――ホステスの働くモチベーションはどこにあると感じましたか?
お客さんのことをかわいく思えてくるという方もいました。嫌なお客さんがいるかを聞いてみたんですが、「そんな方はいません」と。もしかしたら表向きの言葉なのかもしれません。でも、その方は「愚痴をこぼしたり、マイナスなことを言ったりする方でも、聞いているとかわいく思えてくる」とおっしゃっていました。一度「不快」と思ってしまうとどんどんそうなってしまいますが、確かにそうやって一歩引いていたら、どんなに嫌なことでも受け入れるようになるのかもしれません。
――そこが癒やしの場だからこそ、会いに行きたくなると。
そうですね。だから家庭がある方でも、違う自分として会いに行かれるんじゃないでしょうか。きっと、ホステスさんとお客さんは、そういう関係なんだと思います。大変な仕事ですが、自分に会いに来てくれるのは、自分が何かを求められているから。そう思ってもらえるのは、うれしいことですよね。
――いつもそうやって作品に臨む前には研究なさっているんですか?
事前の見学や直接お話を聞く機会がないこともありますので、そういう時はネットで調べたりしています。まずは、どうやってその職業になれるのか、から。『女囚セブン』の刑務官は、自分の周りにはいない職業だったので、刑務官になる方法やどのような生活を送っていらっしゃるのかを調べました。たまたまなんですが、『女囚セブン』が決まる前に両親と網走刑務所を旅行で見学したことがあったんです。そういうこともあるので、自分が興味のないことでもきちんと向き合うことが大事なんだと感じました。身近なところに、ヒントは転がっているんですね。
心を折られた一言「つまらない」
――2002年の「第8回全日本国民的美少女コンテスト」に出場したことがきっかけで、現在の事務所オスカープロモーションに所属されました。デビューされて約15年が経ちましたが、振り返ってみていかがですか。
ドラマデビューが2007年。その頃は「役作り」がどういうものかも理解していなくて、当たり障りなく「怒られないこと」に一番気をつけていました。でも、2014年に『ドクターX ~外科医・大門未知子~』の役をいただいた時に指導していただいて、心が折れてしまって……初めて仕事のことで泣きました。現場では泣かなかったんですけど。私に足りないものって何だろうと悩んで悩んで考えて、そこから役についてしっかり考えたり、役の仕事について調べたりするようになりました。気づくのがだいぶ遅かったと思います。
それまでは監督に何かを言われないようにすることを心掛けていたので、監督との会話も最小限。何か疑問があっても、「私なんかが聞いていいのか」と思ってしまっていたんです。怒られないように怒られないように。そうやって現場にいればいいと。目の前に小道具があっても触れずに、決められたセリフを言うことに専念する。『ドクターX』の現場で、監督はそんな私を見て「つまらない」と叱ってくださいました。
当時の私は「つまらないって何だろう?」と理解できなくて、たった1つのセリフも飛んでしまうくらい頭が真っ白になりました。監督が言いたかったのは、きっと「お前の演技は誰でもできる」だったんです。演じる役がなぜそのセリフを言うのか、どのような思いなのかを「考えろ」と言われました。目の前にこれだけの小道具があるんだから「遊べ!」と。私にとっての小道具は、スタッフさんが用意してくださったもので、並べ方にもこだわりがあるはずだから、「触ってはいけないもの」だったんです。
――その後、監督と再会した作品は?
まだありませんが、その後は周りの役者さんが監督のおっしゃっていることを実行していることが分かりました。セリフも台本どおりじゃなかったりしますし、自分なりの工夫をどの方もやっていらっしゃいます。
――あらためて振り返って何か思うことはありますか。
自分には危機感がなかったので、あの時に怒られていなかったら自分で考えようともしなかったと思います。今でも私はまだまだで、できることもたくさんあるんですけど、そういうことも当時の私は見えていませんでした。もっと頑張らなきゃ。そういうきっかけを与えてくださった言葉でした。
――そのような出来事があって、「この仕事をやってよかった」と感じるのはどんな時ですか?
いろいろな作品に出させていただいているんですが、見てくださった方が「内藤理沙」の存在を覚えてくださったら、やっとスタートラインに立つことができます。「何に出てるの?」ではなくて、「アレに出てたよね!」と言って下さる方が一人でも増えればいいなと思います。