米国からアンガス牛をチルド輸送、等級は最高位

エンパイアが使用するのは、米国からチルド輸送で取り寄せるアンガス牛だ。肉の品質は、米国農務省(USDA)の等級でプライム(最高位)を獲得したもの。これを店舗でドライエイジングし、ステーキで提供する。

一目瞭然だが、右が熟成肉だ

比較として先に試食した「非熟成肉」は外側に焦げ目が多く、肉の外側と内側の食感や柔らかさが大きく異なる印象を受けた。

熟成肉を試食したとき、誰でもわかる非熟成肉との大きな違いに気が付いた。大きな違いというよりは、全く違う肉ではないかという印象だ。この違いは、エイジングにより肉の含有水分量が減ることで、焼き入れによって柔らかく、味わい深いステーキに仕上がったゆえの変化なのではないかと思われる。外側がカリカリではなく、全体がやわらかい。そして咀嚼するたびに、口の中にうまみが広がってくる。のどの奥に送り込むことを躊躇するほどで、まだまだ口の中で味わっていたいという指令が脳から送られているような感覚すら覚えたほどだ。

熟成と非熟成の違いを感じた試食会。熟成肉は独特のナッツ臭も特徴だ

エンパイアの日本展開を進めるのは、飲食店の業態開発や店舗運営を手掛けるTFMという会社。同社の小柳津競介社長が提携交渉のため渡米し、エンパイアのステーキを食べた時には衝撃を受けたそうだ。まずは、とにかくおいしかった。肉を扱う店舗を運営している小柳津氏だが、エンパイアでは今までに食べたことのない肉に出会ったという。

そして、エンパイアではオーナーの思いの強さにも心を打たれた。移民として渡米し、アメリカンドリームをつかんだシナナジ兄弟。この人たちと仕事をしたいと感じた衝動が、「エンパイアステーキハウス六本木」の誕生につながったという。

エンパイアが提供する価値とは

エイジングビーフ(熟成肉)は近年、日本でも流行している。肉を熟成させることで、新たなうまみを醸し出すという触れ込みだ。熟成の方法は店舗ごとに異なる。

実のところ、熟成肉の定義は定まっていない。それゆえ、店舗ごとに技術と腕を競ってオリジナルの熟成を施し、客に提供している。熟成を施した肉を専門店から納品し、焼きで価値を提供する店もあれば、店舗で熟成させて、客の好みに合わせて提供する店もある。エンパイアの提供する熟成肉は、「店舗熟成」を基本にドライエイジングを施す予定だ。

店のコンセプトは、ずばり「NYにあるエンパイアの再現」であり、「本物のNYスタイルを楽しんで欲しい」とのこと。

TFMの小柳津社長

本場エンパイアは入りやすくモダンなステーキハウスをコンセプトとしているそうで、六本木店も敷居の高い高級ステーキ店を目指すわけではない。今回の店舗で、高級と称される飲食店が軒を並べる「銀座」などではなく「六本木」を選択したことも、入りやすい店舗を前提とした立地なのだという。

アメリカンステーキや熟成肉を看板メニューとする競合店舗は数多く存在する。特に六本木は、その傾向が顕著な地域の1つだ。その中でどう消費者に訴求し、支持を得ていくのか。小柳津社長は店舗熟成の肉で「うまみ、やわらかさ、フレーバー、そして濃い味」を感じてほしい、アメリカ牛の新しい味わいを提供していきたいと語る。