2019年に40周年を迎える人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズの最新作として、劇場作品『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』が、2018年11月に公開される。

小形尚弘(おがたなおひろ)。1974年10月生まれ。神奈川県出身。サンライズ所属のプロデューサー。主な担当作品に『ガンダム Gのレコンギスタ』『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』など。最新作『機動戦士ガンダムNT』でもプロデューサーを務める

『ガンダムNT』は、Blu-ray&DVD累計出荷数180万枚(全7巻)を達成した人気作『機動戦士ガンダムUC』の続編で、『UC』のストーリーを担当した福井晴敏氏が自ら脚本を手がける宇宙世紀サーガ最新作。宇宙世紀0097年を舞台に、過去に暴走事故を起こしたフル・サイコフレーム仕様のモビルスーツ「ユニコーンガンダム3号機フェネクス」をめぐり、「不死鳥狩り」作戦に従事する地球連邦宇宙軍のヨナ・バシュタ、ルオ商会特別顧問のミシェル・ルオ、フェネクスのパイロットであるリタ・ベルナルの3人を中心に物語が展開する。

4月20日にガンダムベース東京で行われた発表会では、本作のあらすじとともに、キャラクター、新たなガンダムをはじめとするモビルスーツが公開された。だが、そもそもこの作品がどのようにして生まれたのか、なぜ前作『UC』と異なり映画という形式をとったのか、そしてこの作品を通してどのような狙いがあるのか。これらの重要な点に関しては、十分に明らかにされたとはいえなかった。マイナビニュースでは、本作でプロデューサーを務めるサンライズの小形尚弘氏に独占インタビューを敢行。宇宙世紀の新たな100年を切り拓く記念碑的作品である『ガンダムNT』の深層に迫った。

――今回発表となった『ガンダムNT』は、企画としてはいつごろ始まったものなのでしょう。

『ガンダムUC』が終わった時に、ストーリーの福井晴敏さんと『UC』の次の話をなにかしらやっていきましょうという話はありました。ですが、具体的に動いたのはお台場にユニコーンガンダムの立像ができることが決まってからです。立像があるうちに、『UC』に続く話を作れないかということで始動していきました。

もともとは福井さんが書かれた小説『機動戦士ガンダムUC』の第11巻を短編のようにしてアニメーションにしようかなと思っていたんです。ですが、当初の予定とは大きく変わり、まったく新しい物語として再構築することになりました。第11巻にはナラティブガンダムも出てきていないですし、似通った要素はあるものの、大幅な路線変更をしています。

――物語を作るにあたり、福井さんとはどんなお話をされたのでしょうか。

ストーリーとしての『NT』の大元は「ユニコーンガンダム3号機 フェネクス」なんです。「フェネクス」は、『UC』をやっている最中にお台場の展開に合わせて「ユニコーンガンダム3号機」という設定にして作ったものだったのですが、アニメーションのほうではまだ消化しきれない部分であったので、一つの課題として「フェネクス」を主軸にしたアニメーションというのを作りたいというような話をしていました。

そこから、『UC』の続きで、1年後の話をやるとしたら、タイトルはそのまま『機動戦士ガンダムUC2』にしたほうがいいのかとか、新しい主人公を立てるのであればまったく新しいタイトルにしたほうがいいんじゃないかとか、そういうところから話を始めてっていう形ですね。

――主人公機であるナラティブガンダムが、νガンダムの試験機というのはなぜなのでしょう。

  • ナラティブガンダム。主人公ヨナ・バシュタが搭乗するアナハイム・エレクトロニクス社製MS。「RX-93 νガンダム」の試験機として開発され、各部の形状がνガンダムと同様のパーツ構成となっている

ユニコーンガンダムは別の系統で作られている設定のために特殊ではありましたが、この作品に登場するガンダムを設定・デザインするにあたり、宇宙世紀のこの時代(0093~0097年)に存在するなら、このくらいの性能とデザインラインのはずだというところを足掛かりにして作業をしていきます。

今回メカデザインは引き続きカトキハジメさんに参加していただいているのですが、カトキさんも宇宙世紀の何かしらの歴史にひもづいたところからガンダムをもってくるという考え方の人。カトキさん的に、近い年代のものだとνガンダムの前くらいのガンダムがあると仮定したほうがいいんじゃないか、というところからナラティブガンダムのデザインはできあがっていきました。

――『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)や『機動戦士ガンダムF91』(1991年)など、映画という形式はシリーズの中でも重要度が高いものであるように思われるのですが、今回はなぜ映画という形をとられたのでしょう。

今まではイベント上映という形で、『UC』からずっと続けさせていただいてきました。期間はだいたい2週間から長くて4週間で、規模は35館ほど。新宿ピカデリーを旗艦に、お祭り的な感じでやらせてもらっていました。2019年に「ガンダム」シリーズが40周年を迎えるにあたって、本作では館数もかなり増やす予定ですし、世界展開はもちろん、できれば全都道府県の劇場でやりたいなと思っています。

『UC』episode 7の時、僕は北海道や仙台、宇都宮の舞台挨拶を回らせていただいたんですけど、やっぱり地方に行けば行くほど「よく来てくれた」と歓迎していただくことが多くて。また、さぬき映画祭に富野由悠季さんと一緒に参加させていただいた際にも、「ガンダム」が自分の地域にきてくれたということで、すごい歓迎ムードでした。そうしたこともあって、これはやっぱり全国の人に楽しんでもらう施策のほうがいいんじゃないかなということで今回は劇場公開という形式を選びました。