歯を丈夫にする食材に続き、虫歯や歯周病予防に寄与する可能性がある食材を教えてもらった。

虫歯予防が期待できる食材
大人から子どもまで幅広い世代が悩まされる虫歯を予防するには、食物繊維やフッ素、カルシウムを含有する食材がよいと考えられている。対象の一例は以下の通り。

■食物繊維……干し柿、インゲン豆、小松菜、キャベツ、ごぼうなど。
■フッ素……いわし、海藻、芝エビ、緑茶、番茶など。
■カルシウム……煮干し、チーズ、モロヘイヤ、ひじき、がんもどきなど。

「虫歯予防の食材として、食育的に最もおすすめなのは小松菜ですね。カルシウムが豊富ですし、繊維質のおかげでよくかまないといけません。必然的に唾液が多く出て歯の表面がきれいになり、歯を守る効果があります。歯周病予防にもよく、私は小松菜のよさをできるだけ皆さんに伝えています」

歯周病予防が期待できる食材
プラークが原因で発症する歯周病を防ぐにはビタミンC、E、ビタミンB6、βカロチン、食物繊維、カルシウムなどを積極的に摂取したい。対象の一例(上記と重複する食物繊維とカルシウムは除く)は以下の通り。

■ビタミンC……みかん、レモン、柿、いちご、小松菜、緑黄色野菜など。
■ビタミンE……アーモンド、ピーナッツ、うなぎ、かぼちゃ、にんじんなど。
■ビタミンB6……かつお、鮭、さんま、いわし、さばなど。
■βカロチン……にんじん、ほうれん草、トマト、ひじき、小松菜など。

「歯に悪い食べ物」は何か

最後に「歯に悪い食べ物」についてうかがったところ、「糖質を多く含む飲食物」という答えが返ってきた。砂糖やブドウ糖などの糖類は、歯の表面であるエナメル質を溶かしやすくするため、歯にとってマイナスとなる。

この「エナメル質を溶かす飲食物か否か」は、丈夫な歯を維持するうえで非常に重要な要素となる。エナメル質は一般的にpH5.5で溶け始めると考えられている。つまり、それよりpHが低い(酸性に傾いている)飲食物は歯が溶けやすく、pHが高い(アルカリ性に傾いている)飲食物は歯が溶けにくいということになる。

普段からこのpHを意識して食事をしている人は、そんなに多くないはず。下に具体例をまとめたが、各数値はメーカーごとに異なるため、あくまでも参考値としてとらえてほしい。

ミネラルウォーター(7.0)>牛乳(6.8)>緑茶(6.2)>ウーロン茶(6.0)>トマトジュース(5.0)>ヨーグルト飲料(4.1)>スポーツドリンク(3.5)>乳酸飲料(3.4)>グレープフルーツ(3.2)>レモン(2.1)

ヨーグルト飲料や乳酸飲料などは「発酵」のイメージもあり、体にとってプラスになると思っている人もいるのではないだろうか。だが、歯の健康を考えるうえでは注意したい。

市販のスポーツドリンクも意外と糖を多く含んでいるうえに酸性の飲み物だ。ナトリウムが補給できるため、汗をかいた後にはおすすめだが、日常的に飲んでいるようだと思わぬ糖分摂取につながる点は気をつけよう。

食材そのものを食べることの重要性

インスタント食品やレトルト食品は、忙しいときにとてもありがたい存在である。ただ、もそれら単体の食品だけだと、どうしてバランスよく栄養素を摂取できないし食塩量なども気になる。

上田さんは「焼く、煮る、蒸すなどの簡単な調理でいいので、食材そのものを食事として食べるようにしましょう」と話す。野菜の皮や根も丸ごと食べる「ホールフード」の重要性が指摘されているように、素材自体をきちんと食べたうえて栄養素を摂取することが丈夫な歯につながるのだという。

日本歯科医師会らは「80歳になっても自分の歯を20本以上持つ」ことを目指す「8020運動」を提唱、啓発している。超高齢社会の日本では、70代や80代でも精力的に日々を過ごすアクティブシニアが今後もますます増えることが予想される。充実した人生を過ごすために健康的な歯が与える影響は少なくない。

かつて、「芸能人は歯が命」というCMが一世を風靡したが、その言葉は誰にでも当てはまることを肝に銘じながら、毎日の食事を食べるようにしたいものだ。

※写真と本文は関係ありません