しばらくはクレジット購入が続きそうな日本勢

ZEV規制を達成できないメーカーは、EVなど規制を満たすクルマを数多く売っている他のメーカーから「クレジット」と呼ばれる温室効果ガスの排出枠を購入するか、カリフォルニア州の大気資源局へ罰金を支払わなければならない。

テスラはEVしか販売していない自動車メーカーなので、販売台数の100%が規制に適合する。例えば2018年の4.5%でいえば、95.5%分が余剰となる。従って、その95.5%に相当する台数分を、ZEV規制を達成できていないメーカーへ売ることができる。これが、クレジットの売買だ。

日産はリーフを米国で販売しているが、トヨタ、ホンダ、マツダ、スバル、スズキなどの国内メーカーは、量産EVとして数多く販売できるクルマを手駒として持っていないので、クレジットを購入するか、罰金を支払うしか選択肢がない状況にある。エンジン車やHVを売れば売るほど、その台数の4.5%分のクレジットに資金を使わなければならないのだから、まともに収益を得ることができなくなってしまう事態も起こり得るのだ。

  • スバル「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」
  • マツダ「マツダ 魁 CONCEPT」
  • スバルは東京モーターショー2017に水平対向エンジンによるハイパフォーマンスな走りを打ち出すコンセプトモデル「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を出展(左)、マツダは革新の次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を積むコンパクトハッチバックコンセプト「マツダ 魁 CONCEPT」を展示した

日本メーカーにとって、カリフォルニア州は重要な市場であるにもかかわらず、世界的に見れば一部市場での対応と、やや気長に考えてきた節がある。だが、そこに昨2017年の世界的な電動化への移行の動きが起き、慌てているといった様子が見受けられるのである。

より厳しい規制を準備中の世界最大市場・中国

これまでに述べてきたように、提携によって電動化技術の融通をしたとしても、結果として買ってもらえるEVを発売できなければ、クレジットを買い続けなければならないかもしれないのである。ここで問われるのが、単に機能だけではない次世代車という商品概念の構築だ。また、あのメーカーのクルマなら乗ってみたいという、ブランド力も問われることになるだろう。

  • テスラの初代「ロードスター」
  • テスラの2代目「ロードスター」
  • テスラはスポーツカーの「ロードスター」(初代は左、右は2017年に発表となった2代目)からEV作りを始めた(画像提供:テスラモーターズ ジャパン)

ZEV規制と同様の内容で、中国ではNEV(ニュー・エナジー・ビークル)規制が始まろうとしている。2019年から10%をEV、PHV、FCVにしなければならない。2020年には12%へと規制は強まる。これは2019年に7%、2020年に9.5%とするZEV規制より厳しい数値だ。

トヨタが2019年から中国でEVを発売するとしたのも、こうした背景があるはずだ。だが、中国で売れるEVと、米国で売れるEVとは、商品性が異なるのではないだろうか。実際、中国メーカーが開発したEVを合弁会社で生産するという話も出ている。正式には、2020年から中国でEVを販売するとトヨタは表明しているが、内製主義を貫いてきたトヨタが、それをかなぐり捨ててでもEVの販売を急がなければならない状況が迫っている。

2018年は、商品力を備えたEVの市場投入に向け、世界の自動車メーカーにとって正念場となるのである。