伊藤と観客の想いが形作った、"ミンナイロ"の光景

1stにサプライズゲストとして登場したスーパー戦隊親善大使の松本寛也

再び幕間映像を挟んで、ステージ階段状に登場した伊藤は「Dear Honesty」で明るくアッパーにライブを再開。終盤戦は、再度伊藤のキュートさが前面に打ち出されていくこととなる。この曲ではサビでの、ステージ中央でのダンスにはド直球のアイドルテイストが感じられ、後奏でもキュートにファンを煽っていく。

曲明けのMC中には伊藤の後ろにスクリーンが登場。ファンへ「私の未来のお知らせをしたいと思います!」と宣言し、VTR上映の振りをすると……そこに映し出されたのは満点笑顔の愛美。サプライズでのバースデーメッセージ上映、見事に大成功である。「男の子だったら彼女にしたい子No.1」との発言に、ステージ上で喜びを隠さない伊藤。のちに「絶対あいみんの彼女になーるーぅ!」と宣言しつつも、「……何番目かな?(笑)」ともぽそり。 さて、気を取り直して今度こそ伊藤からの発表。それは、来年1月放送開始予定のTVアニメ『りゅうおうのおしごと!』でのEDテーマ「守りたいもののために」の担当! いつもサプライズを受けてばかりだった伊藤、「今回は私からサプライズをしようと思って、素敵なお知らせを持ってきました!」とどこか誇らしげな表情で語っていた。

そしてライブもいよいよ終盤。続いての「七色Cookie」では、その持ち前のキュートさで観客の視線を釘付けに。タイトル通り虹色のグラデーションに彩られたステージを、笑顔でくるくる回りながらおてんばに移動したかと思えば、サビではネコの手をくるくるさせるようなダンスを披露。そこにあざといぐらいの甘くとろけるような歌声までも乗っけてくるのは、反則モノの大サービスとしか言いようがない。そうして再びライブの世界へと観客をいざなったところで、デビュー曲「泡とベルベーヌ」へ。エメラルドグリーンの観客に向かってしとやかなステージを展開していくのだが、そのフリの滑らかさには寸分のスキもない。そのうえ歌いきった後の表情も純情可憐な乙女そのもので、歌声のみにとどまらずパフォーマンスの面からも曲の雰囲気を表現しきれるという彼女ならではの強みを、存分に発揮する1曲となった。

ラストナンバーを前に、今回で4回目となったバースデーイベント(※ライブはうち3回)を、自身の歩みとともに振り返る伊藤。「最初のイベントでは私の曲がなかったからカバー曲を歌わせてもらって、1stライブはキャラの力を借りて"声優・伊藤美来"としてのライブをできて。去年はカバーとユニット曲やキャラソンをメインにしつつ、ソロデビュー曲も入れてもらって……それもすごく楽しかったけど、アーティスト活動を始めてから『いつか全部自分の曲でライブをできたらいいな』と思っていたので、それが1年でかなうというのは奇跡なんじゃないかなと思います」と語り、「"アーティスト・伊藤美来"として作り上げた曲に昔からのソロ曲、大好きな戦隊ヒーローのカバーもできて、私はこんなに素晴らしいバースデーライブはないと思っています!」と達成感もにじませていた。

そしてそれを、「皆さんや関係者やスタッフの方々、それに友人がこんな私を見つけてくれて今に繋がっていることがとても光栄で、宝物だなと思っています」と感謝の想いを語り、ラストナンバーへ。楽曲披露の前に、伊藤からはふたつのお願いが。「ペンライトを、今の自分の気持ちの色にして振ってほしいんです。あと、曲の中の『準備はOK』って言う部分で、準備がOKだったら『OK!』って言ってください」と告げたら、ラストナンバー「ワタシイロ」がスタート。

冒頭の伊藤の愛らしいスキャットが響けばその背後には青空が表れ、逆に眼前には色とりどりの"ミンナイロ"が広がる。その光の海に、みんなの心に向かって笑顔で手を振り歌う伊藤。落ちサビではその光を右手でさーっとさらうと、「準備は?」「OK!」と気持ちもひとつにまとまる。その歌声にもCD音源以上に感情の高ぶりが強く感じられ、伊藤も歌声でこの日この時の"ワタシイロ"を表し、最後も笑顔のスキャットで曲を閉じた。

次のお散歩も、きっとみんなまた一緒に

2018年1月より放送開始予定のTVアニメ『りゅうおうのおしごと!』のEDテーマを担当

曲明けには「"みんなのワタシイロ"が、ほんときれい!」と喜び、最後の挨拶では何度も何度も体ごと動かして会場の隅々にまで向けて手を振る伊藤。オフマイクで「みんなのこと、大好きでーす!」と叫び、一礼ののちステージから降り、MVの終盤がEDとして上映されライブは幕を下ろした。

……はずだった。しかしその後もアンコールの声は鳴り止まず、ステージは再度明転し伊藤も登場。すると場内には「HAPPY BIRTHDAY」が流れ始め、運ばれてくるケーキを前に「そういう流れじゃなかったじゃん!」と慌てる伊藤。夜の部2度目のサプライズ、ここに炸裂である。そして「また、ぜひ一緒にみんなとお散歩に出かけたいです。また会いに来てくれますか?」と問いかける伊藤には大歓声が返り。それを受けての再度の挨拶中には、笑顔を向けてくれる客席に向けて「私のファンはいい人しかいない」とこぼす。その言葉は、紛れもなく本心だったことだろう。そして最後に改めてオフマイクで「また会おうねー!」と想いを届け、ライブは本当に終了の時を迎えたのだった。

"バースデーライブ"と称せば、普通はなんでもありのお祭りのようなものを想像することが多く、昨年までの伊藤のライブもその例に漏れなかった。しかし今年の彼女のバースデーライブは、1枚のアルバムを軸にひとつのストーリーを作り上げたものであり、しかも随所に"アーティスト・伊藤美来"としての想いや意志の感じられる、より観客の心を突き動かすライブだったように思う。そのパフォーマンスの多様性、そして前述の通りカバー曲コーナーで感じさせてくれた別アングルの魅力といった大きな大きな可能性を感じさせてくれた伊藤美来。これから先、彼女のどんな"ワタシイロ"が見られるのか、21歳の彼女からも目が離せない。