日米を中心に約1億個の巨大リコール(回収・無償修理)となったタカタ製エアバッグ問題は、2008年にホンダがリコールし、2009年に米国で初の関連死亡事故が発生してから、10年近くが経過したことになる。この問題は、負債総額1兆円超の負債を抱えたタカタが民事再生法を申請し、事実上の倒産となって次の段階へと進みそうだ。

タカタ問題が残した教訓とは(画像はタカタ本社が入る品川の東京フロントテラス)

タカタは6月27日に株主総会を控えているが、事業を継続しながら再生手続きを進める方針。再建を主導するスポンサーには、中国資本の米自動車部品大手キー・セイフティー・システムズ(KSS)が入り、同社が事業を買い取ることになりそうだ。

インフレーターの異常破裂でリコールに

エアバッグは、自動車の衝突時に乗車人員を保護する安全部品として知られている。タカタは、そのエアバッグで世界2割のシェアを持ち、日本車や欧米車など多くの自動車メーカーに供給していた。しかし、そのタカタを有名にしたのが、同社が製造し、自動車メーカーに供給しているエアバッグ部品「インフレーター(膨張装置)」の異常破裂による大量のリコールだ。

具体的には、インフレーターの火薬の材料が長く高温多湿にさらされ、水分が侵入すると作動時に破裂し、金属片が飛び散るおそれがある。これを受けて、自動車メーカーは日米でリコールを進めた。

複雑化の一途をたどるクルマの安全対応

この間、「エアバッグ破裂事故」によるリコールが広がるにつれ、自動車メーカーの品質保証対応コストの引当ては増加。一方で、この問題対応で露呈したタカタの経営体質には非難が続出した。結果、タカタは大きな経営危機に直面し、経営支援を求める「身売り」も時間の問題とされていた。

しかし、この「タカタ問題」は、タカタという個社の存亡ということだけで決着するものではなく、クルマの宿命的な課題である安全対応と、問題発生時の対応の在り方に大きな警鐘を鳴らすことになった。また、リコールの拡大や再発を防ぐため、自動車メーカー、部品メーカー、国の監視当局が何をしなければならないか、この教訓を役立たせる事が最も大事なことである。

すでに自動車産業では部品とプラットフォームの共用化が進み、かつ電動化に自動運転、コネクティッドカー(つながるクルマ)からIT(情報通信)・AI(人工知能)と、一般ユーザーから見るとクルマがブラックボックスばかりになりつつある。「安全対応」においては予防安全を重視するとともに、リコール制度の本質をあらためて確認しつつ、完成車メーカーとサプライヤーの社会責任の在り方などを、ここでしっかり見直しておかねばならないはずだ。