アニメ化、実写映画化もされた三部けいによる漫画『僕だけがいない街』が、今度はNetflixによってドラマ化され、世界190カ国で配信される。「再上映(リバイバル)」と呼んでいる特殊能力を持つ主人公・藤沼悟が、タイムリープして小学生の頃から続く殺人犯に迫っていく同作は、張り巡らされた伏線と予想の付かない展開で、多くの支持を受けた。
原作の完結後の実写化ということで注目を受けているNetflix版は、全12話でじっくりと物語が描かれる。主役を務める古川雄輝に、同作の見どころや、俳優としての働き方について話を聞いた。
映画ともドラマとも違う、Netflixオリジナルドラマ
――『僕だけがいない街』は、これまでに実写映画化、アニメ化などの展開もあり人気の作品ですが、元々ご存知だったんですか?
知っていました。純粋に有名な作品ですし、自分が観ていたものに出演できる嬉しさもありました。すごく惹き込まれるストーリーですし、僕自身、こういう風に走ったり汗をかいたりと、追い込まれる役は新鮮でした。
――今回はNetflix配信のドラマということですが、普通のテレビドラマとの違いは感じましたか?
映画のような雰囲気もあり、ドラマとはまた違うところは感じました。普通の連続ドラマだと、監督も数人いるんですが、今回は1人の監督が撮ってくれるので、密にコミュニケーションを取りながら撮影に臨めるところが良かったです。それでいて、普通の映画よりもじっくり全12話を撮っている分、原作に忠実に作れて、ストーリーにも深みが出ていると思います。
――撮影の中では、具体的にどういうコミュニケーションをとられたのでしょうか。
一番話し合ったのは、ナレーションとセリフの兼ね合いです。主人公が一人でいることが多くて、原作では頭の中でいろいろ考えているシーンも多いのですが、映像化した時に独り言が多いと少し不自然なので、どこまでリアリティを持ってやるのかについては、結構話しました。
――子供時代の心の声もあるし、アフレコは大変そうですよね。
アフレコには時間がかかりましたね。心の声とはいえナレーションでもあるので、あまり感情的にならず、より観ている人がわかりやすく、伝わるようにしたいと話し合いました。例えば僕が緊迫したシーンで、セリフでは「くそー!」と言っているんだけど、ナレーションは意外と冷静であったりとか。
4回就活できる状況を確保
――古川さんご自身についてお聞きしたいと思います。大学で周りが就職活動している時に、俳優の方に行くとご決断をされたと思いますが、そこにはどのような思いがあったのですか?
就活もしていましたし、理工学部生として大学院も受かっていました。大学3年生の時点で悩んでいたので、大学3年、4年、修士1年、2年と4回就職できる状態を作っておいて、かつオーディションを受けて、なるべく選択肢を増やすようにしていました。
でもオーディションを受けたときに、僕はグランプリをとることができなかったんです。そのオーディション内で1位になれないようじゃ、この世界に入って活躍するのはちょっと無理なんじゃないか、と考えたんですけど、1番良い選択をしたいなと思っていたので、悩みました。
もしここで俳優の道を諦めて、エンジニアやサラリーマンになったら、一つでも嫌なことがあった時に、絶対に「やっぱり俳優をやっておけばよかった」と考えてしまう。仮にエンジニアとして順調にいっていたとしても、グランプリの人がテレビに出ている瞬間を見てしまったときに「やっぱりやっておけばよかった」と思ってしまうことを想像すると、どうなるかわからないけど、1回挑戦することが最善の選択かなと、こちらの道を選びました。「俳優になりたい! 芝居が好きだ!」という感覚よりは、「後悔をしないための選択をした」という感覚が近いです。