日本の大学の最高峰である「東京大学」。そこは多くの学生の憧れであるだけでなく、東京屈指の銀杏の名所であることをご存知だろうか。中世イギリスを思わせる重厚な建築と黄金色の銀杏のコントラストは、まさに圧巻の一言。さらに、見どころだけでなく構内での"お買いもの"も意外に楽しかったりもする。そんな東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)とその周辺を、秋晴れの一日、散策してみた。

  • 東京大学「本郷正門」は、国の登録有形文化財のひとつ。銀杏並木が安田講堂に向かって続いている

    東京大学「本郷正門」は、国の登録有形文化財のひとつ。銀杏並木が安田講堂に向かって続いている

東大は建築も自然も見どころだらけ

年配の人に東京大学の話をすると、たいてい「東大紛争」というキーワードが登場する。その舞台となったのが東京大学本郷キャンパスにある「安田講堂」だ。大正時代に建てられ、今なお東大のシンボル的建造物として聳えているのだが、ここにある見どころはそれだけではない。東京大学ホームページによると、本郷キャンパスだけで安田講堂を含めた8つもの建築物が国の登録有形文化財に指定され、3つが東京都の歴史的建造物に選定されている。

  • 門は江戸時代の建造物。ここも銀杏が美しい

    門は江戸時代の建造物。ここも銀杏が美しい

その様相は「少し日本寄りのハリー・ポッターの世界」のようで、「こんなところで勉強できるなんて」と東大の学生をうらやまずにはいられない。ちなみに、ザ・日本の風情漂う「赤門(旧加賀屋敷御守殿門)」は、登録有形文化財よりもさらに価値が高いとされる重要文化財に指定されている。

  • いざ、東大へ! (赤門や正門などの門は通常、土日祝は閉門されている。横にある小さな扉を通って出入りが可能)

    いざ、東大へ! (赤門や正門などの門は通常、土日祝は閉門されている。横にある小さな扉を通って出入りが可能)

ところが、大学としては"難関"と呼ばれるこの東大、意外と気軽に入ることができる。もちろん学生としてではなく散策としてなのだが、紅葉の美しい11月中旬~12月上旬ともなると、幼い子どもを含めた老若男女が公園のごとくに歩き回り、黄色い落ち葉を空高く舞い上げてみたり、歴史的建築に囲まれた重々しくも爽やかな空気を楽しんだりしている。ただし、学校なので静かに見学しよう。

土・日曜日には、学生による無料のキャンパスツアーも開催している(要事前申し込み)。時間があれば参加してみてはいかがだろうか。

  • 伝統ある大学らしい雰囲気が漂う

    伝統ある大学らしい雰囲気が漂う

ミドリムシのお菓子!? 東大オリジナルグッズが楽しすぎる

ここまで来たら、構内の大学生協購買部に立ち寄りたい。ここでは予想外に豊富な東京大学オリジナルグッズが販売されている。大学名入りの各種文房具はもちろん、「東京大学クッキー」「東京大学チョコレート」や、「東京大学ワイン」「芋焼酎 本郷赤門」「純米吟醸酒」まである。

  • 大学名入りの「ノート」(360円)、「万年筆」(216円)、卒業生が描いたポストカード(124円/在庫しているもののみで販売終了)

    大学名入りの「ノート」(360円)、「万年筆」(216円)、卒業生が描いたポストカード(124円/在庫しているもののみで販売終了)

  • 万年筆にも「東京大学」の文字が。持っているだけで賢い気分になるから不思議だ

    万年筆にも「東京大学」の文字が。持っているだけで賢い気分になるから不思議だ

中でも特に注目したいのが、ミドリムシ(ユーグレナ)が入ったお菓子。ミドリムシは栄養素が豊富とのことで、東京大学発祥のベンチャー企業が研究開発をしているという。ムシと言ってもミドリムシは藻類だそうで、食品のほか、燃料としても期待されているのだとか。

  • 東大発ミドリムシのお菓子!!「ユーグレナきなこねじり」(255円)

    東大発ミドリムシのお菓子!!「ユーグレナきなこねじり」(255円)

  • 味は普通にきな粉の和菓子

    味は普通にきな粉の和菓子

生協やオフィシャルショップは数カ所あるが、日曜日はほとんどが閉店していて、開いているのは「生協第二購買部」のみ。安田講堂の真下あたりにあるため、講堂に向かって右にある階段を降りていこう。

  • 「東京大学プティゴーフル」(550円/缶入り)

    「東京大学プティゴーフル」(550円/缶入り)

  • 缶の中には色とりどりな赤門柄のパッケージに包まれたゴーフルが

    缶の中には色とりどりな赤門柄のパッケージに包まれたゴーフルが

  • 「東京大学うま味煎餅」(515円)

    「東京大学うま味煎餅」(515円)

