暦の上では春を迎えたとはいえまだまだ寒い。使い捨てカイロを活用している人も多いのではないだろうか。中でも、体に貼って使えるカイロは便利だ。胃腸が異常に弱い筆者は、もっぱら腹巻きの下に貼っている。

貼るカイロ、どこに貼るのが一番温まるの? (画像は腹巻きの下にカイロを仕込む筆者のイメージ)

ところでこの貼るカイロ、貼る場所に正解はあるのだろうか。筆者の場合は腹巻きの下がベストアンサーと確信しているが、おなかが特に弱くない人はどこに貼れば効率的に体を暖められるのだろう。今回は、貼るカイロのリーディングカンパニーである桐灰化学のマーケティング部・高階良さんに、貼るカイロや貼らないカイロについていろいろと質問してみた。

桐灰化学の"貼るカイロ"こと「桐灰はる」。商品名がシンプル

貼るタイプと貼らないタイプ、成分の違いは

――よろしくお願いします。まず、貼らないカイロと貼るカイロに成分の違いはあるのでしょうか
使用している原料は共に同じものですが、機能に若干の差を出しています。最高温度は貼るタイプの方が2℃ほど低く、逆に平均温度は2℃ほど高くなっています。また、持続時間は貼らないタイプの約24時間に対して、貼るタイプが約14時間と短くなっています。

貼るタイプと貼らないタイプの違い(桐灰化学の製品による比較)

持続時間や温度の違いは、その原料の使用量やカイロを包んでいる布(不織布)の空気孔の調整で出しています。他社含め多くのカイロは同様の原料・素材を使用していますが、それぞれ機能に差があるのは、そのあたりを調整しているからです。

ちなみに、持続時間が長い「貼らないタイプ」のほうが、原料の使用量が多いので、重いです。

――なぜ機能に差を持たせたのですか?
温度面では、「温かく、かつ低温やけどにならないように」を心がけてこの温度(最高63℃・平均53℃)に設定されています。

持続時間は、使用シーンに応じた設定となっています。貼るタイプは、「朝開封して、夜お風呂に入るときまでしっかり温かさが続く」ようになっています。対して貼らないタイプは、「朝開封して、夜寝るまでしっかり温かさが続く」ようになっています。

――なるほど。貼らないカイロ、朝開封して眠るまで使えるとはすごい持続力ですね……
24時間も必要ないだろ! という意見もあるかと思いますが(笑)。桐灰カイロユーザーの持続時間満足度は95%以上です。

桐灰化学の"貼らないカイロ"こと「ニューハンドウォーマー」。24時間も温かさが続くのだそう

カイロの貼り方に"正解"は?

――カイロへの理解が深まったところで本題なのですが、貼るカイロの貼り方に"正解"ってあるのでしょうか
正解と言えるかはわかりませんが、私たちは「うさぎ貼り」を推奨しています。

――「うさぎ貼り」とは?
背中の腰部分に、普通サイズのカイロを横向きに1枚、その上にミニサイズのカイロを縦方向に2枚貼るという貼り方です。ウサギの頭のような形になるので「うさぎ貼り」と呼んでいるんですよ。仙骨と背骨をくるんでいる脊柱起立筋を温めることで、効率よく全身を温めることができます。

これが「うさぎ貼り」だ!

――脊柱起立筋は初めて聞く名前の筋肉なのですが、なぜここを温めると全身が温かくなるのでしょう?
筋肉量が多い部位だからです。筋肉には体の熱を作り出す役割もありますので、筋肉量が多い腰を温めるのが効果的なんです。

――「うさぎ貼り」はカイロ3枚を使った貼り方ですが、1枚だけで温かくしたい時はどう貼ればいいでしょうか
背中の肩甲骨の間あたりか、腰の後ろに貼るのがオススメです。ユーザーの多くもこの2カ所を中心に使用しているようです。

1枚で貼るなら、肩甲骨の間か腰の後ろがオススメ

――なるほど。なぜその2カ所が効果的なのでしょうか?
脊柱起立筋と同じで、基本的には筋肉量が多いからだと思います。

カイロは揉んじゃダメ!

――せっかくなので貼らないタイプのカイロについてもお聞きしたいのですが、カイロを使用する上でのコツなどはありますか?
貼るカイロにも言えることですが、保温された環境で使用したほうが温かいです。当たり前ですが、外気にさらされると、外気に熱を奪われてしまうためです。なので、取り出さずポケットに入れたまましておくとよく温まります。

――外の空気に触れさせるのは良くないのですね。てっきり、たくさん空気に触れさせたほうが温かくなるのかと思っていました
たしかにカイロは空気に触れないと発熱しませんが、冷たい空気に触れると熱を奪われてしまいます。よほど密封された環境でない限りは、十分に発熱してくれますよ。ポケットくらいなら全然問題ありません。

――空気に触れさせるといえば、早く温かくするためにカイロを揉んだりしますが、あれはどうなのでしょう
だめです。貼らないカイロは揉まないでください!

――揉んじゃだめなんですか!?
だめです。空気孔が目詰まりを起こして、発熱しにくくなる恐れがあります。空気に触れさせるには、袋から取り出して、数回振ればOKです。

カイロは揉まずに、数回振ろう

――次から気をつけます……

まだまだある! 使えるカイロ

――今は「貼るカイロ」「貼らないカイロ」以外にいろいろな商品があると思うのですが、特にオススメの商品はありますか?
意外と知らない人も多いのが、足用のカイロです。当社からは、「足の冷えない不思議な足もとカイロ」という商品を販売しています。

――商品名がわかりやすい!!
くつの中に入れて使う商品なんですが、くつの中のような空気が少ない場所でも発熱するように設計されています。足裏のつま先に貼るタイプ、足の甲に貼るタイプ、靴の中に敷くタイプの3種類があります。足先が冷えるという人はとても多く、近年拡大しているカテゴリーです。

「足の冷えない不思議な足もとカイロ」。左から、足裏のつま先に貼るタイプ、足の甲に貼るタイプ、靴の中に敷くタイプ。足裏全体を覆う「ロング」タイプもある

ただし、家の中などでくつを履かずに使用すると、熱くなりすぎる危険性もありますので気をつけてください。

――寒い日は、しっかり着込んでも足先から冷えますもんね。家の中で使えるようなアイテムはありますか?
自宅で作業する方にピッタリなのが、手首足首のカイロポケット付きホルダー「巻きポカ」です。手先や足先が冷える、でも作業はしたい、という人にオススメです。

冬の自宅作業に使える「巻きポカ」

――暖房代の節約にもなりそうですね。いろいろ教えていただいたおかげで、カイロの達人になれた気がします。ありがとうございます


貼って使うカイロの貼り方で、最も効果が高いのは背中にうさぎの顔を描くように貼る「うさぎ貼り」だそうだ。しかしこれは、3枚のカイロをぜいたくに使う貼り方である。1枚のカイロだけで効率的に温めたいなら、肩甲骨の間が腰の真ん中に貼るのが効果的だそう。普段はこの貼り方でしのぎ、ここぞという時には「うさぎ貼り」で乗り切りたい。

また、「カイロは揉んではいけない」という事実も個人的には衝撃的だった。各メーカーのバリエーション商品も多く、奥深いカイロの世界。これで来年の冬は万全の体制で迎えられそうだ。

イラスト: いらすとや