西日本鉄道は14日、首都圏の報道関係者向け「2018年度 事業戦略説明会」を都内で実施した。2019年春から天神大牟田線で運行開始する予定の新たな観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の概要説明も行われた。
事業戦略説明会では同社代表取締役社長の倉富純男氏が登壇し、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」について「当社初の本格的な観光列車。福岡を訪れたお客様をおもてなしし、楽しんでいただけるよう努めます」と紹介。続いて開発担当者の西日本鉄道事業創造本部、吉中美保子氏が列車の概要説明を行い、「コンセプトは『LOCAL to TRAIN ~街を繋いできたレールは人をつなぐ時代へ~』。地域の良いものをたくさん列車に積み込み、人や物、ストーリーをつなぐ存在になりたいとの思いを込めています」と述べた。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は既存車両6050形を大規模改造した3両編成、座席数52席の観光列車。車両デザインの全体プロデュースをトランジットジェネラルオフィス、外装・ロゴデザインをグラフィックデザイナーの福岡南央子氏、内装デザインをランドスケーププロダクツが担当した。外装はキッチンクロスをイメージした赤いチェックで清潔感などを表現し、車体前面・側面に「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」のロゴも入る。
3両編成の1両目(大牟田側)・3両目(天神側)は座席を22席ずつ配置し、西鉄初というトイレ付き車両に。天井に八女の竹を用いた竹細工、壁の一部に城島瓦を使用するなど、沿線の地域資源を生かした内装となる。2両目は座席数8席でオープンキッチン併設の車両となり、キッチン中央部に窯を設けた。
料理はシーズンごとにメニューを変えて提供。窯で焼き上げるピザをメインディッシュに、アミューズや前菜も産地と旬にこだわった沿線地域の食材を使用するという。運行開始時の春メニューでは、筑後産の小麦、八女市産のたけのこ、大木町産のアスパラガスを用いたピザをハーフ&ハーフで提供予定。メインディッシュ(ピザ)の監修はレストラン「エンボカ」代表の今井正氏、アミューズ・前菜の監修は料理家の渡辺康啓氏が担当する。
質疑応答では「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の料金や利用者層に関する質問も。具体的な料金は今秋発表すると前置きした上で、吉中氏は料金のイメージを「ちょっと良いレストランに食事に行く程度」とコメントした。想定する利用者層については「福岡都市圏もしくは九州の方々に、お休みの日やちょっと特別な日などに乗っていただきたい」「福岡にいらっしゃったお客様で『ちょっと時間が空いた』『福岡市外にも行ってみたい』という場合にもご利用いただけるのではないか」と説明した。
なお、倉富氏によれば2013年の社長就任当初から、鉄道活性化の一環で観光列車を考えていたという。天神大牟田線沿線の人口・輸送人員減少も背景のひとつに挙げられ、「福岡県の場合、とくに県南部の人口が減少している状況にあります」と倉富氏。本格的な観光列車の導入に関して、「筑後地方の鉄道を知っていただき、地域の方々と一緒に盛り上げましょうというアナウンスを兼ねた一面もあります。約260万人いる福岡都市圏の方々が一度でも天神大牟田線に乗っていただき、筑後にはこんなに良いものがあるんだということを知ってもらえば」と話していた。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は料金および運行・予約開始日の発表(9月頃)、車両お披露目(2月頃)などを経て2019年春から運行開始予定。西鉄福岡(天神)駅を11時30分頃に出発し、大牟田駅へ向かう「ランチ」、大牟田駅を17時頃に出発し、西鉄福岡(天神)駅へ向かう「ディナー」の計2回(ともに所要時間は約2時間)運行し、その他に「モーニング」についても現在検討中だという。運行日は金・土・日曜日と祝日。その他の曜日も旅行会社等による貸切運行が行われる予定とされている。