歯磨きをする最適なタイミングとは

唾液の分泌量と丁寧な歯磨きが歯石予防のカギとなりますが、食事を含めた「ライフスタイル」という観点からの予防も大切です。

例えば、食べると唾液を含んで粘着性が出るご飯やパンや麺類などは、歯の表面に付着しやすいですよね。それに対して、肉類や野菜などの繊維質で歯ごたえのある食材は、しっかり噛まないと食べられません。その噛む行為こそが唾液分泌を促し、自然とお口の中や歯の表面を清掃することにつながります。

では、具体的に唾液量を増やし、サラサラにするにはどうすればよいのでしょうか? 唾液のもとは水分ですが、濃いお茶やコーヒーなどは利尿作用があり、唾液よりも尿となって排泄されていきます。そのため、唾液を増やすには、水を一日に1.5~2L飲むことが重要です。

他にも、歯みがきのタイミングやその仕方も肝要となってきます。最近は、毎食後すぐよりも、食後20~30分経過して唾液で充分中和されてからの歯磨きが推奨されています。

口腔内の細菌数が一日で最も多い起床時には、糞便10gに相当する菌が存在すると言われています。歯垢となる菌を効率的に取り除くには一日2回、起床時と就寝前により丁寧にしっかりと磨くことが大切です。

歯磨きに適した歯磨き剤とは

ただ、どれだけ丁寧に歯磨きをしていても、どうしても100%歯石を防ぐのは難しいです。歯垢や歯石をそのままにすると、口臭や歯のくすみ、歯肉の腫れ、歯肉出血などを引き起こします。いわゆる歯周病となって最悪の場合、歯が抜けてしまうことも起こりえます。

歯石は歯垢を引き寄せる促進因子となり、その表面は歯垢で覆われています。歯肉と歯垢は接しているので、その中の細菌から発する有害物質によって、歯肉や骨が炎症を起こすのです。

では、そのようなトラブルを防ぐにはどうしたらよいでしょうか? 残念ながら、硬い歯石は歯ブラシで取り除くことは不可能です。やはり、歯科医院にて定期的に専用の機器(超音波スケーラーなど)で砕いて取り除いてもらうのが望ましいでしょう。歯石を取った後は炎症の原因が取り除かれ、歯磨き時の出血や歯肉の腫れ、口臭も軽減されます。

一方、それまで歯石が防壁のように覆っていた歯の根元が露出され、水などの冷たいものなどがしみることもあります。それでも、唾液中のミネラルが露出された表面を硬くしてくれるので、徐々に緩和されていきます。

ミネラルの働きを促進するのに、フッ素塗布や知覚過敏用の歯磨き剤などを使用することもお勧めします。なお、歯石を取り除くと腫れていた歯肉が引きしまって、歯肉が減り歯が長くなったように感じることもありますが、それが本来の正しい歯肉の状態です。

歯石が付きやすい方は、3カ月ごとに定期検診を受け、歯磨き指導もしてもらい、口腔セルフケアを充実させましょう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 江上理絵(エガミ・リエ)

歯科医。江上歯科勤務。地域に密着し、お子様からご年配の方まで、お口の健康づくりのお手伝いをしています。3児の母でもあり、子供の歯並びを姿勢から考える「咬合育成法」を取り入れ、日々、治療や指導を行っています。 En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。