――自分の体重を落とすためにいろいろと調べていたら、「褐色脂肪細胞が多いとやせやすい」とか「『やせの大食い』の人は胃下垂であることが多い」といった情報を見聞きしましたが……。
脂肪細胞にはエネルギー蓄積する「白色脂肪細胞」とエネルギーを消費する「褐色脂肪細胞」があります。褐色脂肪細胞は赤ちゃんの体にたくさんあり、その脂肪を燃やして熱を作り、体温調節を維持していると考えられています。つまり、熱を作りだす働きがあるのでエネルギー産生が増え基礎代謝が上がると言えます。
残念ながら、褐色脂肪細胞は年齢とともに減少していき、なぜ加齢とともに減少していくのかそのメカニズムはわかっていません。ただ、褐色脂肪細胞の活性化によって代謝を改善できることが報告されており、寒さによる寒冷刺激や唐辛子の辛味成分である「カプシノイド」の摂取が褐色脂肪細胞の活性化に効果的であると言われています。
胃下垂についてですが実際、やせている人には胃下垂が多く見受けられるようです。胃は周囲の筋肉や脂肪によって支えられ、上腹部(おなかの上の方)に位置しています。やせている人は腹部の筋肉量や脂肪量が少なくその支えがないため、食事をして胃の中に食べ物が入ってくるとその重さで垂れ下がってしまいます。胃下垂になると消化不良を起こしやすく栄養をうまく吸収できないため、「太らない」と言うよりは「太れない」と言った方が正しいかもしれません。
――う~ん、加齢とともに減っていく褐色脂肪細胞にダイエット効果を期待するのは酷な話だし、おなか周りがぽっこりしている自分がいきなり胃下垂になることも考えにくいし……。何らかの生活改善で「太りにくい体」をつくりあげることは可能なのでしょうか。
太りにくい体質にするためには、消費エネルギーを増やすことが大切です。日頃からこまめに体を動かしたり、基礎代謝を上げるために筋トレをしたりしましょう。基礎代謝は主に筋肉で行われるため、筋トレで筋肉量を増やせば基礎代謝が上がって太りにくい体質になります。
また、食事面から太りにくい体質を目指すとなれば、腸内環境を良くすることが重要と言えるのではないでしょうか。最近、やせている人の腸内細菌叢(さいきんそう)は特徴的であることがわかってきており、腸内環境の研究も進んでいます。食物繊維を多く含んだ野菜や海藻類をたくさん摂取して便秘を解消したり、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的に摂取したりして、腸内の善玉菌を増やすことがやせ体質を作る秘訣かもしれません。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 山本祐歌(ヤマモト・ユカ)
日本糖尿病学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。En女医会所属。
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150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。