映像配信アプリ「東映特撮ファンクラブ(TTFC)」が主催する「第3回 東映特撮ファンミーティング」として、現在テレビ朝日系で好評放映中の特撮テレビドラマ『仮面ライダービルド』スピンオフ映像作品『ROGUE(ローグ)』の上映&トークイベント「ナイトトークイベント『9時まで渋谷TOEIで語り明かそうか』」が、10日に開催された。

  • 赤松義正(脚本)、鈴村展弘(監督)、水上剣星、大森敬仁(東映プロデューサー)、谷中寿成(東映プロデューサー)

会場では、「『仮面ライダービルド』Blu-rayコレクションVOL.1」の映像特典である『ROGUE』序章「NIGHT ROGUE RISES」が上映され、東映プロデューサーの大森敬仁氏と谷中寿成氏、脚本を手がけた赤松義正氏、監督を務めた鈴村展弘氏、そして主役の氷室幻徳を演じた水上剣星が登壇し、『ROGUE』および『ビルド』についての興味深いトークが繰り広げられた。

『ROGUE』は、『仮面ライダービルド』本編でも仮面ライダービルド/桐生戦兎と対立する敵側の「仮面ライダーローグ」として活躍する、氷室幻徳の「テレビでは描かれない裏の姿」を描いたスピンオフ作品。Blu-rayコレクションVOL.1には、幻徳が悪魔に魂を売りわたし、ナイトローグへの変身を決意するまでを描く「序章」が収録され、VOL.2では「第2章」、VOL.3では「最終章」、VOL.4では「メイキング」と続いていく予定である。

満場の客席から拍手が巻き起こる中、司会進行を務めるお笑い芸人の篠宮暁(オジンオズボーン)が登壇。観客の方々と一緒にビルドの決めポーズを行うなど、絶妙のトークとアクションで観客の心をつかんだ。

『ビルド』テレビシリーズ前半を振り返って

まずは、東映の大森プロデューサー、谷中プロデューサー、そして氷室幻徳役の水上剣星を迎えて、つい先日、第30話を放送して"折り返し地点"を迎えた『仮面ライダービルド』テレビシリーズについてのトークがスタートした。

現在『ビルド』テレビシリーズの脚本は、武藤将吾氏が1人で手がけている。本作と同じく、大森プロデューサーが製作を務めた前作『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)でも高橋悠也氏がテレビシリーズと劇場版の全エピソードを1人で執筆して話題を呼んだが、本作でも武藤氏による卓越した人物描写やスピーディかつ盛りだくさんなドラマ展開が、多くの仮面ライダーファンから注目を集めている。

大森氏によると、『ビルド』は「もともと武藤さんをお迎えして作ろうとしたシリーズ」であり、成り立ちが武藤氏の起用から始まっているという。『エグゼイド』から連続して仮面ライダーシリーズを作るにあたって大森氏は、「『エグゼイド』では、一見して仮面ライダーらしくないヒーローが、回を進めていくうちに『これも仮面ライダーなんだね』とわかっていく作品作りをしていたが、『ビルド』では最初から、『これぞ仮面ライダーだ』という部分を最初から出していくつもりで進めた」と語った。

また大森氏は「仮面ライダーの根本の部分として、敵と出自が同じ、というものを打ち出そうとしました。そして、武藤さんは男と男の熱いストーリーを書く方なので、それは戦兎と万丈(龍我)を中心に、うまく作ることができていると思います。今後もこのあたりを重点的にやっていきます」と、武藤氏とのタッグで作り上げていく今後の展開に対しての自信を見せた。

武藤氏による『ビルド』のストーリーは、劇中で生まれた"謎"が次の回でいきなり明かされたり、それによって敵と味方の勢力図が次々に移り変わったり、また新しい謎が生まれたりと、エピソードの間を置かずに展開がどんどん変化してく作劇が大きな特徴。水上の演じる氷室幻徳も、東都政府補佐官でありながら秘密組織ファウストの実力者、そして謎の怪人ナイトローグに変身(蒸血)してビルドと対立しつつ、第21話で失脚。さらに第23話ではダークな服装にイメージチェンジを行って、仮面ライダーローグに変身するなど、キャラクターをとりまく環境がクルクルと移り変わっていく。

水上は、幻徳を演じるにあたって「脚本の情報量が多すぎて、演じるほうも把握するのが大変です。お2人(大森氏と谷中氏)が情報を落としてくれないので……」と演じる際の難しさを打ち明けながら、「でも、役に関する情報がない分、1話ずつホン(台本)をもらいながら現場で役を作ります。情報が降りてこないから、ムダなことを考えないですむという利点もあります。その現場現場で役を楽しんで演じています」と、情報量が多く展開の早い武藤脚本に対し、1回1回の出会いを大事にしていることを語った。

谷中氏もまた武藤脚本に触れ、「僕らはあらかじめ大まかなシリーズ構成的なことを考えてから、武藤さんに執筆してもらうのですが、武藤さんの凄いところは、締め切りが迫ると名案が浮かぶという(笑)。それだけにシリーズ構成通りに行かず、展開が構想と変わったりすることも頻繁にあるので、前もって役者さんに『この先はこうなります』とは説明ができないんですね」と、役者に事前情報が与えられない理由と、ギリギリまで吟味され、洗練されていく脚本の面白さについての自信をのぞかせた。大森氏もまた「武藤さんは、あらかじめ組んだ10話分のストーリー構成を、4話くらいで全部消化してしまいます。あと6話どうするんだ、とか(笑)」と、武藤氏自身の作風という「スピーディなドラマ展開」による盛りだくさんな内容の秘密を明かしていた。

第1話の冒頭で幻徳がジャーナリストの紗羽(滝裕可里)への取材を受けている際、彼女を隣にあるホテルに誘って「朝まで語り明かそうか」と表情を崩さず言い放つシーンが注目を集め、「ホテルおじさん」という独特なニックネームがSNSをにぎわせたこともある水上。見るからにコワモテの幻徳を演じるにあたってどのような思いを込めているのか、という質問に対しては、「基本的にマジメに演じようと思っています。自分の芝居を客観視するのはなかなか難しいんですけれど、意外にかわいがってもらえる役になってよかったな、と自分では思っています。決して笑いを取ろうと狙ってやっているわけではありません」と、常に一生懸命な状態で幻徳を演じていることを明らかにした。さらには「妹からも"ホテルおじさん"と呼ばれたことがあります」と、肉親からも役柄が好評をもって受け入れられている事実を発表した。