いよいよ22日(21:00~)に最終回を迎えるフジテレビ系バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』。30年以上続く長寿シリーズとなったが、前身の『とんねるずのみなさんのおかげです』を立ち上げた1人が、現在、共同テレビの社長を務める港浩一氏だ。
木梨憲武のキャラクター「小港さん」のモデルとしても知られる同氏は、『みなさん』が長い歴史に幕を下ろそうとしている今、番組の生みの親としてどんな心境なのか。とんねるずとの出会いから名作企画の裏側なども含めて、話を聞いた――。
自分の担当期間より長く続いたことがうれしい
――とんねるずのお2人が番組の終了を発表したのは、このインタビュー場所である共同テレビさんの社長室でしたね。
番組のキャラクターで、石田(弘・エグゼクティブプロデューサー)さんをモチーフにしたダーイシと、僕をモチーフにした小港がいるので、その2人になって終了を発表したいから、共テレの社長室を使いたいって、貴明が(笑)。「絡みはどうするの?」って聞いたら、「イスに座って、感謝の言葉を言う時に、一緒に頭下げてくれ」と。まぁ、面白い絵ヅラでしたね。
――番組終了を聞いたときの心境は、いかがでしたか?
単発の『火曜ワイドスペシャル』から数えると32年、レギュラーで30年、ここまで続いたことがすばらしいと思いました。永遠に続く番組はないですから、良い区切りとして捉えるということですね。僕は86年の『火曜ワイドスペシャル』パート1から担当して2000年に部長になって現場を離れたんですけど、実は僕が14年やっていた期間よりも後の18年の方が長いんですよ。それが素晴らしいと思ってるんです。僕らが作って頑張ってきたものを、そのバトンを落とさずにいろんなところにコーナーを展開して続けてくれた。それが、僕個人としてはとてもうれしいと思います。
スイートルームに集まって企画会議
――あらためて、とんねるずさんとの出会いから伺わせてください。
『オールナイトフジ』で僕が30歳でディレクター、秋元(康)が24歳で構成作家をやっていて、2人ともチームの中で一番若かったんです。彼とは、『ザ・ラストショー』という深夜番組でディレクターデビューした時から一緒で、ある意味戦友なんですけど、『オールナイトフジ』で月1回僕の担当回があるので、コンビを組んで面白いことをやろうと。その時に、誰か面白い若い芸人がいないかと探してたら、秋元が『モーニングサラダ』という日テレの西城秀樹さんの番組に出てるとんねるずが良いよということで、紹介されたんです。
彼らは21歳で、当時は長身でスマートでスポーツマンでファッショナブルなお笑いの人っていなかったから、『オールナイトフジ』の女子大生と一緒にやれば合いそうだなと思って。(石橋)貴明が野球部、(木梨)憲武がサッカー部出身で体育会系だから礼儀正しいんですよね。それですぐ仲良くなったんですけど、タレントさんの成長ってすごく早いじゃないですか。でも、僕が9歳上で今でも兄貴分みたいな関係で変わらないんですよ。
――『オールナイトフジ』から『夕やけニャンニャン』をへて、『とんねるずのみなさんのおかげです』がスタートするんですね。
『夕やけニャンニャン』で月曜から金曜まで、『オールナイトフジ』で土曜日、日曜日もゴルフとか競馬で毎日一緒にいるんで、そんな中で自分たちの番組をやりたいねって話が当然出てくるじゃないですか。当時フジテレビには『火曜ワイドスペシャル』という登竜門的な特番枠があったんですが、『ドリフ大爆笑』とか『ものまね王座』とか、視聴率30%を超える人気シリーズの番組があって枠が空かない中、貴明が当時の日枝(久)編成局長(現・相談役)に"直訴"して、やっと枠をもらえたんです。それで、どこかで打ち合わせをしようとなったら、憲武が「こういう時はホテルのスイートルームに集まって企画会議をやるはずだ」といい出して、「そうだなぁ」と6人くらいで打ち合わせして。そしたら憲武が、今度は「こういう時はメロンをルームサービスで頼んで1人1個丸ごと食べるはずだ」って言うから、みんなで喜んで食べて(笑)
――その様子が目に浮かびます(笑)
そんな感じで、テレビが大好きだからパロディ的なことを中心にやっていくという方針が決まって、スペシャルの「パート1」を放送したんです。精いっぱいやりましたが、ハードルの高い枠なので、視聴率20%とらないと「パート2」ができない時代なんですよ。それで、放送の次の日、当時の河田町のフジテレビ編成局の大部屋にドキドキしながら入ると、編成の皆さんが10人くらい立ち上がって拍手してくれたんです。「えっ!?」って驚いたら、「20行ったよ!港」って。「じゃあパート2できる!?」って聞いたら「頼むよ!」となって、僕らにとって一番のご褒美である「パート2」ができるということが、すごくうれしかったですね。
アドリブで100%よりさらに面白く
――初期の『みなさんのおかげです』といえば、やはりコントですよね。
秋元のほかに遠藤察男という作家がいるんですけど、僕と気が合って、とても優秀でいいセリフ回しや設定の本を書いてくるので、それをベースに作ってました。宮沢りえさんがレギュラーで、憲武のノリ子と貴明の先生の「学校でよくある風景」というコントは、ノリ子が美少女のりえに嫉妬するというテーマ。もう1個のノリ男のコントは、チェッカーズの仲間たちとの友情がテーマで、それぞれ女目線・男目線で、季節ごとの行事に絡めて事件が起きていくということで1つの柱になりました。世界征服を狙う怪人と地球を守るヒーローがくだらない技の出し合いで戦う「仮面ノリダー」はスペシャルの「パート4」で最初にやりましたね。あと、80年代後半から90年代前半は、ドラマがすごい数字をとっていましたが、そんな本物のキラキラしたものをぶっ壊していくのが面白いと思って、どんどんパロディをやりました。フジはもちろん、ヒットしてたドラマは他局でも、本物の主演の女優さんにゲストで来てもらってましたね。
ただ、そういう作り物ばかりをやっていると時間もお金もかかって尺が空いちゃうんで、同時にやったのがゲームモノの「モジモジくん」。あれも、NHK教育テレビにあった番組のパロディなんですよ。とんねるずは運動神経がいいから、いろんなゲームに挑戦して、そこに(渡辺)満里奈とか、キョンキョン(小泉今日子)も来てくれました。
――コントでもいろんなハプニングがありましたが、とんねるずのお2人は台本をぶっ壊してアドリブ連発だったんですか?
台本は準備稿を何回も作って優秀なので、その通りやっても100%面白いんですが、そこで貴明と憲武には、ゲストの女優さんに渡すセリフだけは必ず言ってねって伝えて、あとはアドリブを足して膨らませて、100%よりさらに面白くしていくんです。作り方としては、まず台本を手に持ちながら動きの段取りをつける「ドライ」をするんですけど、そしたら次はいきなり本番。リハーサルやると、本番で「さっきの方が面白かった」ってなることがあるのに早めに気づいたんですね。本番までに僕がカメラマンと打ち合わせしてる間に、出演者たちは自主練して、そこから本番がわれわれスタッフと出演者たちの勝負ですね。
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