エフティ資生堂はこのほど、社員のパフォーマンスやモチベーションの向上を目指し、ストレス解消法の「マインドフルネス」を体感できる社員研修を実施した。
2015年4月に資生堂から分社化したエフティ資生堂。ミッションには、消費者一人一人の美しい生活により寄り添うことを掲げ、パーソナルケア(デイリーケア)の商品を提供している。
エフティ資生堂代表取締役社長の岩崎哲夫氏(現ジャパンリテールイノベーション代表取締役社長)は、「スキンケアブランド『専科』はエフティ資生堂の価値づくりを象徴したブランドです。洗顔をいつもより効果的にするために、機能性から一歩進めて、肌と気持ちに応える洗顔料にしていこう、と考えました。他にはない濃密な泡による濃密なケアで心と気持ちを満足できると信じ、夜の自分へのごほうび洗顔といったものを提唱しています。濃密な泡による満足感を高める付加価値と、ごほうび洗顔の情緒的価値を兼ね備えたことが、自社が掲げるパーソナルケアだと思っています」。
「マインドフルネス」を社員研修に導入した背景
「マインドフルネス」は、気持ちを落ち着かせ、1つのことに意識を傾けることで集中力や幸福感を高めるストレス解消法として、近年注目を集めているという。アメリカの企業研修やスポーツ業界のメンタル研修に既に使われているそうだ。
同社がマインドフルネスを研修に導入した背景は、どのようなものなのだろうか。 「顧客の変化をみると、女性のさらなる社会進出が言われ、今後の先を見通すと2つの課題があると思っています。1つは経済的ストレス。消費の二極化があり、パーソナルケアの中でも価格の二極化が起こっています。2つ目は心理的ストレス。雇用者数が減って、労働量が増えると、労働状況が悪化して残業時間が延びる。これらを解消するために、企業価値のある商品をより安くすることと、心理的ストレスを抑えるために、毎日の生活に癒やしや安心を与えるような情緒的価値が必要だと考えます。これを捉えたときに、『マインドフルネス』はこれからの女性にとって不可欠になるだけでなく、『専科』の付加価値・情緒価値を高める、非常に大きな背景になるのではないかと思います」(岩崎氏)。
仕事中にできる「マインドフルネス」は?
研修には、ビジネスパーソン向けのヘルスケア・アプリ開発や、企業のトレーニングを行うCampus for H公衆衛生学修士・MPHの西本真寛氏が特別講師として招かれた。
「社会背景として、マルチタスキングやマルチデバイスが普及し、どこにいっても仕事ができることや複数の仕事を並行して進められることによって、情報過多のなか意思決定を求められることがあります。それによって、自分がどこに集中力を向ければいいのかを判断することが難しくなっている。だからこそ、『マインドフルネス』が必要だと考えます」(西本氏)。
研修で西本氏が解説した「日常生活・仕事で取り入れられる簡単マインドフルネス」のうち、「3分間呼吸 空間法」は以下のようなものだった。
「3分間呼吸 空間法」
姿勢を正して、下記の順番に意識を向けていく
ステップ0: 姿勢を正す
ステップ1: 空間に意識を向ける
ステップ2: 呼吸に意識を向けて、ゆっくり呼吸する
ステップ3: 意識を足、頭、体の末端の順に広げ、体全体まで届いたら目を開く
西本氏は、「ストレスがかかっていると視野がせまくなりやすいので、空間に意識を向けることが大切です」とアドバイスした。
洗顔がストレス緩和に?
さらに研修では、資生堂グローバルイノベーションセンター化粧心理・行動科学研究グループ佐藤智穂氏が、資生堂スキンケア化粧品の心理効果について解説した。
資生堂では1980年代頃から「化粧品と心の研究」を行っている。例えば、エステティックマッサージや香りのストレス緩和効果や、スキンケアなら癒やし、メーキャップなら励みといった目的による気持ちの違いなど、化粧品と心の関わりに関する研究だという。
「ストレスも注目してきた研究テーマ。そこで着目したのが『マインドフルネス』です。スキンケアは癒やしに向かって、自らに触れながら行うものであるため、『マインドフルネス』への親和性が高いと考え、洗顔料と化粧水に着目をして研究をしました」(佐藤氏)。
同社が提唱する「マインドフルネス美容」とは、洗顔料の場合は泡立てたときにきめ細かく弾力のあるような"濃密な泡"、化粧水ではとろみがあり、なじみの良い感触のような"濃密な感触"に意識を向けながらスキンケアを行うことだという。
25歳~39歳の一般女性モニター15名に、「マインドフルネス」の考え方を取り入れた洗顔料と化粧水の使用テストを実施したところ、ストレスが緩和され瞑想のような状態になったことが確認できたそうだ。
洗顔でできる「マインドフルネス」の方法
では、「マインドフルネス美容」はどのように行うのか。研修の最後にでは、「『専科』の洗顔料「パーフェクトホイップn」と化粧水「パーフェクトエッセンス シルキーモイスチャー」を使用して、社員たちが実践した。
まず石けんで手を洗い、洗顔料を手に約2センチ取る。水を少しずつ加え、空気を含ませながら、テニスボールほどの大きさを目標に両手で泡立てる。雑念を払う気持ちで泡の触感に意識を傾け、ふだんよりも時間をかけて顔の上で泡をのばして洗う。
洗顔後の仕上げには、化粧水を使用。化粧水を手に取り、手のひらに広げる。顔へとうつして、顔全体に大きな円を描きながら、肌の柔らかな感触に意識を傾ける。目を閉じて両手で顔全体を覆った後、手を離してゆっくり目を開いたら終了。
研修を終えた社員たちは、感想をシェアし合い、リラックスした様子だった。「マインドフルネス美容」は手持ちの洗顔料や化粧水でも試せるとのことなので、ぜひ自宅で実践してみてはいかがだろう。
エフティ資生堂が行った研修のように、こうしたストレス解消に焦点を当てた研修や施策に取り組む企業が今後増えていきそうだ。