SUBARU(スバル)はクルマをデザインする時に何を大切にしていて、今後はどんな方向性を模索していくのか。本社ショールームにコンセプトカー4台を展示し、デザインを語るイベントを開催中の同社で石井デザイン部長に話を聞く機会があった。今後は「歩幅を大きく」してデザインを進化させるというが、スバルの次の一歩とは。

  • スバル「XV」のクレイモデル

    スバルはデザインで何を大切にしているのか

次期「レヴォーグ(?)」も展示中

東京の渋谷区恵比寿にあるスバル本社ショールームでは現在、同社のデザインを体感できるイベント「SUBARU DESIGN MUSEUM」が開催中だ。2018年3月のジュネーブ・モーターショーで世界初披露となった「VIZIV TOURER CONCEPT」など、同社のコンセプトカー4台を間近で見ることができる貴重な機会となっている。スバル「XV」のクレイモデル(粘土で作った模型)なども展示してある。

  • スバルのコンセプトカー「VIZIV TOURER CONCEPT」

    本社ショールームには、ジュネーブで公開したばかりの「VIZIV TOURER CONCEPT」も展示してある

これは書籍「スバルデザイン」(御堀直嗣著、三樹書房)の発刊を期に企画されたイベントで、期間は4月7日まで。土曜日と日曜日には、スバルのデザイン部によるプレゼンを1日に2回(13時と16時)、聞くことができる。同イベントのオープニングイベントには石井部長が登壇し、スバルのデザインについて解説した。

中島飛行機に端を発するスバルのDNA

スバルがデザインで大事にするものとは何か。石井部長はスバルの原点が中島飛行機研究所であったことから説き起こした。飛行機を作る上で最も大事なのは、パイロットが無事に帰ってくること。フランス人技師を招聘して飛行機作りに乗り出したスバルは、創業当初から安全性を大切にしており、今も「安心と愉しさ」というメッセージを掲げる。カッコいいクルマを作ろうとする場合でも、安全であることがスバル車にとって至上命題なのだ。「死亡事故ゼロを目指すクルマ作りにデザインでも協力する」と石井部長は語る。

例えば、1958年に登場した「スバル360」にも飛行機作りのスピリットが息づく。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の「三種の神器」が庶民に行き渡り、次の夢としてマイカーを求める機運が高まった時期に、廉価でクルマを提供しようとスバルが開発した軽自動車の「360」は、小さいながら広い室内が特徴で、「大人4人が乗っても赤城山を登れる」(石井部長)走破性を持っていた。この室内の作り方には、飛行機作りで得た「モノコック構造」のノウハウを活用したのだという。

  • 「スバル360」

    「スバル360」(右側)は飛行機作りのスピリットを受け継ぐという

「360」の時代から現在までにスバルは、クロスオーバーの「アウトバック」であったりSUVの「フォレスター」であったり、最新型ではセダンとハッチバックからスタイルを選べる「インプレッサ」であったりと、さまざまなクルマを世に問うてきた。「360」以降のスバル車のデザインを分析した上で、現在のスバルがデザインのテーマに掲げるのは「ダイナミック」と「ソリッド」だ。

  • 初代「フォレスター」

    初代「フォレスター」の模型も展示してあった

「動物のようなしなやかさ」「シンプル」「エモーショナル」「引き算の美学」といったワードを自動車メーカーのデザインに関する説明では耳にしてきたが、石井部長は「一目でスバルの価値が分かるデザインを構築したい」と考え、「躍動感」や「カタマリ感」を感じる言葉をチョイスしたのだという。