この時期に関する興味深いデータがある。Business Insiderの報告によれば、価格急上昇が見られた2013年後半以降、中国元でのBitcoin取引が急増しており、2017年初頭には全Bitcoin取引量のほとんどが中国元で占められる事態となっている。マウントゴックスは日本を拠点とした取引所だったが、ここがトラブルで大きく報じられる一方で、実際の世界全体での取引の多くや価格上昇は中国人が支えていた構図となる。中国からの投資が過熱した背景には、中国政府が人民元の米ドルに対する切り下げを進めたことで、国内資産の移転先としてのBitcoinに注目が集まったほか、資金が流れ込んだことによる価格上昇を利用したキャピタルゲインの獲得などが視野にあったと考えられる。だが中国政府もこの状況は看過しておらず、2017年に入ったタイミングでの規制強化を打ち出すこととなった。

本来であれば、ここで価格は下落または横ばいとなるはずだが、2017年4月には再び上昇カーブを描き、ついには3,000米ドルにあと少しで届く水準にまで達することになる。この4月以降の価格上昇は「日本での取引量の急増」が指摘されている。この背景には4月1日に施行された「改正資金決済法」があり、これまでグレーゾーンだった仮想通貨の取り扱いを「資金決済に使える通貨」として正式に認定し、これを取り扱う交換所を登録制にすることで、利用者が安全な取引を行えるようになったことが大きい。マネーロンダリングでの利用の懸念のほか、増加していた資金引き出し拒否などのトラブルに対処すべく、Bitcoinなどの仮想通貨に法的根拠を与え、透明性や安全性をうったえたことが利用者増加につながったというのだ。

2017年4月以降のBitcoinの価格の推移。日本での動きが大きく関与しているといわれる

TechCrunchの報告では、それまで全体の1%に過ぎなかった日本円での取引量が、このタイミング以降は6%にまで上昇し、さらに取引日によっては55%の水準に達することさえあるという。日本での投資が過熱する背景には、長らく続いた低金利で有望な投資先としてのBitcoinに注目が集まったこと、そして日銀の金融政策で量的緩和が行われていることから日本円の価値が毀損(きそん)されて資金の国外退避が進みつつあることが指摘されている。7月1日にはBitcoinを含む仮想通貨購入に際して消費税の廃止が行われた。改正資金決済法の施行に合わせて、仮想通貨を"モノ"ではなく決済が可能な"通貨"として扱うことにしたためだが、これがさらにBitcoinへと資金が流れ込むことにつながるという意見もある。

いずれにせよ、投資や投機的背景からBitcoinの上昇は今後も続くという意見は多い。BloombergがStandpoint ResearchのRonnie Moas氏のコメントとして報じたところによれば、Bitcoin価格は2018年中にも5,000米ドルに達し、今後10年で2万5,000~3万米ドルの水準になる可能性があるという。Moas氏ほどではないにしても、少なくとも4,000米ドルは来年中に超えるという意見はほかにも出ており、多少の前後はあれ、今後も上昇傾向は続くのではないかとみられる。