"芸どころ・名古屋"の象徴、御園座(みそのざ)。2015年より進められていた建て替え工事が完了し、今年4月、いよいよこけら落とし公演が行われる。

劇場に先駆けて、新築された御園座タワー1階には魅力的な飲食施設がオープン。12月13日には"食のテーマパーク"をコンセプトとする複合型店舗「御園小町」がお目見えした。

  • 御園小町

    伝統的ななまこ壁が印象的な新生・御園座。名古屋駅から地下鉄で一区間の伏見駅よりすぐ

カフェもランチもお土産も

カフェ&グリル「御園茶屋」、パンなどを中心に扱う「御園麦工房」、お土産や物販の「御園楽座」で構成される「御園小町」。店名の「小町」は"評判のかわいい町娘"を意味するが、文字通り"小さな町"とのダブルミーニングになっていて、仕切りがない3つのゾーンを自由に回遊できるようになっている。

  • 御園小町店内

    フードコート、スーパー、お土産品店の機能が融合。観劇ついでの食事や買い物のほか、日用使いもできる

木を多用した空間は、落ち着いた和のイメージ。イートインは104席を用意し、テイクアウトできるフード、ドリンクも多彩だ。和洋のモーニングからランチ、軽食、さらにクラフトビールなどのアルコール類やおつまみもあり、カフェとしてもランチスポットとしても、さらにちょい飲みスポットとしても、幅広く活用できる。

名古屋らしいモーニングに味噌が隠し味の洋食ランチ

「御園茶屋」でまず注目はモーニングだ。「選べる朝食セット」(540円)は、和・洋の2種類があり、おかず・主食・スープ・サラダをそれぞれチョイスできる。ボリュームも選択肢も十分で、充実した朝ごはんになるだろう。

  • 御園小町 選べる朝食セット

    「選べる朝食セット」(540円)※写真は和定食

朝はもう少し軽く済ませたい、という場合は「御園モーニング」を。小倉あんをはさんだサンドロールか御園焼き(オリジナルの大判焼)に、ゆで卵とドリンクがついて、なんと324円。喫茶モーニング天国・名古屋の中でも特筆すべきコスパの高さだ。

  • 御園小町 御園モーニング

    「御園モーニング」は御園サンドロール・あんマーガリンまたは御園焼にゆで玉子、ドリンク付きで324円とお値打ち

ランチメニューにも名古屋らしい工夫が。「御園ハンブルグランチ」(972円)は、八丁味噌を使ったデミグラスソースが決め手。ほんのり味噌の風味が感じられるデミソースのこってりとしたコクが、飛騨牛と飛騨旨豚を使った合挽きミンチのハンバーグのうまみを引き立てる。別メニュー「オムライスランチ」(864円)のビーフシチューソースにも、八丁味噌が隠し味として使われている。

  • 御園小町 御園ハンブルグランチ

    八丁味噌入りデミグラスソースが決め手の「御園ハンブルグランチ」(972円)

ユニークなサンドロールに大判焼などのおやつメニュー

「御園麦工房」では、オリジナルの「御園サンドロール」(216円~)、「御園焼」(216円~)がユニーク。

御園サンドロールは、コッペパンに様々な具をサンドできるのが楽しい。名古屋らしい小倉あんや海老フライのほか、パンの具材としては珍しいだし巻き玉子もある。名古屋の玉子サンドは、ゆで玉子をつぶした玉子サラダではなく、ふんわりした厚焼き玉子をはさむケースが多いので、これもある意味名古屋的だ。

  • 御園サンドロール、御園焼

    約20種類の具材をそろえた「御園サンドロール」と、金鯱型の皮がかわいい「御園焼」(共に216円~)

御園焼はいわゆる大判焼きだが、今川焼のアレンジ版で金鯱をかたどった皮がこれまた名古屋人の"金鯱LOVE"をくすぐる。粒あん、白粒あんのほか、八丁みそあんを選べるのも面白い。

これらのフードメニューはイートインのほか、テイクアウトできるものも多い。劇場がオープンした際には、劇場内での飲食を想定し、ワンハンドで食べやすいメニュー作りを測っているのも特徴だ。

「周辺のオフィスにお勤めの方はもちろんですが、劇場のターゲット層であるご年配の女性のお客さまも予想以上に多い。春の御園座のオープンを心待ちにしている方がいち早く足を運んでくださっているようです」と山本美咲 店長。

  • 御園小町 土産

    歌舞伎グッズなどの御園座土産、名古屋土産も取りそろえる

飲食のほかにも、「御園楽座」では、観劇・観光でやってくる人をメインターゲットとし、愛知・岐阜・三重の銘菓や銘酒、特産品などを中心にセレクトしている。日本酒や国産ワインは御園座限定のオリジナルラベルのものもあるので、立ち寄った際には、気の利いた名古屋土産、御園座土産として購入を検討してみてはいかがだろうか。

超人気うなぎ専門店・初ののれん分けも堂々登場

御園小町に続いて、御園座タワーには名古屋めしの魅力あふれる飲食店がオープン。1月11日に登場したのが、行列が絶えないうなぎの専門店「うな富士」(名古屋市中区)の初ののれん分け店、「おか冨士」だ。

  • おか冨士 店内

    「おか冨士」の店内は、劇場に併設の店舗にふさわしい落ち着いた雰囲気

たまりベースのたれをつけて炭火で直焼きする肉厚のうなぎは、外はパリッ、中はふわっとした焼き加減。コクがありつつさっぱりしたタレと、うな富士の魅力をそのまま継承している。うなぎ丼やひつまぶしはもちろん、酒の肴となるおつまみの充実度も本家を踏襲。歌舞伎などの舞台で心の贅沢を楽しんだ後で、さらに味の贅沢を堪能できる。新劇場の食の目玉としても、うってつけの一軒だ。

  • おか冨士 目玉の上のひつまぶし

    「目玉の上ひつまぶし」(4,320円)

カジュアルからゴージャスまでそろった名古屋新名所、新生・御園座のグルメ。観劇より一足先に味わって、劇場オープンへの期待をふくらませておくのもいいのでは?

●Information

「御園小町」
住所: 名古屋市中区栄1-6-15 御園座タワー1階
アクセス: 地下鉄伏見駅より徒歩1分
営業時間: 7~22時(土日祝10時~)
定休日: 無休

「おか冨士」
住所: 名古屋市中区栄1-6-15 御園座タワー1階
アクセス: 地下鉄伏見駅より徒歩1分
営業時間: 11~14時、17~22時
定休日: 無休

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信する。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。著書に『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『名古屋めし』(リベラル社)、『名古屋の商店街』(PHP研究所)、『東海の和菓子名店』(ぴあ中部支局/共著: 森崎美穂子)などがある。Webガイドサイト「オールアバウト」名古屋ガイド。愛知県や名古屋市などの協同プロジェクト、なごやめし普及促進協議会ではアドバイザーを務める。