人気のハイトワゴンとは一線を画す仕様

ファミリーカーとして使うなら、室内の広さは大事であり、ワゴンRがタントやN-BOXと勝負するのは厳しい。でも逆に、この2台にはデザインの自由度が少ない。スズキはここに目を向け、ワゴンRに凝ったデザインを与えたのではないだろうか。

スズキの代表取締役社長である鈴木俊宏氏は発表会に登壇し、「ワゴンRは軽自動車のど真ん中のクルマ」と言い切った。ベーシックな「アルト」、ハイトワゴンのスペーシア、SUVの「ジムニー」や「ハスラー」など、さまざまな車種をそろえる中で、中心に位置するのがワゴンRというメッセージだ。

価格は107万8920円から、月間販売目標は「ワゴンR」と「ワゴンRスティングレー」の合計で1万6000台だ

そのワゴンRが、ハイトワゴンが人気だからといって背を高くしたり、スライドドアを装備したりしたら、ど真ん中ではなくなってしまう。ハイトワゴンとは一線を画すという意味を込めた言葉でもあったようだ。

もうひとつ、テレビCMにも原点回帰が見られた。広瀬すずさんと草刈正雄さんの2人を起用したCMで、車名の最後のRを「○○であ~る」と語尾にアレンジして使っていたからだ。

ワゴンRという車名の由来が、実はここにある。当初は別の車名を考えていたというが、スズキとして初の軽ワゴンであることから、当時の代表取締役社長で現会長の鈴木修氏の「セダンもある、ワゴンもあ~る」という一言が、そのまま車名になったと言われる。そのときのフレーズを新型のCMで使っていたのだ。

ブランドで売る戦略、着々と

昨年デビューした小型クロスオーバーの「イグニス」では、スズキはかつての名車「フロンテクーペ」やSUV「エスクード」などのデザインモチーフをボディの各所に取り入れることで、スズキらしさを絶妙に表現していた。これと同じような戦略を新型ワゴンRからも感じたのだった。

新型ワゴンRからはスズキらしさを打ち出す戦略が感じられる

スズキは2年前、「お行儀の悪い売り方」、つまり行き過ぎた販売競争から脱却すると宣言した。言い換えれば今後はブランドで売っていくと宣言したわけだが、その方針は昨年のイグニスや今年のワゴンRを見る限り、独自のスタイルで着実に実践されつつあると感じた。