進化の理由は車種の違いだけ?

そのほか、速度を設定し、一定の速度で走行中、高速道路入口の合流や、追い越し車線からクルマが前に入ってきたとき、車間距離を保つため速度調節をすることになるが、その際の減速の仕方、あるいは前が開きすぎた際に速度を上げるときの加速の仕方が、唐突ではなく、それでいて遅れることもなく、的確に加減速するようになった。クルマがカメラで前の様子を見て、状況を確認し、判断し、そして操作につなげる様子が、人の運転に近くなったのである。

この改善点について、日産の関係者は一様に、車種の違いによるところが大きいと話す。たしかにセレナはミニバンであるため、車高が高く、走行中にふらつきやすい車種である。それを真っ直ぐ走らせたり、カーブを滑らかに走らせたりするためには、ハンドルの修正をこまめに行う必要があるかもしれない。

プロパイロットが進化したと感じるのは、車種の違いによるところが大きいと日産は説明する

また、今回はエクストレイルのハイブリッド車(HV)で試乗したのだが、セレナのマイルドハイブリッドに比べ、モーターをより積極的に使えるので、回生(モーターを発電機として使いながら、その抵抗で減速させる)による減速や、モーターによる加速により、加減速はより滑らかに、かつ力強く進化していた。その差は、ハイブリッドシステムの違いによる。

とはいえ、セレナ発売から約10カ月の間に開発者たちが尽力した成果が、車種の違いと合わせて、プロパイロットをより使いたくなる性能にしたのは間違いないだろう。

自動制御に適するモーター駆動

今回の試乗では、はからずもモーターの効用が明らかになった。実は、日産のプロパイロットや自動運転技術は、電気自動車(EV)で進められている。そして間もなく、新型「リーフ」にプロパイロットが搭載されることになる。

日産が技術開発の2本柱に据えるクルマの「自動化」と「電動化」の道が、次期「リーフ」でついに交わる(画像は現行リーフ)

プロパイロットや将来の自動運転に、なぜモーター駆動が効果的であるのか。理由は、エンジンとモーターの出力特性の違いによる。

エンジンは、回転数が高まるに従って力を次第に大きくしていく特性がある。それに対しモーターは、回転しはじめるときから最大の力を発揮することができる特徴を持つ。したがって、交通の流れの中で、頻繁に加減速が必要な状況では、起きた事態に対し素早く応答できるのがモーターなのである。

エンジンは、コンピューターが加減速を指示しても、それを実現するため、燃料噴射量を変更し、その燃料を使って燃焼が起こり、そこではじめて力を出す。力を出すまでのステップが多いのがエンジンである。対するモーターは、電流を調節すれば即座に出力を変えられる。この応答の良さが、滑らかな加減速につながる。

エクストレイルのプロパイロットでの加減速がより的確だと感じた理由は、ハイブリッドシステムの違いにあり、エクストレイルの方がセレナよりモーター依存度が高いため、加減速の制御をより緻密に行うことができたのだと想像できる。

間もなく、新型リーフにプロパイロットが搭載される予定だ。EVで、どんな作動感覚を味わわせるのか楽しみである。