2017年の邦画は、16年のアニメーション映画『君の名は。』や特撮映画『シン・ゴジラ』のように巨弾ヒットがなかったとはいえ、オリジナルも原作ものも幅広く楽しめた。とりわけ年々、アクション満載の少年漫画の実写化が増えていて、実写化不可能かと思っていた作品が続々実写化され、技術のクオリティの上昇を実感する。

引き続き、2018年も少年漫画の実写化はあとを絶たない。それと、ラブ満載の少女漫画の実写化も堅調だ。このように原作の内容ももちろん大事だが、その登場人物を誰がやるかで映画の価値は大きく左右する。ここでは、2018年の映画を、活躍を期待したい俳優別で紹介してみたい。

高橋一生…献身が誰よりも似合った俳優、今年はどうなる

テレビドラマ『カルテット』(TBS)、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)、朝ドラ『わろてんか』(NHK)、月9『民衆の敵』(フジテレビ)と注目作に出続けた2017年。『直虎』も『わろてんか』もどちらも主人公を陰ながら支える役だった。『民衆の敵』もそうといえばそう。そこにプラスして、世襲政治家一家の一員でありながら裏の生活を送るミステリアスな面も描かれ、やたら色っぽいシャワーシーンなどのサービスシーンも付与されていた。

身を挺して主人公を支えたり、肉体を晒したり、実力派の中堅俳優にしてはずいぶんとがんばっているなあと、人気商売の大変さを思う。そんな高橋一生は、18年、映画で活躍。現在わかっている範囲で、3本の映画に出演する。

  • 高橋一生

    『嘘を愛する女』長澤まさみ、高橋一生

まず、1月20日公開の『嘘を愛する女』(中江和仁監督)は、高橋一生のやや影のある魅力が大いに生かせそうな作品で、経歴をすべて偽って、長澤まさみ演じるヒロインと同棲していた謎の男の役。病気入院して経歴詐称がわかり、ヒロインは男の本当の姿を知ろうとする。高橋一生(の演じる役)はきっと痛々しいまでに何かを背負っているのだろうと、見る前から震える。

続く、2月3日公開の『blank13』(齊藤工監督)では、高橋と同じく女性の性的な眼差しにさらされることを厭わないかのように、肉体を晒す役の多い斎藤工が監督となって、高橋を撮ることに。実話をベースにした家族の話で、高橋演じる主人公が、13年前に失踪した父と再会するも、すでに父は余命3カ月。半年後、父の葬儀の参列者から父にまつわるエピソードを聞くことで父の謎がわかっていく。斎藤と高橋、ものづくりが好きそうなふたりのタッグは期待できそう。

少し間を開けて、6月15日公開の『空飛ぶタイヤ』(本木克英監督)はベストセラー作家・池井戸潤作品の初映画化。脱輪事故をきっかけに企業のリコール隠しが発覚。主演は長瀬智也。車の整備不良を疑われるも、車両の欠陥に気づき、製造会社に再調査を要求する。高橋は、製造会社の経営に疑問をもって独自に調査する銀行員を演じる。ディーン・フジオカが、製造会社の戦略課家長役で出演。それぞれの思惑が交錯する硬派な企業ものになりそうだ。

松坂桃李…背徳感を醸し続ける異色な存在

朝ドラ『わろてんか』で松坂桃李が演じている日本一の席主を目指す男・藤吉は、視聴者からツッコみの的になっている。朝ドラヒロインの夫は、ヒロインを頑張らせる起爆剤としてダメ男に設定されることが多く、そのダメさが愛されるものなのだが、松坂の演技があまりにリアルで、どう見ていいのか困ってしまう。元々、松坂は、映画『エイプリルフールズ』(15年)や『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)で女性を自分の都合のいいように扱うために嘘も厭わないゲス男を迫真で演じており、朝ドラのような、ソフトなダメ男よりも、ハードなダメ男のほうが演技力を発揮できるのではないか。その点、2018年は、映画で思う存分、背徳感を醸してくれそうだ。

  • 松坂桃李

    『不能犯』松坂桃李

2月1日公開『不能犯』(白石晃士監督)は、“見つめるだけで相手を死に追いやる”ため罪に問われない、おそるべき人物を演じる。彼はその能力を使って、殺人依頼を引き受けていく。集英社『グランドジャンプ』に連載された漫画の映画化で、宣伝美術のニヤリと笑った松坂桃李の顔がおそろしすぎるほど。

4月公開の『娼年』(三浦大輔監督)はかなりの問題作。石田衣良の小説が原作で、娼婦ならぬ娼年として、お仕事として次々と女性とカラダを重ねながら、それぞれの心に触れていく物語。16年に、松坂主演、三浦演出で舞台化されたとき、その過激な内容でセンセーショナルを巻き起こした。映画もR 18になっていて、どれだけエロティックなものになるのか気になる。

5月12日公開予定の『孤狼の血』(白石和彌監督)は、柚月裕子の小説を原作にした骨太なハードボイルド。広島を舞台に、暴力団の犯罪とそれを追う警察との仁義なき戦いが描かれる。松坂の役は呉原東署・捜査2課・暴力団係・大上班のメンバーで巡査。型破りな大上(役所広司)の行動に戸惑いながらも成長していく新人刑事だが、白石監督の『日本で一番悪い奴ら』のように朱に交われば赤くなるパターンだろうかと今からドキドキだ。