てんかん発作を繰り返す脳の病気・てんかんは、発作が起こる部位や出現する症状によって種類が細かく分類されている。一口にてんかんといっても、その中身は非常に複雑になっているというわけだ。ただ、その種類を詳しく知っておけば病気の早期発見・治療へと役立てられる。
そこで本稿では、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師にうかがったてんかんの種類や治療法について紹介する。
てんかん発作は2つに分けられる
てんかんをカテゴライズするうえで重要になってくるのが以下の概念だ。
(1)てんかん発作が部分発作か全般発作か
(2)原因となる病変が認められるか否か
(1)については、焦点性発作部分が脳の一部のみの場合は「部分発作」と呼ばれ、脳の大部分または全体で発作が起きる場合は「全般発作」と呼ばれる。前者によるてんかんを「部分てんかん」、後者が引き起こすてんかんを「全般てんかん」としている。
(2)については、明らかな脳の病変が認められないものを「特発性」と呼び、脳腫瘍や脳卒中といった脳の疾患がトリガーとなるものを「症候性」と呼ぶ。
部分てんかん
特発性の部分てんかんには「ローランドてんかん」が、症候性の部分てんかんには「側頭葉てんかん」「前頭葉てんかん」「頭頂葉てんかん」「後頭葉てんかん」などがある。以下に部分てんかんの原因となる部分発作の種類をまとめた。
部分発作
部分発作の中でもさらに細かく分類でき、発作中に意識を保つ「単純部分発作」に対して意識が減衰して消失するような症状を呈するものを「複雑部分発作」と呼ぶ。
■単純部分発作……手足のけいれん・しびれ、視覚・聴覚の異常、頭痛などのさまざまな症状が出る。発作時の意識の消失はないケースが一般的。以下に種類ごとの症状や前兆に関する具体例を示す。
前頭葉てんかん(症状): 「手足が急にピクピク動く」「とっさに言葉がでない」
側頭葉てんかん(前兆): 「何か胃にこみ上げてくる感覚」「背中から襲われる恐怖」「なつかしい感覚」
後頭葉てんかん(前兆): 「視野が狭くなる」「光や色が見える」
■複雑部分発作……意識が徐々に減衰していき、発作の部位によっては意識がもうろうとしたり消失したりする。単純部分発作に始まり、意識減衰に移行するものもある。意識を失っている間に口をモグモグと動かす「口部自動症」やふらつき歩きの「歩行性自動症」といった症状が出るほか、体を激しくくねらせるといった症状の「過運動発作」が出ることもある。
さらに特殊な例として二次性全般化発作と呼ばれるタイプの部分発作もある。
■二次性全般化発作……部分発作が始まった後、全身がけいれんして大きな発作が起きる特殊な部分発作。
部分発作型のてんかんは、特殊な初期症状や前兆が現れるケースがあると福島医師は話す。
「部分発作では上腹部の不快感、一見すると消化器症状に思える症状が出ることがあります。他にも『急にゴムがこげついたようなにおいがする』といったような嗅覚異常やデジャブ(既視感)、聴覚性幻覚などの前兆を経験される方もいます。このようにさまざまな症状を呈するので、てんかんとは診断されず見逃されてしまうケースが多くあります」