スカイマークは10月5日、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会(下町PJ)とのコラボレーション企画として、特別塗装機 「下町ボブスレージェット」を披露。同機は10月6日より、スカイマーク全路線にて運用される。機体には、下町PJの最新機である「新10号機」がデザインされており、描かれているボブスレーは平昌(ピョンチャン)オリンピックを目指すジャマイカチームデザインとなっている。

特別塗装機 「下町ボブスレージェット」と下町ボブスレー「新9号機」

大田区の会社として同じ夢を

スカイマークは現在、羽田空港を中心に10都市19路線に就航している。その羽田空港のある東京都大田区には3,000以上の工場があり、国内随一のモノづくり企業の集積を誇る。今回の取り組みは約1年前、大田区に本社を構えるスカイマークの市江正彦代表取締役社長に、下町PJの細貝淳一GMから相談があったことが始まりだという。

スカイマークの市江正彦代表取締役社長

ひとつ目はスポンサーとしての打診であり、市江氏も下町PJの世界への挑戦やモノづくりの力と心意気の発信を応援し、また、大田区の産業振興の一助となれればという想いを固めたという。

ふたつ目は特別塗装機をつくってくれないかというものであり、スカイマークはすでに、タイガースジェット(阪神タイガース)、タカガールジェット(福岡ソフトバンクホークス)、ヤマトジェット(映画『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』)の特別塗装機を展開している。今回の下町ボブスレージェットの機体には、下町PJのスポンサーである21社中、17社のスポンサーのロゴがデザインされており、スカイマークを含めると全18社が勢ぞろいすることになる。

全17社が下町ボブスレージェットのスポンサーとして支援

機体前方左ドア付近には、下町ボブスレーのロゴとジャマイカの国旗、大田区の紋章、スカイマークのロゴをデザイン

運航機材は177人乗りのボーイング737-800(JA73NT)であり、同機は1日6便を運航する。また、運用期間は10月6日から2018年12月頃を予定している。市江氏は、「単純計算すると、1日少なくとも1,000人もの人がこの飛行機を見て乗ってくれます。100日で10万人、1年だったら365万人でしょうか。いろいろな方がこの下町ボブスレーを見て、もっと応援してあげようという気持ちになってくれたなら、私たちもやった甲斐があったと思えるのではないでしょうか」とコメントしている。

運航機材は177人乗りのボーイング737-800(JA73NT)

日本とジャマイカをつなぐ翼にも

下町ボブスレーは、大田区の中小製造業が共同でボブスレー競技のソリを開発・製作するプロジェクトとして2011年末にスタート。2016年1月にソリの採用を決めたジャマイカボブスレーチームとともに、2018年2月の韓国・ピョンチャンオリンピック出場を目指している。

機体左側には下町ジェット新10号機と大田区の区の花である梅があしらわれている

機体左側には下町PJのロゴを大きくデザイン

活動の主体となる任意団体・下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会は、大田区の中小製造業を中心に元ボブスレー選手、レーシングマシンメーカー、大学教授などで構成している。10人程度から始まったプロジェクトは100人を超える規模に拡大し、中心メンバーも30代・40代という、これからのものづくりを担う人たちが挑戦を続けている。

下町PJのメンバーたち。多くは30代・40代と若手がプロジェクトに参画している

機体に描かれている新10号機の下町ボブスレーはすでに、カナダ・カルガリーでキャンプを開始するジャマイカチームに向けて出荷されており、会場で披露された「新9号機」は記者会見の後、韓国・ピョンチャンに向けて出荷し、10月22~28日まで当地で開催される選手の国際トレーニングイベントに備える。

下町ボブスレーに対するジャマイカの選手の信頼・愛情は厚いようで、6号機に対しては"芋虫"という愛称を、その派生系である8号機には"蝶"という愛称をつけているという。記者会見で披露されたビデオレターでは、ジャズミン・フェンレイター選手より、「夜も眠らず細かい部品まで作ってくれた下町PJに本当に感謝しています。みなさんのクラフトマンシップは最高です。私はフィジカル面もメンタル面も、メダル獲得の準備ができています。自分のため、ジャマイカのためだけではなく、下町PJのみんなのために戦います」というメッセージがあった。

機内も下町ボブスレー風に

機体に描かれている新10号機は、流れるデザインで疾走感を表現。さらに、和のテイストをベースに大田区の区の花である梅があしらわれている。さらに機内では、オリジナルデザインのヘッドレストカバーを設置する。

ヘッドレストカバーも特別デザインに

機体上部には、「東京 大田区から世界へ」「羽田空港から全国へ」と大きくスローガンを掲げられているが、ここにはモノづくりの力を広く発信する想いが込められている。下町PJの細貝淳一GMは、「この飛行機はこれから日本中を飛びます。私たちの製造業仲間は日本中にいます。こういったプロジェクトをみんな喜んでくれると思います。その中で私たちはPRし、そして2月のオリンピックに出場する権利を目指していきます」とコメントした。

「東京 大田区から世界へ」

「羽田空港から全国へ」

ジャマイカチームのオリンピック出場資格は、公式戦の順位に応じた蓄積ポイントにより、2018年1月半ばに決定する見込みになっている。また、日本チームは現状、ラトビア製のボブスレーを使用しているが、下町PJも新型開発を続けており、日本チームにも採用してもらえるような"勝てるソリ"を目指して挑戦している。「ランキングでは日本はジャマイカより上なので、ジャマイカは日本の背中を追いかけながら、一緒に機運を盛り上げていければいい」と細貝氏も言う。

下町PJの國廣愛彦委員長によると、ジャマイカチームも下町ボブスレージェットを楽しみにしていたようで、選手にもぜひ乗ってもらいたいとコメント。また細貝氏は、「オリンピック出場の折にはぜひ、ピョンチャンまでこの飛行機を飛ばしてほしい」とスカイマークに打診をしているようだ。まずは10月6日、下町ボブスレージェットは羽田より全国の空を滑走する。

10月6日から全国の空へ