『Wake Up, Girls!』年末の祭典ライブ「Wake Up, Girls! Festa2016 SUPER LIVE」が、2016年12月11日、幕張メッセにて開催された。

今回のライブのラストでは、『Wake Up, Girls!』新章・完全新作アニメが2017年にTV放送されることが明かされた。新章はアニメーション制作をミルパンセが担当。監督を板垣伸氏、キャラクターデザインを菅原美幸氏が手がける。音楽にはMONACAと神前暁氏の名前がクレジットされた。WUG新章には新キャラクターも登場し、同キャラクターの声優を募集する第3回アニソンヴォーカルオーディションの開催も合わせて発表された。同オーディションはエイベックスと声優事務所・81プロデュースが協力して開催するもので、第1回の合格者が「i☆Ris」、第2回の合格者が「Wake Up, Girls!」を結成している。

3チームの「止まらない未来」が動き出した日

ライブラストに衝撃の発表が行われ、新年に向けて新たな道を歩みだした『Wake Up, Girls!』、そしてユニットとしての「Wake Up, Girls!」。今日のパフォーマンスは3年以上の成長と熟成を確かに感じさせるもので、特にライブ中盤、「HIGAWARI PRINCESS」「ワグ・ズーズー」「地下鉄ラビリンス」というツアー用ライブ楽曲とスピンオフ楽曲で構成された並びは、アニメ『Wake Up, Girls!』から離れたアーティスト「Wake Up, Girls!」が磨き上げてきたものを確かに示すステージングだった。

だが「Wake Up, Girls!」が最高のパフォーマンスを見せたことを前提として、その上で敢えて、今回のライブの主役は「I-1club」と「ネクストストーム」、そしてそのファンだったと言いたい。

今回のライブには、「Wake Up, Girls!」より吉岡茉祐、青山吉能、田中美海、山下七海、高木美佑、永野愛理、奥野香耶、「I-1club」より加藤英美里、津田美波、福原香織、山本希望、明坂聡美、安野希世乃、上田麗奈、「ネクストストーム」より大坪由佳、安済知佳、高野麻里佳、甘束まおが出演。アニメに登場した内、CDをリリースしている3グループのアイドルが史上初、全員集結した記念すべき場となった。

「I-1club」は「Wake Up, Girls!」のセンター・島田真夢(cv. 吉岡茉祐)がかつて所属していたメジャーアイドルグループだ。ざっくりとまとめると、I-1は初代センター・島田真夢が在籍したありし日の黄金時代、真夢が去ったI-1で、二代目センター・岩崎志保(cv. 大坪由佳)がグループを芸能界の頂点に押し上げた時代、そして志保との直接対決でセンターを奪った新世代、三代目センター・鈴木萌歌(cv. 山本希望)という、3つの時代にまたがっている。I-1を去った島田真夢が東北で参加したのが「Wake Up, Girls!」、後に同じくI-1を去った岩崎志保が九州で再起をはかったグループが「ネクストストーム」という流れだ。I-1を巡る緻密な物語や設定が存在しながらも、アニメはあくまでもWUGの物語として描き、時々舞台の上で出会うI-1やネクストストームの姿が垣間見えて、もっと彼女たちのことも見たい、知りたい! と見る側が思うぐらいがちょうどいい塩梅でもあった。

だが、今日のライブ、この日ばかりは間違いなくI-1clubもまた主役だった。I-1clubは、「止まらない未来」「運命の女神」「シャツとブラウス」の3曲を披露。「止まらない未来」は鈴木萌歌(cv. 山本希望)がセンターを務める最新のI-1clubとしてのパフォーマンス。大坪演じる志保はI-1を離脱した後の曲なので、大坪の代わりに志保のアンダー(代役)だった高科里佳役・上田麗奈がメンバーに入っているというこだわりようだ。山本希望がセンターに立って歌う姿は、I-1の新しい時代を確かに感じさせるものだった。

「運命の女神」は、岩崎志保と鈴木萌歌がセンター争いをした際、メンバーがTeam S (志保)とTeam M (萌歌)に分かれて争った因縁の曲だ。では今回のライブでは……というと、大坪と山本が並び立ってダブルセンターを務めた。この曲は冒頭、センターメンバーが「ゆっずれない」というセンター候補のささやきが入るのだが、ライブバージョンでは大坪と山本が向かい合って顔を突き合わせながら、いたずらっぽく声を揃えた。アニメでは見ることができない歴史のifをライブで体験できるのもこの作品ならではのハイパーリンクだろう。続けて歌った「シャツとブラウス」は、I-1clubがライブで歌うのは初めての楽曲。I-1の原点の曲のひとつを初披露したわけだが、『Wake Up, Girls!』が始まった頃の7人では、きっと見せられなかっただろう輝きがそこにはあった。

