視聴率との差が大きい『隣の家族は青く見える』

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『隣の家族は青く見える』

先の2作品は、満足度が高く視聴率も好調だが、視聴率は低いが満足度は高いという"逆転現象"がより顕著に表れているのが深田恭子主演『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)。今作は初回7.0%(ビデオリサーチ調べ・関東地区、以下同)という低調なスタートで、一時は4%台にまで落ち込むなど、視聴率という点ではなかなか浮上できずにいるが、満足度では初回3.47から徐々に上昇を続け、第5話で最高の3.92を記録、第8話でも3.90と高位置をキープし、平均3.81と冬ドラマで第3位に入る満足度では好調な作品だ。

好調の理由は「不妊に悩む人に共感した」(30歳女性)、「不妊症を知らない人たちへの理解を促しているドラマ」(50歳女性)など、不妊治療を丁寧に描写したことで女性からの支持を得たことはもちろん、「不妊治療は他人事じゃないと思った」(33歳男性)、「社会全体の不妊治療に対する理解が深まらなければならないと強く感じた」(40歳男性)など、男性視聴者からの共感も得る内容になっていること。男女別の満足度を見ても女性が3.79に対し、男性は3.85と上回っている。

また、このドラマは主人公夫婦の不妊治療のほかに、男性同士の同性カップルや、無職の夫を隠し幸せを装う夫婦、子供を作らないと決めたカップルの前に現れた前妻の子供との同居など、さまざまな家族の問題を描いており、それぞれを深刻に描けば視聴者にストレスばかり与えてしまう危険もあるが、「ホッとするドラマ」(55歳女性)、「ほのぼのする」(43歳女性)、「見ていて微笑ましいシーン満載」(39歳女性)といった回答も多く、つらい描写もあるもののその後には誰かがちゃんとフォローをする展開が待っていることや、悩みに直面しながらも前向きなキャラクターが多いことから、視聴者が安心し、そして癒やされる効果も生まれ、それが高満足度のポイントにもなっている。

最終回目前で満足度急上昇の『anone』

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『anone』21日放送の最終話より (C)NTV

最終回を迎えていない冬ドラマで初回満足度と直近回の差=満足度上昇数がトップなのは、広瀬すず主演の『anone』(日本テレビ)。初回満足度3.16は、冬ドラマワースト3位のスタートで、その後も3.5台となかなか浮上できなかったのだが、第4話で3.70と初めて高満足度の基準を上回ると、第7話で3.82、第8話では最高の3.88を記録し、0.72ポイントアップの上昇数第1位となった。

序盤、満足度が伸びなかった理由には、今流行中のドラマとは真逆の設定と難解なテーマが挙げられるだろう。今作は、親に捨てられ養護施設でも虐待を受けた暗い過去を持つ主人公をはじめ、登場人物全員が重い何かを背負っていることや、主人公が誘拐事件に巻き込まれ、犯人が拳銃自殺してしまう衝撃的な展開、過去に死産を経験した女性に見える幽霊というファンタジックな描写、そしてこのドラマのキーアイテム "偽札"には未知の世界を覗く怖さがあるなど、軽快さとエンタテインメントが重視される今のドラマとは真逆の設定と、敢えてテーマを見せず何が起こるのか全く予想できない物語に「思った以上に暗いドラマ」(45歳女性)、「難解すぎて理解できない」(61歳女性)など、ネガティブな意見も多く満足度を低くした。

だが後半に近づくと「ついに綻(ほころ)びが…と、ドキドキする」(57歳女性)、「もうすぐ終わりで展開が読めなくて次が楽しみ」(47歳女性)など、いよいよ見えてくるこのドラマの本質に視聴者の期待感が高まり、満足度も上昇させたようだ。

脚本を手掛ける坂元裕二氏は、昨年の『カルテット』や、日テレでは『Mother』『Woman』など、これまでも既成概念にとらわれないドラマ作りで視聴者を常に驚かせてきたが、今作はこれまでのどの作品にも当てはまらない全く新しい超意欲作。先の読めない展開も敬遠するような描写が連続したことも、視聴者を試しながらドラマの新しい面白さを提示していたのかもしれない。そんな挑戦的な作品がどんな最終回を迎えるのか、最後まで見逃せない。