南海電気鉄道は28日、浜寺公園駅旧駅舎の曳家工事を報道公開した。現在、同社は南海本線石津川~羽衣間(約2.7km)で連続立体交差事業を行っている。これにともない、登録有形文化財に指定されている浜寺公園駅旧駅舎を移動することを決めた。

  • フェンスに囲まれた浜寺公園駅旧駅舎。曳家工事が報道公開された

  • フェンスには南海電鉄からのメッセージが書かれた垂れ幕があった

この日の曳家工事は沿線住民らが見守る中、行われた。現場に入ると、ジャッキで引き上げられた浜寺公園駅旧駅舎の堂々とした姿が目に入る。浜寺公園駅は1897(明治30)年に開業。10年後の1907年にこの旧駅舎が建てられた。

旧駅舎は東京駅の設計にも関わった「辰野片岡建築事務所」の設計によるもの。現在でも十分通用するおしゃれな洋風建築となった。1998年、大手私鉄の駅舎では初めて国の登録有形文化財に指定された。2000年には第1回「近畿の駅百選」にも選出されている。長年、沿線住民から親しまれた駅舎だったが、立体交差事業にともない2016年1月に仮駅舎に切り替えられた。

曳家工事の計画では、旧駅舎を南西方向に20m移動した後、西方向に10m移動することになっている。実際に旧駅舎が移動するのは報道公開が行われた11月28日を入れて計3日。1日あたり10mほど移動する予定だという。移動日の間は準備工事が行われる。

  • 堂々とした姿を見せる旧駅舎。移動用レールまくらぎを使い、旧駅舎を移動させる

  • 曳家の移動量がモニター表示された

  • 20分で動く距離は40cmほどだという

  • 浜寺公園駅旧駅舎の全景

  • 移転予定先は旧駅舎から見て南西方向にあたる

  • 移転予定先から旧駅舎を撮影

旧駅舎は20台あまりのジャッキで持ち上げられ、数台の推進用ジャッキによって移動する。工事関係者の掛け声によって、旧駅舎が本当に「移動」した。ただし「移動」といっても、20分のサイクルで動かせる距離は40cmほど。じっくり観察しないと、移動したことに気づかない。ましてや、上から見るとほとんど移動したことに気づかなかった。

工事関係者によると、曳家工事で苦労した点は下部のレンガを外す作業だという。登録有形文化財の建物だけに、慎重な取扱いが要求されるようだ。なお、外されたレンガは別の場所に保存されている。また、南海電鉄にとって曳家工事は浜寺公園駅旧駅舎が初のこと。今後は浜寺公園駅の隣、諏訪ノ森駅の駅舎でも曳家工事が予定されている。

曳家工事を終えると、浜寺公園駅旧駅舎は改装工事に入る。最終的に工事が終了するのは2018年春頃とされている。その後、堺市に引き渡され、地域のギャラリーやカフェとして再活用される予定だ。