リコール1億台超、費用総額1兆3000億円の衝撃
米国における欠陥エアバッグの最初のリコールが2008年だから、すでに9年が経過したことになる。米国内で起きたエアバッグの破裂事故が、タカタ製のインフレーターが原因とされ、この間、不具合の原因を究明することに時間がかかっていた。
そして2015年11月、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)がタカタのエアバッグの欠陥を企業の不祥事と位置づけ、同社が適切なリコールや情報開示を行なわなかったため米国内で被害が拡大したとして、最大2億ドル(約220億円)の民事制裁金を課すと発表した。同時にタカタと自動車メーカーに対し、2019年までにリコールを完了するよう命じた。
「タカタが製造した硝酸アンモニウムを搭載したエアバッグの事故で亡くなった方、けがをした方に心からお詫びを申し上げます」。2017年5月10日の決算説明会で、タカタの野村洋一郎取締役はこう謝罪した。世界シェア2割のタカタ製エアバッグのリコール台数は、世界で1億台を超える。費用総額は1兆3000億円以上に膨らんだ。解決にかかる期間、規模ともに異例の状況だ。
ここまでの事態に発展した背景を考えると、火薬を使う安全装置というエアバッグそのものの特殊性も考慮すべきだが、やはり、安全関連部品企業として世界シェアも高かったタカタの企業体質に問題があったことは見過ごすことができない。また、リコール制度の日米の違いや、自動車メーカーのリコール責任、運輸当局の備え不足も指摘される。
危機管理対応に問題も
もちろん、タカタ製エアバッグの不具合については、タカタの製造プロセスに問題ありと原因が特定されている。また、高温多湿の環境下において、タカタのインフレーターがガス発生剤として使う硝酸アンモニウムが破裂を引き起こすということで、タカタと供給先である自動車メーカーの因果関係も問題とされている。
これに関しては、タカタという企業が、エアバッグだけでなく、シートベルトやチャイルドシートなど安全に関する部品を作るメーカーであり、交通安全や社会貢献を追求する「タカタ財団」も有していながら、そのオーナー系の企業体質と危機管理対応のまずさが指摘されてきたのは言うまでもないことだ。
筆者は、かつて前任の新聞社時代、タカタ創業家の先代社長夫人である高田暁子氏から、「タカタ財団」理事長として訪問を受けたことがあるが、同氏は「交通事故ゼロを目標に安全を使命としてやってきたのがタカタ」と強調されていた。