トヨタ自動車らが京浜臨海部で水素活用の実証事業を開始した。風力で発電した電力を水素に変え、それを近隣の工場などに運んで燃料電池フォークリフトに供給するという実験だが、トヨタには同事業を燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」普及の布石とする思惑がある。
水素社会の実現が最大の目的だが…
この実証は環境省の委託事業で、参加者はトヨタ、豊田自動織機、東芝、岩谷産業、神奈川県など。横浜市風力発電所(ハマウィング)で電気を作り、敷地内で水を電気分解して水素を製造し、それを貯蔵・圧縮して充填車(小型トラック)で近隣に運び、近隣の倉庫や工場で稼動する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトだ。実施期間は2018年度まで。
風力発電は風が吹かなければ電気を作れない。変動する発電量を調整する役目は、トヨタ「プリウス」の使用済みバッテリーを再利用した蓄電池システムが担う。発電量が多いときは蓄電しておき、風のない日は貯めておいた電力を使うことで水素の安定供給を実現する。ちなみに、水素の配送はトヨタのハイブリッド小型トラックが担当。最終的に水素を使う燃料電池フォークリフトもトヨタ製だ。
実証事業開始に先駆けて行われた現地取材会では、トヨタで新規事業開発などを担当する専務役員の友山茂樹氏に話を聞くことができた。友山氏によると、トヨタが実証事業に参画する最大の理由は「水素社会」を実現するためだが、ビジネス面では3つの目的があるという。