「ネクストストーム」は昨年末の続・劇場版から登場したユニットで、I-1clubの新人3人と、失意の内に都落ちしてきた元二代目センター・岩崎志保という組み合わせだ。ライブのオープニング、MC抜きで「Wake Up, Girls!」が「7 Girls War」、「I-1club」が「止まらない未来」、「ネクストストーム」が「レザレクション」を順番に歌ったのは、この3組が共にWUGの世界を担う存在であることを確かに示していた。

「レザレクション」は志保がメインで、3人は志保をサポートする構成だ。だが今日のパフォーマンスは高野や安済が歌声に込めたキャラクター性がよりはっきり伝わってきて、この日のために重ねてきた準備と気合を感じさせた。そして大きなサプライズは「リトル・チャレンジャー」。この曲は島田真夢が初代センターを務めた過去のI-1clubの楽曲で、去年のライブでは島田真夢役の吉岡がI-1の衣裳を着て登場し、大坪らと一緒にオリジナルメンバーで歌ったのがとても印象的だった。だがこの曲は同時に、続・劇場版でネクストストームの新人メンバー3人が歌っている姿を志保に見せ、志保がアイドルとして歌う楽しさ、幸せさの原点を思い出すきっかけになった曲でもあるのだ。「ネクストストーム」による「レザレクション」は甘束のとろけるように甘く不思議なソロがとても印象的で、オリジナルとは全く違う魅力がある。4人のダンスの完成度も高く、高野、安済、甘束がサポートではなく、同じユニットの対等なメンバーとして大坪と並び立って歌っている姿はとても頼もしく、眩しく感じられた。

大坪は、次曲を歌う「Wake Up, Girls!」をライバルとして紹介した。岩崎志保が、島田真夢と同じ立場で対等にステージで戦いたいと焦がれた願いが、現実のステージでも果たされた瞬間だった。ラストに向けた「タチアガレ!」「16歳のアガペー」「Beyond the Bottom」と畳み掛けた流れは本当に素晴らしいクオリティで、これでこそ志保が倒したいと思った「Wake Up, Girls!」だ……と、そんな風に作品世界と現実のライブの境界を超えて感じてしまうのは、『Wake Up, Girls!』という作品が持つ「ハイパーリンク」という特異性があればこそだろう。

アンコールの締めは、キャスト全員が一緒に歌った「極上スマイル」。3チームが入り混じり、センター、メインステージ、二台のトロッコの各所で歌う姿は、WUGライブの新しい可能性も感じさせてくれた。作品世界でのトップアイドルのライブという高いハードルを乗り越えたI-1clubのメンバーが、「I-1clubでライブをやりたい!」「新曲も歌いたい、来年も出たい!」と口々に言っていたこと、新メンバーとして初ライブに立った上田が、志保と大坪に恥ずかしくないライブを見せないとと緊張していたのを、I-1の先輩たちが優しい言葉で和らげてくれたことを話し、「I-1の先輩たちが本当に暖かくて、すごく素敵なチーム、素敵な現場だと感じました」と締めくくっていたのが印象に残った。

2017年の新TVアニメに向けて、新たな道を歩み始める「Wake Up, Girls!」。その傍らには素晴らしいライバルたちの姿が変わらずあるはずだ。

「Wake Up, Girls! Festa2016 SUPER LIVE」セットリスト

M-01 : 7 Girls War / Wake Up, Girls!
M-02 : 止まらない未来 / I-1club (センター鈴木萌歌時代・山本、加藤、福原、安野、明坂、津田、上田)
M-03 : レザレクション / ネクストストーム
M-04 : 素顔でKISS ME / Wake Up, Girls!
M-05 : 少女交響曲 / Wake Up, Girls!
M-06 : 運命の女神 / I-1club (センター岩崎志保時代・大坪、加藤、福原、安野、明坂、津田、山本)
M-07 : シャツとブラウス / I-1club (センター岩崎志保時代・大坪、加藤、福原、安野、明坂、津田、山本)
M-08 : HIGAWARI PRINCESS / Wake Up, Girls!
M-09 : ワグ・ズーズー / Wake Up, Girls!
M-10 : 地下鉄ラビリンス / Wake Up, Girls!
M-11 : リトル・チャレンジャー / ネクストストーム
M-12 : タチアガレ! / Wake Up, Girls!
M-13 : 16歳のアガペー / Wake Up, Girls!
M-14 : Beyond the Bottom / Wake Up, Girls!
【アンコール】
EC-01 : 極上スマイル / 全員