ディー・エヌ・エー(DeNA)はAIを活用したタクシー配車アプリ「タクベル」を開発した。神奈川県タクシー協会と共同で実用実験を行い、2018年1月以降の実用化を目指す。AIの活用でタクシーの使い勝手はどのように変化するのだろうか。

DeNAのタクシー配車アプリ「タクベル」の実用実験が神奈川県で始まる

場所指定で配車依頼、決済はネットでスムーズに

まず、タクシー利用者の立場でタクベルを使用する場合に何ができるのかを見てみると、乗客は予想到着時間を事前に確認した上で、場所を指定してタクシーの配車依頼を行うことができる。迎車地点でタクシーと効率よく出会えるようにするため、タクベルでは互いの現在地を地図で確認することが可能。ドライバーと乗客は、定型メッセージを送り合うことで互いの状況を知らせたり、「5分ほど遅れる」ことを相手に伝えたりできる。事前にクレジットカードを登録しておけば、降車時にはスムーズなネット決済が可能だ。

左は配車が確定した画面。右はドライバーと乗客がメッセージのやり取りをしているところだ

AIの恩恵を受けるのはタクシーの乗務員だ。タクベルにはAIを活用した「需要予測システム」が入っており、運行中の車両から集めたビッグデータとタクシー需要に関連する各種データを解析し、乗務員にリアルタイムにタクシー需要予測情報を提供する。「流し」で乗客を探す際など、これまでタクシードライバーは自身の経験や勘で需要予測を行っていたが、これがシステム化されていれば、例えば新たに乗務員として仕事を始める人にとっても大いに助けになるだろう。

乗務員アプリで需要予測システムを確認している画面

タクベルの実用化に取り組む両者の思惑は

実用実験は9月12日から10月31日までの予定。乗務員専用端末(スマホ)を搭載したタクシー約200台が横浜市の中区、西区、JR横浜線沿線のエリアを走行する。神奈川県内では2018年1月以降のアプリ実用化を目指すが、DeNAは将来的に、神奈川県以外の地域でも順次導入を進めたい意向だ。タクベルには今後も改良を加える予定で、乗務員のアプリには、周囲の電車遅延や大規模イベントの情報を通知する機能の追加を検討中。乗客側では会社・車種指定の配車や定額運賃対応といった機能強化を考えているという。

タクベルが日本中で使えるようになれば、タクシーを拾いやすくなりそうだし、電話で配車を頼む時のように待たされたり、たらい回しにあったりするケースも少なくなりそうだ。ネット決済の便利さも容易に想像できる。これらの利点はライドシェアについてよく言われることだが、タクシー業界としても、ITの活用を進めなければライドシェアに顧客を奪われるとの危機感があるのだろう。次は、タクベルの実用化に取り組む神奈川県タクシー協会とDeNAの両者の思惑を見ていきたい。