2017年11月29日に2ndミニアルバム『only you? only me!』をリリースした声優・アイドルの芹澤優。前作に引き続きSCREEN modeの太田雅友がプロデュースした本作は、より芹澤優の魅力を引き出した一枚となっている。

芹澤 優(せりざわゆう)。1994年12月3日生まれ。東京都出身。エイベックス・ピクチャーズ、81プロデュース所属。主な出演は『プリパラ』南みれぃ役、『LOST SONG』モニカ役、『賭ケグルイ』夢見弖ユメミ役、『双星の陰陽師』音海繭良役、『実は私は』白神葉子役など
撮影:Wataru Nishida(WATAROCK)

今回はアルバム発売を記念し、芹澤優にインタビューを実施。アルバムについてはもちろん、芹澤のアイドル論についてもたっぷりと語ってもらった。

●猫耳でお姫様

――2ndミニアルバム『only you? only me!』はどういったアルバムになりましたか?

私のいろいろな部分を出せたアルバムになっています。全体的に「芹澤優の意思」みたいなものが感じられる一枚になったんじゃないかな。

――タイトルは芹澤さんが考えられたんですよね。前作『YOU&YOU』と同じく「ユー」が付いていますね。

そうなんです。「you」は使い勝手がいいし、タイトルに付けたかったんです。「私だけを見て」という意味なんですけど、「私だけを見ないと許さないよ」という感じではなく、「ゆうだけ見てにゃん!」みたいな、わがままなイメージですね。

――そういったところも非常に芹澤さんっぽいですね。今回も衣装はオサレカンパニーの茅野しのぶさんがデザインされています。まず目がいくのは猫耳。

猫耳! はしゃいでますよね! 衣装は表題曲の「PRINCESS POLICY」をイメージして作ってもらって、カラーは黒とピンクで、レースも入れて、かわいらしさとロックな雰囲気を入れてもらいました。頭は最初ベレー帽だったんですけど、なんかパンチがほしいなと思ったんです。

――パンチがほしくて猫耳を。

「PRINCESS POLICY」って猫っぽい振り付けのにゃんにゃんダンスがあるんですよ。なので「猫耳とかどうですかね」と提案したら採用されて。

――ジャケット写真ではかなり自然に猫耳を付けていましたね。

私も最初は戸惑っていたんですよ。自分で猫耳と言ったものの、やっぱり痛いかなって。でも、私が抱くアイドルのイメージってピンク色とか猫耳だったので、やっぱり付けたいなと。あと、これまで声優さんがジャケ写で猫耳を付けたことってないらしいんですよ。それならって(笑)。

『only you only me!』アーティスト写真

――今回も全曲、SCREEN modeの太田雅友さんがプロデュースを。

曲に関しては太田さんにそれぞれ出していただいたものを私が選んだんですけど、歌詞に関しては自分でオーダーシートを作詞家さんたちに提出して「こんな楽曲にしたい」と相談していきました。表題曲の「PRINCESS POLICY」も畑亜貴さんに、「芹澤優ってこうだよね」という、ファンにも納得してもらえるような曲にしたいとお願いしたんですよ。前回の「Voice for YOU!」と同じイメージです。

――「PRINCESS POLICY」の歌詞を見せられて、「これどの声優の曲だと思う?」と言われたら間違いなく「芹澤優」と答える。そのくらい芹澤さんっぽい曲だと思います。

わー! "どのカワイイが好きか決めなきゃ もちろん私? 当然だよね!"とか、私っぽい歌詞ですよね。あと、私の中では「Voice for YOU!」は王道というイメージの楽曲だったので、「PRINCESS POLICY」は変化球になればいいなと、メロディも懐かしさを感じるものにしていただきました。

――MVも撮影していましたね。

撮りました! プリンセスの私が狼の執事をふたり従えてどや顔をしたり、紅茶を飲んだり、いたずらっぽいお姫様の童話のようなイメージです。あと、MVで付けている髪飾りはオサレさんがその場で作ってくれたんですよ。「猫耳じゃお姫さまっぽくないなー」ってつぶやいたら、すぐに。めっちゃかわいかったです!


――2曲目は「お願いWeekend」。歌の主人公が、週末「キミ」に会えるのを待ち遠しく思っているという乙女チックな歌ですね。

はい、この曲はファンのみんなに向けた歌なんです。週末にライブがあって、「はやくセリコに会いたいな―」って思うファンの気持ちと、「私もはやくライブでみんなに会いたいな―」って気持ちを入れ込みました。ファンのみんなも、平日は仕事や学校という日常があって、その日々があるからライブの一瞬が最高に楽しいんだろうなと思って、その「なんとなく過ごす日常」に馴染むような楽曲に仕上げていただきました。

――懐かしい曲調と芹澤さんの甘い歌声が特徴的です。

そうなんです。レコーディングではあんまり力を入れず、まったりと脱力して歌ったら、甘い感じになっちゃって。リラックスしてるときの私ってこうなるんだって発見でもありました。

●ほどよい感情の震えがいい感じに曲に乗れば

――3曲目は「ハウ?トゥ!パーティー☆」。ライブで盛り上がりそうな楽曲ですね。

今回、アルバムを作るにあたって、ライブで盛り上がれる曲を多くしたいと思っていました。それがまさに「ハウ?トゥ!パーティー☆」のテーマですね。2017年はi☆Risの活動もあり、声優の仕事もありで、どうしてもソロライブをたくさん出来なかったので、「もっともっとソロでいろんなライブに出ていきたい」という思いも込めています。何度もライブができないので、「今回のライブで初めて聞いた」という方でも、パッと掛け合いを入れられる曲があればいいなって。

――聞いただけですぐ体が動いちゃいそうな楽曲ですよね。掛け合いも"おもいきり!(おもいきり!)とか、"叫んじゃえ!(叫んじゃおう!)"とか、そこまで難しくもない。ファンの方ならここで盛り上がってくれるという信頼感ですね。

もうビリーブです。みんなのセンスを信じます!

