新生GMが示した方向性

では具体的に、GMジャパンは、自らの強みをどう示そうとしているのか。若松社長は、ブランド全体の価値をより高め、魅力を増していくことだと話す。

米国では、連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用後、GMは新たに、グローバルキャデラックの本社をデトロイトからニューヨークへと移した。

「キャデラックが、単なる自動車メーカーであるというより、ラグジュアリーブランドとして価値を高め、“そのブランドが提供する商品がクルマ”という方向転換をしました」

それを象徴する1つが、本社が入るビルの1階に開かれたキャデラックハウスだ。ここにはニューヨークを拠点とする「ジョー・コーヒー」と提携したカフェや、新進気鋭の若手デザイナーの活動を後押しするポップアップストア「リテールラボ」などがある。アートやカルチャーの展示スペースである「ギャラリー」では先日まで、工場で実際に使われている製造ロボットが来場者の似顔絵を描くというパフォーマンスが行われていた。

キャデラックハウスの様子

ブランド価値を日本に浸透させることが重要

「日本国内で25万台ほどのラグジュアリー車市場の、さらに2~3万台が左ハンドルのお客様であることを考えると、すごくはっきりとしたコミュニケーションが図れると思うのです。何台という販売台数は公言しませんが、新車を次々に投入し、今よりはるかに多くの台数を販売して存在感を出し、日本での地位を確立したいと考えています」

「そのなかで、既納客が多いキャデラックは、海外経験の豊富なお客様も多いので、日本だけでなく、ニューヨークやドバイ、上海などでのキャデラックの活動を情報としてお伝えしたり、110年を超えるキャデラックの歴史や、今後の方向性についても示したりしていきたいと思います」

「新しいキャデラックが掲げる『Dare Greatly』という言葉はなかなか日本語にしにくいのですが、第26代合衆国大統領セオドア・ルーズベルトが残したこの言葉は、米国に息づく不変の精神で、現状にとどまることなく、大胆に行動する人。また、何かの模倣ではなく、独自性を探求し、未知の世界への挑戦に胸を躍らせる人を言います。それはまさに、今のキャデラックを体現しています。同じ精神を持つお客様に、先進技術を詰め込んだキャデラックを伝えていきたいと考えています」

先進技術を詰め込んだキャデラックの存在感を高めたいと若松社長は語る(画像はキャデラックのセダン。右から2台目が最新の「CT6」だ)

2003年に初代が誕生した「キャデラックCTS」は、アート&サイエンスというデザイン言語で新しいキャデラック像を打ち出し、それが今日まで各キャデラック車に展開され、進化を続けている。

キャデラックという名前だけでなく、それがどのようなクルマであったり存在であったりするのか、そこを知ってもらうことがブランドの浸透の始まりになる。