『「なぜか売れる」の公式』(日経ビジネス人文庫)や『課題解決につながる「実践マーケティング」入門』(日本実業出版社)、『8割捨てる! 情報術』(日本経済新聞出版社)など、独自の切り口で多数のビジネス書を執筆している理央 周氏。

マーケティング アイズ株式会社の代表取締役、関西学院大学 経営戦略研究科 准教授など様々な肩書を持つ同氏は、ビジネスにおける人脈をどのように考えているのだろうか。

  • 左から、日比谷尚武氏、理央周氏、徳本昌大氏

    左から、徳本 昌大氏、理央 周氏、日比谷 尚武氏

今回もマイナビニュースの別稿で"人脈"について語ってもらった、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本 昌大氏、IT企業 Sansanで"コネクタ"の肩書きを持つ日比谷 尚武氏の両名に登場頂き、理央氏の考える「人脈論」について議論してもらった。

自分をマーケティングして書籍を出版

理央周氏が語る人脈の作り方

自分をマーケティングできないマーケッターなんて説得力がないと笑いながら語る理央氏

理央 周氏は、マーケティングの専門家として数々の企業で活躍してきた人物だ。静岡大学人文学部経済学科を卒業後、中央発條、フィリップモリスなどに勤務。インディアナ大学経営大学院にてMBAを取得した後は、アマゾンジャパンやマスターカードなどのマーケティング・マネージャーを歴任する。

だが理央氏はある時、「マーケッターなら自分をマーケティングしよう」と考え、独立し、「マーケティング アイズ株式会社」を設立。これまでに得てきた知識と経験から、自身でマーケティング戦略を立て、出版や編集の専門家を探し、書籍を執筆。数々のベストセラーを生み出した。これらの活動に加えて、現在では、関西学院大学で教鞭を執っている。

理央氏は「"マーケティングをやれば、どんな企業も収益を好転させることができる"という事実を伝える」という経営理念を掲げている。この理念を伝えるために最も適したメディアが、長い間読者の手元に、また世の中に残る「書籍」なのだと同氏は語る。

人脈は仕事で成果を出すという目的を達成する手段

数々の書籍を世に送り出している理央氏も、1980年代の若かりし頃は勉強会などに多数参加していたという。当時は当然SNSなど存在しない。同氏は勉強会でできる限り多くの名刺を配り、多くの出会いから価値観の合う方との独自の人脈を手繰り寄せたそうだ。

理央氏は、SNSが普及した現在でも人脈構築の本質はまったく変わっていないと語る。SNSによって人の繋がりが可視化され、より簡単に他者にアクセスできるようになったが、人と人が繋がるということの重要性自体は変わらない。

若いビジネスパーソンがSNS時代の人脈構築を行う上で意識すべきこととして、理央氏は次のアドバイスを贈る。

まず、自分の専門分野に注力し、自分の価値を高めること。他者に対し興味をもってもらうには、相手に自身の価値を知ってもらう必要がある。理央氏は、若いビジネスパーソンは「まず目の前の仕事をまず一生懸命やる」ことが自身の価値を高める確実な手法だと語る。

  • 理央周氏が語る人脈の作り方

    SNSの存在しなかった80年代当時の勉強会の様子を語る理央氏

次に実際に顔を合わせることの重要性。SNSで人脈を作ろうとしている若い人には「実際に顔を合わせず、人と繋がろうと躍起になる」人も多い。だが、コンピュータやネットワークが普及した現在、「人と人が顔を合わせないとできないこと」の価値は逆に上がっているという。同じようなことをやる人が増えるほどその行動の価値は下がるということだ。音楽は、デジタル化されたことでコピーが容易になり、いまやアーティストの1番の価値はライブパフォーマンスになったという見方がある。人付き合いもこれと同じで、人と人が直接向き合って話すことにこそ、最大の価値があるという。

「人脈の広がりという意味ではSNSは非常に大事なものでしょう。しかし人と人とのつながりの本当に大切なことは見失わないでほしいなと思いますね。『誰とでも仲良く、うまく仕事をしよう』なんて考える必要はないのです。仕事の目的は成果を出すことであり、仕事の人脈はそのための手段にすぎません。人脈よりも大事なのは長く付き合える人と巡り会うこと。仕事の成果を出すことで公私ともに付き合い続けられる人脈はまた広がっていくのです」

最終的に構築された人脈とは、いわば結果の1つにしか過ぎない。自分の仕事に邁進していくことで、おのずと人脈は形作られていく。仕事の成果と人脈は表裏一体であり、自分のやりたいことを突き詰めていく過程で、人との出会いがあるという事だろう。これから人脈を構築しようと考えるビジネスパーソンの方は、ぜひ心に留めておいてほしい。