――『UC』では、さまざまなバリエーションの武装による戦闘シーンや、ユニコーンガンダムのデストロイモードへの変身など、モビルスーツのかっこよさを引き出す演出に何度も胸が熱くなりました。今回も、そういったポイントは用意されているのでしょうか。
そうですね。PVを見ていただいてもわかるんですけど、最後にいきなりデンドロビウムなのかミーティアなのかといった形の装備が出てきます。今回のナラティブガンダムはこうした多様な装備が可能になっていて、戦闘のシチュエーションによって装備を変えて戦闘していくところが見どころになっています。とはいえ、1時間半の尺なので、なかなかどこまでできるかというのもあると思うんですけど、「1時間半ボリューム作品のメカデザインのカロリーとしては高すぎる」とカトキさんにも怒られています。戦闘も、もちろん3Dでいくところもあると思うんですけど、『UC』や『機動戦士ガンダム サンダーボルト』を手がけたサンライズの第1スタジオが作っていて、基本的には手描きをメインにしてやっていますので楽しみにしていただければと思っています。
――キャラクターについて。登場するメインキャラクターはなぜ全員25歳なのでしょう。
これは、今回の作品では宇宙世紀0079年に行われた「コロニー落とし」が一つ重要なキーワードになっているためです。「コロニー落とし」の時に実際に地上にいて、被災というのか、それを体験した子どもたちがちょうど0097年に25歳になる。「コロニー落とし」によって人生を変えられてしまった、それこそ宇宙世紀のメインストリームを生きてきた子たちの話というのが主軸にあります。福井さんらしいなと思うのですが、宇宙世紀をただ切り取るのではなく、ちゃんと全体の流れを絡めながら、その3人がどういう人間関係を構築して、今に至ったかが描かれます。
――小形さんは、「ガンダム」シリーズにおいて、この『NT』はどんな位置づけであるとお考えですか。
プロジェクトとしては「UC NexT 0100」という形で、「これを皮切りにサンライズはガンダムをいっぱい作っていきますよ」というのが今回の発表です。『NT』はその第1弾ではあるんですけど、一方で、『逆襲のシャア』で一番取り上げられ、『UC』でもやってきた「サイコフレーム」という技術の"句読点"のような気がしています。ここで一回「サイコフレーム」がどういうものなのかということを宇宙世紀の人たちは総括することになります。
――会見で福井さんが「語り」「語りなおすこと」という意味があると説明があった『NT(ナラティブ)』ですが、このタイトルには別案もあったのでしょうか?
実は、こういった話をやるということが決まる以前から福井さんは「『UC』の続編をやるんだったら次は『NT』だ」とタイトルについておっしゃっていたんです。その時は「ニュータイプの『NT』」だったんですけど。具体的な企画になり始めてから「ナラティブ」という方向になりました。
――会見で「ガンダム」の魅力について、小形さんは、富野さんが作られたんだけれども、そこにいろんなクリエイターの血が入ることで続いていったところにあるとお話しされていましたが、逆に「ここは変えてはいけない」といったことが富野監督から伝えられたりしているものなのでしょうか。
富野さんは基本的に自分の作ったガンダム以外興味はありません。なので「こうしてくれ」というのもないですね。ただ僕なんかもそうなんですけど、小学校の時から「ガンダム」を見て育ってきて、そういうDNAに刷り込まれた感覚が実際製作者になってみて、『UC』や『サンダーボルト』、今回の『NT』に生かされていたりするんです。
そうした意味では、「ガンダム」ってずっと作り続けられて、見られ続けているというのが大きいんじゃないかなと。それによって皆の中に蓄積ができて、その人たちがクリエイターになった時に魅力的な作品が生まれてくる。富野さんとしても自分が指名したり指示したりしなくても、必然的に受け継いでいるものは受け継いでいるし、違う人を介すことによって見た目も変わったりするとは思うんですけど、根本の部分はそういった意味で言語化するまでもなく身に沁みついちゃっているものだと思います。富野さんもよく言っているんですけど、「ガンダム」を利用して若いクリエイターたちがもっと自分の表現したいことをやればいいんだよって。今回、吉沢俊一監督にも同じようなことを伝えました。
――ちなみに、会見ではNHK・BSプレミアムで実施されていた「全ガンダム大投票」(5月5日結果発表)の話題になりましたが、小形さんは何に投票されましたか?
僕はνガンダムとユニコーン系に入れました。結果楽しみです。
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