トヨタ自動車、日産自動車、ホンダをはじめとする日本企業11社が水素ステーション整備の新会社「日本水素ステーションネットワーク合同会社」を立ち上げた。水素で走る燃料電池自動車(FCV)の需要を最大化させるべく、水素をクルマに充填する施設を全国的に整備するとして野心的な数値目標を掲げる。なかなか到来しない「水素社会」だが、新会社の登場で何が変わるのか。

  • 新会社設立会見の様子

    トヨタ、日産、ホンダ、JXTGエネルギー、出光興産、岩谷産業、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキード、豊田通商、日本政策投資銀行の11社が新会社を設立。英語の社名「Japan H2 Mobility, LLC」を「JHyM」(ジェイハイム)と略す

水素の大量供給・大量利用を目指す

なぜ今、水素ステーションの整備を急ぐのか。その背景について、新会社設立の発表会に世耕弘成経済産業大臣が寄せたビデオメッセージから言葉を拾うと、「パリ協定の発効で脱炭素化の潮流は決定的。脱炭素に向けた投資は世界中で拡大しており、日本では(脱炭素化のキーテクノロジーである)水素の活用が鍵」ということになる。

つまり、気温の上昇を抑える環境対策としても、日本の産業界を発展させるためにも、水素の活用が不可欠ということのようだ。また、2016年の数字で日本のエネルギー自給率は8.4%である一方、化石エネルギー依存度は88.8%だというから、エネルギーの多様化という観点からも、水素の活用が広まることには意味があるという。

水素の活用を広げるには、水素の低コスト化が重要だと資源エネルギー庁・新エネルギー部長の高科淳氏は指摘する。ガソリンやLNGといった既存の資源と水素を同程度の価格にまで安くするには、大量供給と大量利用の双方が必要とした。その大量利用に向けて、先陣を切るのがクルマという位置づけだ。

  • 日本政府の水素基本戦略を示したスライド

    日本政府の水素基本戦略

水素ステーションの数を9倍に

水素で走るFCVが普及するには、ガソリン車にとってのガソリンスタンドにあたる水素ステーションの整備が不可欠。それを“戦略的”に整備しようというのが新会社設立の狙いだ。

トヨタがFCVの「MIRAI」を商品化してから今年で4年となるが、日本で整備された水素ステーションは計画中の施設も含め現状で101カ所。日本政府はこれを2030年までに約9倍の900カ所に増やすと言っているが、ジェイハイム社長の菅原英喜氏は新会社もこの数字を「チャレンジングではあるが」目指していくとした。

  • トヨタの「MIRAI」

    トヨタの「MIRAI」

これまでの整備ペースを鑑みても、ステーションを利用するFCVをあまり見かけない現状から考えてみても、これは野心的な数字に違いない。ちなみに、FCVの台数は2018年1月末時点で約2,400台だが、2030年には80万台に増やしたいというのが日本政府の「水素基本戦略」にある数値目標だ。

では、どうやって水素ステーションを増やすのか。