  • 東大生協中央食堂で人気の「赤門ラーメン あんかけスープ」(390円)。麺は入っていない。ちなみに食堂は学生以外でも利用できる

    東大生協中央食堂で人気の「赤門ラーメン あんかけスープ」(390円)。麺は入っていない。ちなみに食堂は学生以外でも利用できる

富士山を望む展望スポットも

明治10(1877)年に設立された東京大学。その周辺は、やはり同様に文化的な香りが漂っている。樋口一葉が幼少期を過ごした跡地や、明治時代に下宿屋として建てられ、現在は旅館として営業している登録有形文化財「鳳明館」、迷路のような細い路地など、風情ある街並みに迷い込むのも面白い。

  • 樋口一葉が住んでいた一角。細い路地が階段へと続く

    樋口一葉が住んでいた一角。細い路地が階段へと続く

それらを通って「文京シビックセンター」へ抜ければ、東京を一望できる展望ラウンジへとたどり着く。その道のりには学生も多く訪れる食べ歩きグルメがちらほら。秋の散策を十二分に満喫できるはずだ。

  • 階段を登ってさらに細い路地へ。住宅地のため、配慮を忘れずにいよう

    階段を登ってさらに細い路地へ。住宅地のため、配慮を忘れずにいよう

  • 登録有形文化財の木造2階建旅館「鳳明館」(写真手前は別館)

    登録有形文化財の木造2階建旅館「鳳明館」(写真手前は別館)

真っ赤なさっくり唐揚げ!?

東大の最寄駅である「本郷三丁目駅」から正門へ向かう途中にある「とり多津」は唐揚げの専門店。様々な種類のボリューミーな唐揚げやコロッケを販売している。今回チョイスしたのは、びっくりするほど真っ赤な「紅生姜ももからあげ」(280円/100g)と、この店で人気だという「瀬戸内レモン塩むねからあげ」(230円/100g)。それぞれ1つでも結構な食べ応えだ。

  • グラムでなく、個数でも購入可能。「紅生姜ももからあげ」(280円/100g・写真は170円/61g)。ピリッとした紅生姜で身体が温まりそう

    グラムでなく、個数でも購入可能。「紅生姜ももからあげ」(280円/100g・写真は170円/61g)。ピリッとした紅生姜で身体が温まりそう

  • 「瀬戸内レモン塩むねからあげ」(230円/100g・写真は200円/87g)「やっぱりお客さんは学生さんが多い」とのこと。若者の良質なタンパク源となっているのだろう

    「瀬戸内レモン塩むねからあげ」(230円/100g・写真は200円/87g)「やっぱりお客さんは学生さんが多い」とのこと。若者の良質なタンパク源となっているのだろう

●information
とり多津
東京都文京区本郷4-37-14

老舗のひとくち和菓子でキュン

本郷は坂が多い。そのひとつ、菊坂を下ったところに見つけた甘味処「えちごや」は、創業140年の老舗だ。店先にはみたらし団子や桜餅など、定番の手作り和菓子が並んでいる。それぞれ小ぶりでかわいらしく、あれもこれも欲しくなってしまうに違いない。

店主は20歳の時に父親から店を引き継ぎ、以降60年も営業を続けているという。角切りされたお餅はまだふんわりと柔らかく、「今朝ついたばっかりだからね」と楽しげに話していた。

  • 「みたらしだんご」(110円)、「よもぎだんご」(110円)、「道明寺(桜餅)」(130円)、「いなり寿司」(80円)。筆者は思わずあれもこれも買ってしまった

    「みたらしだんご」(110円)、「よもぎだんご」(110円)、「道明寺(桜餅)」(130円)、「いなり寿司」(80円)。筆者は思わずあれもこれも買ってしまった

  • よもぎだんごには、別途きな粉が付いてくる。手作り感満載の柔らかな団子にほっこり

    よもぎだんごには、別途きな粉が付いてくる。手作り感満載の柔らかな団子にほっこり

●information
えちごや
東京都文京区本郷4-28-9

ダイヤモンド富士が見られるかも!?

「文京シビックセンター」は、区役所などが入った区の施設ながら、意外に穴場な展望ラウンジがある。付近には高層ビルがなく、展望ラウンジとしては比較的低層階の25階であっても相当に眺めがいい。

  • 素晴らしい眺めの展望ラウンジ。半分はレストランになっている

    素晴らしい眺めの展望ラウンジ。半分はレストランになっている

東京スカイツリーや新宿のビル群、そして時期によっては遥か彼方の山の連なりまで望めてしまう。夕暮れ時には都庁の向こうに聳(そび)える富士山が、背後から夕日に照らされる姿を見せてくれる。散策の締めくくりに訪れてみてはいかがだろうか。

  • 都庁の向こうに夕日に照らされた富士山。街の夜景もきれいに違いない

    都庁の向こうに夕日に照らされた富士山。街の夜景もきれいに違いない

●information
文京シビックセンター
東京都文京区春日1-16-21(東京メトロ南北線・丸ノ内線「後楽園駅」直結) 展望台は25階

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。