Amazonプライム・ビデオでの配信ドラマとして2016年にスタートした『仮面ライダーアマゾンズ』(全13話)は、テレビ地上波にて現在放送されている「平成仮面ライダーシリーズ」とはまったく異なるラインで、かつて第1作『仮面ライダー』(1971~1973年)や『仮面ライダーアマゾン』(1974年)が志向していた「怪奇アクションドラマ」を一歩進めたかのような凄絶なバイオレンス描写で、多くの視聴者の度肝を抜いた。人間社会に潜んでいる危険な人工生命体「アマゾン」から人間を守るべく、水澤悠はアマゾンオメガに、鷹山仁はアマゾンアルファに変身するが、アマゾンをめぐる考え方の違いによって、悠と仁は対立する運命から逃れることができない。本当に守らなくてはならないのは、アマゾンか、人間か……。
Season1の好評を受け、2017年には新キャラクターを加えたSeason2(全13話)も配信され、こちらも大きな話題を呼んだ。『アマゾンズ』を愛するファンの熱意は全話配信が完了した後でも冷めることがなく、ついにスタッフ・キャスト・ファン待望の劇場版が製作される運びとなった。
当初、"アマゾンズ完結編"と銘打たれていた映画のタイトルは『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』と決まった。配信ドラマのSeason1、Season2でも手腕をふるった石田秀範監督にとって、「アマゾンズ映画化」はかねてから念願の出来事であったという。ここでは石田監督に『アマゾンズ』の成り立ちから、Season1、Season2の演出秘話、そして映画にかける意気込みなど、熱いお話をうかがった。(前後編の前編)
――配信ドラマとして2016年にスタートした『仮面ライダーアマゾンズ』(Season1)は、ニチアサ(日曜朝)に放送されている「仮面ライダーシリーズ」とは一線を画す、過剰なバイオレンス描写や、人間のエゴなどのマイナスの感情をむき出しにしたハードなストーリー展開などが話題となり、2017年のSeason2、そして今回(2018年)の映画版へとつながっていきました。ここ最近になって、スマホ、PC、テレビなどで楽しめる有料ネット配信専用の連続ドラマが人気を博している印象ですが、石田監督の身近なところでも『アマゾンズ』をご覧になっている方は多いのではないでしょうか。
そうですね。僕が知っている範囲でも、けっこうな数の人が「観ましたよ」と言ってくれました。まあ、僕が監督をやっていると知っているので、観てくれた人もいるとは思いますが(笑)。
――やはり視聴されている年齢層は大人の方のほうが多いですか?
ほとんどが大人の視聴者ですね。わりと評判はいいように感じました。反対に、子どもたちにはほとんど拒絶されているみたいです。友人の子どもが第1話を観ていて、最初の5分くらいでもうダメだって。しかし、こうなることは初めから想定できていたことです。撮影に入る以前から、これは子どもをターゲットにはしていない、大人が観ることを想定した「仮面ライダー」だと割り切って作っていました。
――いわゆるニチアサ枠の、地上波で放送される「仮面ライダー」も常に新しい内容、新しいキャラクターを生み出そうと努力を続けていると思いますが、それらの作品と『アマゾンズ』はどういう部分が違っているのでしょうか。
大きく異なるのは、ひとえに映像表現の部分です。今やニチアサの仮面ライダーはすごいブランドに成長してしまって、あまりにもエグい表現や演出はダメだということになっています。表現として常に安全、安心な内容の作品を作らないといけないわけで、そういうのを長年やっていると「そうじゃないものが作りたい!」と反動が来るんです。僕にしても、田崎(竜太/監督)や他のスタッフにしても、誰だってそう思うはず。時には、お客さんに反感を持たれるような内容の作品も作ってみたい、という欲求が出てくるんです。それは表現者としての"性(さが)"だと思うんですけれど、そこで「安全、安心」じゃない内容の作品を作ってもいいぞと言われるとうれしいですよね。それができるというのは、表現者にとって快感以外の何物でもないんです。