オフィス家具でその名が知られる岡村製作所は、新しい働き方の1つとしてコワーキングのリサーチを行っている。コワーキングとは、会議室や事務室などのワークスペースを共有することで、参加者どうしのコニュニケーションを推進する働き方だ。
岡村製作所においてこのテーマに挑んでいるのが、同社マーケティング本部 ソリューション戦略部 未来企画室 室長の遅野井宏氏。働き方改革を考えるプロジェクト「ワークミル」のリーダーも務める人物だ。
本稿では、いわば「コワーキングの専門家」ともいえる遅野井氏から、企業内の人脈と働き方について話を聞いてきた。今回もマイナビニュース別稿で"人脈"について語ってもらった、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本昌大氏、IT企業 Sansanで"コネクタ"の肩書きを持つ日比谷尚武氏の両名。遅野井氏が考える「働き方改革」と「人脈論」について話してもらった。
コワーキングで非効率な働き方を変える
遅野井氏は、岡村製作所のオフィス研究所を経て、働き方を考えるプロジェクト「ワークミル」の運営を手掛ける組織「未来企画室」の室長を務めている人物だ。
この遅野井氏が注目するのが、コワーキングという新しい働き方だ。前述の通り、ワークスペースを共有することで、参加者どうしのコミュニケーションを推進するコワーキングは、会議室や事務室などを共有しつつ、自由に交流しながら協業パートナーを見つけて仕事を進めることができるというもの。
遅野井氏は、かつて自身が有志で電子書籍を制作した際に、実際にコワーキングスペースにおいて専門性を持った個人が「人と人がつながること」の実感を得たという。この経験が、コワーキングをもとにした働き方改革と人と人の繋がりについて研究するきっかけになった。人と人のつながりで仕事ができていくコワーキング―― この考え方を大企業に導入し、非効率な働き方を変えていきたいというのが、遅野井氏の想いだ。
働き方改革のポイントは「イノベーション」と「持続可能性」
コワーキングを推進し「日本人の働き方を変えたい」と考える遅野井氏が、岡村製作所で実施しているのが、働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変えるプロジェクト「ワークミル」だ。働き方改革の議論には「イノベーションを生み出す働き方」「持続可能性の高い働き方」という2つのポイント重要であり、この2つに対してコワーキングスペースやコワーキングという働き方は有益な示唆を与えてくれるという。
1つの企業の中にいることで、別稿で語られた"強い紐帯"を得ることはできる。やり方の決まっている仕事を推進するためには大切なつながりだが、強い紐帯がある組織だからこそ、内部での情報が均質化してしまうデメリットを持つ。逆に人間関係が"弱い紐帯"でつながるコワーキングスペースにおいては、イノベーションのきっかけとなる異なる知と知の組み合わせを作りやすくなると語る。
また日本は長らく長時間労働が問題となっている一方で、終身雇用制度も崩れてきている。この2つの現象は、日本企業における働き方の持続可能性が低くなっているとも表現できるという。働き方改革の施策で効率化が進められる中で、企業内で仕事のこと以外を話す場所がない状態が進んでいるのも拍車をかけている。こういった働き方と雇用の変化の中で、コワーキングでの"弱い紐帯"は、働き手ひとりひとりが自らのキャリアをデザインするうえで重要な意味を持ち、持続可能性の高い働き方を実現するのではないかと遅野井氏は述べる。
良質なコワーキングの選び方と探し方
では、若いビジネスパーソンはどのようなコワーキングを選び、活用したら良いのだろうか。遅野井氏は「参加者が互いに関心を持っている空間」「他人の価値をテイクするだけでなく、自分の価値をギヴできる人が集う空間」に参加することを薦める。コワーキングが行うイベントに参加し、どんな人が集まっているのかを掴むことが、良い空間に出合う方法とのことだ。
同時に、ソーシャルネットワークによってコワーキングの見える化が進んでいるため、SNSは最大限に活用すべきだと述べる。「自分が提供できる価値を明確にするために、自分の価値を棚卸しして再整理しましょう」と遅野井氏は説明し、そのためにSNSなどで情報を発信し続けることが大事だとまとめた。
このようなコワーキングと働き方の未来については、遅野井氏が参加したムック「WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE01」(プレジデント社)でさらに詳しい内容を知ることができる。社会での働き方、人脈の作り方について考えてみたいビジネスパーソンは、一度目を通してみてはいかがだろうか。