――折り返しを過ぎて、バラードの「今夜も月がきれい」。

TRUEさんに作詞をしてくださって、ほんとありがたやって楽曲です。実はこの曲は、ワンコーラスだけ自分で詞を書いていたんです。でも、やっぱり詞には自信がないし、自分の納得したものを聞いてもらいたいという思いもあったので、全部TRUEさんにおまかせしました。そこでいただいた歌詞が最高だったので、お願いしてよかったな、と。

――詩的な詞になっているのが特徴ですね。

夏目漱石が「I love you」を「月がきれいですね」と訳したという逸話があると聞いて、最高にいいなと思いました。めっちゃ情緒あるやん! って。あと、私は『満月をさがして』が好きすぎてこの業界に入ったくらいなので、お願いしていないのに「月」をタイトルに入れてくれるなんて、TRUEさんハグ! みたいな。

――作者の種村有菜さん主催のパーティに行ったり、コラボカフェにも行ったりするくらい大好きですもんね。

そうなんです。超嬉しかったです。"粉雪"とか冬の季節的なものもあり、私の好きなお月さまもありで! ほんとに冬+バラード+ラブソング=最強です。かなりこだわった楽曲なので、何度もレコーディングさせていただきました。一番歌ったと思います。

――どういった部分に芹澤さんのこだわりを込めました?

やっぱりラブソングは共感がすべてだなと思ったんです。ただ、感情が入っていなくてもだめだけど、感情を爆発させすぎても、「おーおーおーそんなに好きか!」となっちゃうので(笑)。そのバランス感を表現するのが難しかったですね。こういった切なくて苦しいバラードってあまり歌ったことがなかったんです。i☆Risでも「Defy the fate」くらい。ほどよい感情の震えが、いい感じに曲に乗ったらなと思いました。

●ライブの最後にやる定番曲が欲しかった

――松井五郎さん作詞の「No Regulation」。思春期のイライラを歌詞に詰め込んだ楽曲ですね。

私が小・中学校時代に感じていたことを歌った曲です。私はロック的な精神は持っていないんですけど(笑)。

――"ゲージに押し込んだら ルールで縛り付けて"とか、"だって大人もすぐキレる なんでみんなを否定したがる"とか、反骨精神の塊みたいな歌だなと。

ゲージは教室、ルールは校則、大人は先生ですね。やっぱり学校のルールに縛られて、みんな制服を着せられて整列させられる感じに息が詰まっていたんです。そういった学生時代を思い出して、松井五郎さんに長々と送ったら、素晴らしい歌詞を書いていただきました。「これが歌いたかったんだ―!」って。

――芹澤さんは学生時代、マスクやサングラスで変装して学校に行っていたじゃないですか。その頃ではない?

それは高校時代ですね。高校時代は「もういいや、辞めちゃおう」みたいな「No Regulation」を超えた時期です。声優にもなると決めていたので苦しくはなかったんですよ。でも、中学校までは、自分の中に「ルールは守らなくちゃ、みんなと一緒にしなくちゃ」という気持ちと「ルールは守らなきゃ」みたいな気持ちが戦っていたんです。そのバトル感を歌にしてみました。絶対に共感してくれる子はいると思います!

――最後は「パラレルスターズ」。

古屋真さんの歌詞がすごい好きで、今回初めてお願いしてみたんです。私、2017年はいろいろなものをインプットしようと思って、アイドルのライブDVDをたくさん観ていたんです。観ていくうちに、ライブの最後にやる定番曲みたいなものが私にもほしいなと思ったんですよ。

――たしかに、ライブの最後の盛り上がりや名残惜しさとか、またライブに行きたいみたいな歌詞ですね。

次のライブまで会えない時間があるけど、寂しくない、待っててね、また会おうねってイメージです。サビの"手と手が天に星を 振りまくように"のところでみんなで手を振って、一緒に踊って楽しく終われるような一曲になったらいいな。

――全体的に今回のアルバムは前回よりライブをイメージして作っていますね。

それも無意識だったんですよ。できあがったあとに、私はやっぱりライブが好きなんだなって実感しました。

――通して聞いていて気づいのは、これまでの5曲って全部、芹澤優が入っているんですよ。「PRINCESS POLICY」から「今夜も月がきれい」までは「you」が入っていて、「No Regulation」には「優」って文字がある。でも、「パラレルスターズ」にはないので、この曲は芹澤優ではなく、ひとりのアイドルが歌っているという印象を持ちました。

気付かなかった! たしかにそうなのかも。古屋さんは私のことをマジで知らないので。やっぱり私のことを知っている方って、歌詞も私に寄せてくれるんですよ。松井洋平さんも「ハウ?トゥ!パーティー☆」で"ブルーの光"とか入れてくれますし。でも、古屋さんは今回私が好きだからお願いした作詞家さんで、好きなアイドルのイメージを書いてもらっている。なので、そういうところはあると思います。