アルピナの傑作はB6 3.5Sだけではない!各世代のBMW3シリーズをベースにしたモデルを振り返る

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【画像】歴代BMW3シリーズをベースにしたアルピナの傑作モデル(写真5点)

1962年の草創期からBMWのコンパクトモデルは常にアルピナのビジネスの中核だった。最初はBMW1500用のツインキャブレターであり、その後1970年代にコンプリートカーの製作に乗り出してからも、3シリーズは最も重要なベースモデルであり続けた。ザクセンリングで発表されたB3およびB4 GTは、我々がよく知るアルピナに別れを告げる最後にして最新のスペシャルモデルである。この機会に各世代の3シリーズをベースにしたアルピナの傑作モデルを振り返ってみよう。

A4/3(E21) [1976~1977年] BMWが最初の3シリーズを発売した時、アルピナはM10型2002tiiの4気筒エンジン(E21型にも継承された)用の各種チューニングパッケージを提供していた。それは最高出力120bhpのA1/ 3から160bhpの A4/3まで幅広く設定されており、どれもアルピナが設計した燃料噴射システムとエアフィルター・ハウジング、エグゾーストマニフォールドを特徴としていた。さらに鍛造ピストンと軽量化された高精度コンロッドを装備したレース専用の A4S/3パッケージも用意されていた。クラフトマンシップの極みと言うべきこの車は無論323iよりずっとスポーティーで、鮮やかなトリムのレカロシートも魅力のひとつだった。

B3S(E46) [2002~2006年] 330iをベースにしたB3Sは、米国仕様のE36型M3エンジンをアルピナ専用のヘッドとクランクシャフト、マーレ製ピストンなどで作り直し、305bhpと267lbft(362Nm)/4800rpm(M3は338bhp/269lb-ft)を生み出すモデル。M3とは異なり、B3Sはサルーンとコンバーチブル、エステートそしてクーペ仕様も用意され、オプションでスイッチトロニックATも選ぶことができた。絶対的なパワーではM3に一歩譲るが、ステアリングは明らかにスポーティーで路面情報を鮮明に伝えてくれる。豪華なインテリアからは想像できないほどの獰猛なエンジン音も特徴だ。

B3 GT3(E92)[2011年] 2011年のドイツGTシリーズ制覇を記念したモデル。GT3とはいっても、M3 GTSのようなスパルタンなサーキット専用モデルではない。ベースモデルは335iだが、専用のECUとインテークを備えて402bhpと398lb-ft(540Nm)に強化されている。トランスミッションはデュアルクラッチではなくオートマチックだが、強大なトルクを生み出すおかげでその点を気にする必要はない。実際これはアルピナ所有の車だが、イベントなどで頻繁にドリフトを披露している。アクラポビッチのエグゾーストシステムと可変サスペンションを備えたB3 GT3はあのB6 3.5S以降で最もスポーティーなアルピナである。

B8 4.6(E36)[1995~1998年] ブルクハルト・ボーフェンジーペンとBMWの開発トップだったウォルフガング・ライツレは、いかにアルピナでもE36シャシーにV8を積むことはできないだろうと賭けをした。ブッフローエを甘く見てはいけない。E34型540i用エンジンを収めるために、42カ所ものボディ改造を行った上に、さらにアルピナ独自のエンジンブロック、サンプ、オイルポンプ、ピストンなどを採用した結果、333bhpの最高出力と、E46型M3の最大トルクと同じ値をわずか1000rpmで発生するユニットを作り上げた。347lb-ft(470Nm)もの最大トルクをもってすれば後輪を自由自在に操れる。強大な低速トルクで暴れ回ることも、その余裕に任せてリラックスして滑らかにクルーズすることもできる。サルーンだけでなく、クーペやカブリオ、ツーリングボディもあり、合計生産台数は221台だった。

B4 S EDITION99(F32) [2018年] F32型B4にさよならを告げるためにアルピナはクーペとカブリオレ合わせて99台のスペシャルエディションを製作した。435iベースに搭載されたのは445bhpを発生する3リッター6気筒ツインターボ、だが注目は最大トルクである。わずか3000rpmから680Nmものトルクを迸らせる。標準型B4 Sに比べて若干軽く(1615kg)、速く、しかもレーシングカーのようなオレンジの戦闘色に塗られているものの、この車はサーキット走行も考慮しているB3 GT3よりも明確な「アウトバーン・ミサイル」である。振り回しても楽しいが、同時にきわめて快適である。ひと踏みするだけで、軽々と想像よりずっと早く190mphの最高速に達するはずだ。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA

Words: Nathan Chadwick Photography: Alpina