米労働省が3月10日に発表した2月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数23.5万人増、(2)失業率4.7%、(3)平均時給26.09ドル(前月比0.2%増、前年比2.8%増)という内容であった。

(1)2月非農業部門雇用者数は市場予想(20.0万人増)を上回り、前の月から23.5万人増加した。建設業など、製品・生産部門の雇用増が牽引する格好となり、増加幅は好調の目安とされる20万人を2カ月連続で超えた。3カ月平均でも20.9万人増に拡大しており、米雇用情勢のトレンドが再び上向いた事がわかる。

(2)2月失業率は市場予想通りに前回から0.1ポイント低下して4.7%となった。改善は3カ月ぶりとなるが、労働参加率が63.0%に上昇(労働人口が拡大)する中での改善だけに、数字以上の好結果と言えそうだ。また、やむを得ずパート職に就いている労働者なども含めた広義の失業率(不完全雇用率、U6失業率)も、前月から0.2ポイント改善しており、昨年12月に記録した2008年4月以来の低水準である9.2%に並んだ。

「米非農業部門雇用者数と失業率」

(3)2月平均時給は26.09ドルとなり、前月比では市場予想(0.3%増)を下回る0.2%増にとどまったが、前年比では予想通りに2.8%増の高い伸びを示した。また、1月の平均時給が26.00ドルから26.03ドルに上方修正された点を考慮すると、前月比0.2%増という伸び率にマイナス点は付けられないだろう。

「米国平均時給」

米2月雇用統計は、3月14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25%利上げをほぼ確実にする好結果であったと言えるが、小幅高で終了した米国株以外の市場反応はポジティブなものではなかった。発表前に115.50円台まで上昇していたドル/円相場は一時114.60円台に下落するなど、為替市場ではドル売りが優勢となった。

また、2.62%台まで上昇していた米10年債利回りが2.57%台に低下するなど、債券市場では米国債を買い戻す動きが強まった。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言などから、3月利上げは既に織り込み済みであり、雇用統計はこれを追認したに過ぎないとのやや冷めた見方が広がったようだ。

その他、賃金インフレの指標である平均時給の伸びが比較的緩やかだった点を中心に、一部で期待されていたほど強い内容ではなかったと受け止められた面もあった。FOMCの利上げが年3回以上のペースに加速する事はないとの見方も出ており、好内容の割りに市場の評価が低い雇用統計であったと言えそうだ。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya