莫大な需要に対し鉄道各社はどのように対応し、その一方で、民間企業として収入を取りこぼさないよう、どのように考えているのであろうか。

時間と空間を販売している以上、形がある商品のように在庫を売り切って、それでよしとはならない。ロスを多少、抱えてもよいから、できるだけ供給を増やし、需要に極力、応じることが最善策となる。

ただ、鉄道車両は新製するだけで、在来線は1両約2億円、新幹線では1両約3億円ほどかかる、かなり高い設備投資になる。需要のピーク時に合わせて用意するのは当然なのだが、需要は季節や曜日、時間によって大きく増減する。閑散期に遊んでいる車両が、少ないに越したことはない。これは、朝夕のラッシュに対応する通勤型電車にも言える。

鉄道車両は、法令で定められた定期検査を行わなければならない。そこで、繁忙期にはこれを行わず、営業に投入できる車両を最大数確保し、その代わり閑散期に集中して検査を実施する方策がよく取られる。繁忙期は一般的には休暇の時期に当たるため、検査に当たる係員の労務管理上も、これは理にかなったやり方だ。ただ、検査工場の能力が、どこまで作業の集中に耐えられるかが課題ではある。

東海道新幹線の需要と供給のバランス

参考までに、JR東海・JR西日本が所有し、営業に使える東海道新幹線向けの車両は、2017年度初頭の段階で、主力のN700系が16両編成129本。臨時「のぞみ」や「ひかり」「こだま」用の700系が16両編成36本。合わせて165本ある。

  • 左:一見、区別がつかないが、この「のぞみ189号」は多客に対応する臨時列車。右:臨時に運転される列車は、表示される列車番号で区別できる。こうした列車が、繁忙期には最大限増発される

編成1本当たりの定員(座席数)は、N700系、700系とも1323人。12月28日から1月4日までの繁忙期において、JR東海は2016~2017年には1日平均405本の列車を東海道新幹線で運転した。席数では約53万5000席/日、片道当たり約26万8000席/日となる。

これに対し、下りのピークとなった2016年12月29日の利用客数は約29万6500人、同じく上りは2017年1月3日で、約31万7000人あった。単純に比較すると供給不足のように思えるが、利用客は東海道新幹線の全区間、乗車するわけではない。

例えば東京から名古屋まで使われた「のぞみ」の席に、名古屋からは別の利用客が座るというように、同じ列車の同じ席を何人も使うことは、ごく当たり前にある。それを考え合わせると、一部の利用客が集中する時間帯を除けば、需要と供給のバランスはうまく取れていると考えられよう。

  • 左:N700系より一世代前の新幹線電車、700系。現在も臨時ながら「のぞみ」に使われる。右:現在の東海道新幹線の主力車両である、N700系

ピークを避けるのが、やはり楽

もちろん需要が大きい時間帯には、1時間あたり片道「のぞみ」10本、「ひかり」2本、「こだま」2本が運転可能な、東海道新幹線のダイヤがフル活用される。臨時の「のぞみ」も最大限、増発される。

利用する客の方も、こうした実状を知り、利用が集中することが予想される日や時間帯に無理に乗ろうしないこと。少し日時をずらせば、意外に楽に帰省できるものだ。

現代ではインターネット予約も普及している。それならば空席検索も容易なので、「みどりの窓口」の長蛇の列に並ぶ必要もない。