ANAとのJVの中で新たに東欧の中で相互に可能性を検討し、ANAがどこかに飛ばしていくというアイデアはありますか」

ブンケンブルク氏: 「JVのいいところは、ネットワークのプランニングも一緒にやるところです。つまり、うちのいくつかある本社のプランナーたちと東京にいるプランナーたちが年に数回会い、就航先を検討しています。ANAが欧州の就航都市を増やし、パートナーシップやネットワークを強力にできるのであれば、ANAがどこを指定してきても、私たちからノーと言うことはないです」

武藤氏: 「ホワイトスポットを狙って、JALは長距離のLCCを欧州も含めた路線に飛ばす計画をしていますが、その辺りについてはどう感じていますか」