「亜咲花1stワンマンライブ~graduate from LJK~」が3月4日、東京・Shibuya WWWにて開催された。タイトル通り、アニソンシンガー・亜咲花の1stワンマンにして高校生活最後のライブは、いい意味で高校生らしからぬ実力と、彼女の今抱く想いとの両方を感じられる、この春ひとつ人生のステップを上がる彼女にふさわしいライブとなった。

  • 亜咲花

▼"1stワンマン" "LJK"らしからぬ、堂々たるライブ・パフォーマンス

開演時間を迎えると、流れるinterludeに合わせたクラップのなかバンドメンバーが登場し、“卒業"というテーマにふさわしい袴風の衣装で亜咲花がステージに登場。まずはデビュー曲「Open your eyes」でそのライブを始める。

キリリとした表情で歌い始めた彼女だが、1-Aメロの最後にはフロアの盛り上がりを見やり一瞬ニヤリ。1stワンマンなのにのっけからこの余裕、頼もしい限りだ。卓越した歌唱力は“生バンドに負けない"なんてレベルをとうに超え、その強さを踏まえて自らの歌声が最大限活きる表現をなし得ている。

そんな凄みのある歌声を笑顔で響かせている彼女を見て、改めて「本当に“LJK"なの?」と思わされてしまった。その感情はライブが進むに従って、幾度となく胸によぎることとなったものなのだけれども。

曲明け、ドラムに合わせて煽ってからの「Play the game」では、フロアで輝くペンライトは黄色に変化。そのステージギリギリのところまで歩み出て指差し等も交えてファンを煽る姿は、1stワンマンらしからぬ余裕と風格を兼ね備えたものだった。

また、もうひとつ驚かされたのが、思いっきり全力で歌い上げているのにかかわらず、まったく汗をかいていなかった点。そういうふとした凄さを感じるたび、「亜咲花は、ヤバい。」と語彙力が失われていく。

そのまま今度は「Edelweiss English ver.」を披露。アメリカで幼少期を過ごした経験を活かして自ら訳詞も手掛けたこの曲では、何よりBメロでジャンプし着地した際に歌声のブレがまったくない点に度肝を抜かれた。

しかもそれは傍目には涼しい顔でやっているように見え、歌声の圧と技術との両方がとんでもなく高水準であることを冒頭3曲で感じさせてくれた。

初MCでも、疲れなどまったく見えず元気いっぱいの亜咲花。無事高校卒業の報告をし、「デビューをしてから1年4ヶ月の集大成を、今日はみんなの目に焼き付けたいと思います!」と意気込みを語り、今度はスローな聴かせるナンバー「ILLUMINA」へ。

みずみずしさと厚みとを兼ね備えた歌声が、幻想的な楽曲とともにズンと胸に来る。また、ロングトーンでの想いの乗せるさまが実に気持ちよさそうな点も印象的。

かと思えば再びのブチ上がり曲「Unfulfilled Butterfly」では、またもステージ最前まで出て観客とコミュニケーション。ここではカッコよさと圧を強く感じさせ、お立ち台に座ったりもしつつ観客をいい塩梅に挑発。2サビ明けには「行くぞ渋谷ー!」とシャウトし、会場の熱をさらに高めてタオル曲「Round of new thing」に突入。

変わらずパワフルな歌声を響かせつつ、お立ち台に立って自身も思いっきりタオルを回す亜咲花。小さな体で楽しそうに跳ねる姿はあんなにかわいらしいのに、ボーカルには底知れぬパワフルさが。こうして観客をあらゆる面で圧倒し続けた彼女は、この曲のジャンプエンドをもって一旦ステージを降りた。

▼この冬のキラーチューンで、ファンと一緒に未来へ歩き出す

ライブタイトルにちなんだ、映像コーナー“亜咲花JK用語講座"や物販告知を経て、「SHINY DAYS」の衣装に着替えた亜咲花が再登場。アニソンカバーコーナーから中盤戦の幕開けだ。まず持ち歌にないベクトルの「Q&Aリサイタル!」は、思い切りキュートなボーカルに。本家でも恒例のDメロ明けのコール部分で、イヤモニを外し「あ・さ・か! あ・さ・か! L・O・V・E・あ・さ・か!」との声を受ける亜咲花の姿は心から楽しそうで、満面の笑みで「よくできましたー!」と返していた。

