マツダ車の販売戦略からみる買い物の醍醐味

一方で、消費者にとって買い物の喜びとは何であろうか。改めて考えてみる時代になっているように思う。

安い、ということは買い物の1つの要素であるかもしれないが、すべてではない。買い物をするためのお金は、貴重な労働によって得られた対価である。それを、安物を買い漁ることだけに使ってしまったら、どこか虚しくはないか。そして、一時的な興奮が去った後、部屋の中には使わなくなった安物の山ができる。それを捨てればゴミの山となる。ゴミは減らすというのが時代の流れだ。

適正な価格という発想は、自分の労働に対する対価である手持ちのお金に価値を与えることではないか。それは、自らの労働の価値さえも高めることになる。安くはなくても、いいと思ったものに労働の成果であるお金を支払う。それは、充実した人生のひと時となるであろう。そして、労働の対価として得た物を永く愛用することにより、数々の思い出も生まれるだろう。それが、人生を豊かにしていくのではないだろうか。それが、買い物の醍醐味だ。

クルマを購入する際、値引きという発想は永年にわたり変わらぬ儀式のようになっている。しかし、大きな値引きをしてもらうより、何年か愛用した愛車が思った以上の高値で下取られたとき、人は自分の目利きの確かさに満足するのではないだろうか。

そういうクルマ販売を、マツダは始めたということだ。マツダは、人生をより豊かに感じられる買い物の喜びに挑戦しているともいえるのである。