そして一転表情が凛としたものに変わって始まったのが、「甲賀忍法帖」。すごみも出しつつスーッと響き渡る歌声は、こちらも原曲リスペクト。力強くも美しく聴かせきれるばかりでなく、落ちサビではトゲを一個スパイスとしてブレンド。キーの高さに苦戦する様子も見せず、さらに「こう聴かせたい」という意図が随所から感じられる1曲だった。

続く「Paradise Lost」は、「行くぜ渋谷ー!」のシャウトからすでに茅原実里リスペクト。サビの歌い方でも本家への愛を感じさせつつ、Dメロでの伸びやかかつ太いボーカルでの歌い上げはやはり見事。また、落ちサビをファンに歌わせその声に包まれるというのは、この曲を愛するものなら一度はやってみたいこと。そういう意味でも、彼女はこのとき大変贅沢な経験をしていたのだ。

ここまでのアグレッシブなナンバーから一転、優しい歌声を聴かせたのが「愛・おぼえていますか」。フロアをそっと見やりながら温かく歌う姿は、今後は自身のオリジナル曲でも優しいバラードを聴いてみたいと思わせるに十分なもの。大サビでの繊細な息遣いも、ファンの心をぐっと捉える。

そしてカバー曲ラストは、再びアグレッシブな「ETERNAL BLAZE」。頭サビで一気に沸いたファンを目の当たりにした亜咲花は、その光景に再度したり顔。彼女自身グイグイ攻め来るのみならず、サビ前のにわかに儚さの出るポイントで絶妙に引いて歌い切ったりと、亜咲花ならではの解釈と表現をもって歌い切ったのはさすがのひと言。こうしてアニソンカバーコーナーは、最高の熱気のなか幕を下ろしたのだった。

さて、ライブもいよいよ終盤に突入。まずクラップでひとつになるミドルナンバー「キミと始まる物語」は、温かさを歌声に乗せたミドルナンバー。サビではワイパーも起こり、フロア中のムードも亜咲花の歌声を追うように温かいものへと変化。亜咲花自身の表情も柔らかくなり、とりわけ言葉を伝えることを大事にした1曲のように感じられた。

また、続く「Just A Way You Are」は同じくクラップ曲ながらも軽快なロックチューン。スカッと爽快な歌声を、お立ち台に乗って会場中へと響かせていく。アニソンカバーを5曲めいっぱいやった後に、好きなことを貫き通す覚悟を示すこの曲が歌われるという構成自体が素敵なものであり、それを笑顔を輝かせながら歌っていく姿からは今後への意欲も感じられ、安心感さえ与えてくれるようだった。

ここでクライマックスを前に、時間をたっぷり取ったMCタイム。自身も新生活に向けて準備中の亜咲花、卒業を期に更に活動に専念し、また自分の武器である英語に磨きを掛けつつ「世界にアニソンやアニメの良さを伝えていけたらと思います」と宣言。「英語をやめちゃうのはもったいない」と語り、「私が率先するぐらいの気持ちで、世界にアニメ・アニソンの良さを伝えていきたい」と今後への意気込みを語っていた。

また、シンガーになってから今までの振り返りでは、折に触れて関わっている人の多さを実感したと語り、スタッフへの感謝を述べる。そして「デビューするまでずっとひとりでレコーディングしたり歌ってみたをやってきたけど、今日、私はひとりじゃないんだなと改めて感じました。これからも、アニソン・歌と向き合っていきます」と宣言し、「みんなと一緒にこれからも夢・目標に向かって歩んでいきたい」との曲フリから、本編ラストナンバーとなる「SHINY DAYS」へ。

最後にまたクラップで会場をひとつにできる最新シングルは、彼女の新しい出発ともリンクして、ポジティブなナンバーにもかかわらず胸に熱いものをこみ上げさせるものに。しかしそんな聴き手の感情とはまったく対照的に、亜咲花自身は笑顔でパワフルに歌い続け、会場をハッピーで明るい感情で満たしていく。落ちサビのアカペラ部分は観客も巻き込んでの大合唱し、大サビの最後で「Fu!」のシャウトとともにジャンプ。楽しさと満足感との両方がないまぜになった最高に幸せそうな表情で、本編を締めくくった。