――番組についての素朴な疑問をお伺いします。まずロケスタッフなのですが、何人で外国の方に密着されているのでしょうか?

基本クルーは、ディレクターと翻訳、そしてカメラマンの3人です。

――ディレクターは必ず白いシャツを着ていますが、それは"決まり"なのですか?

決まってはないんですけど、この番組で、成田空港で最初にインタビューを行ったのが僕だったんです。そのとき、僕がたまたま白いワイシャツを着ていたから、その映像を見ていたスタッフが「みんなこれに合わせない?」って。

――では森さんが白いワイシャツを着ていなかったら違うものになっていた!?

はい (笑)。ですから特に深い意味もないですが、統一感も出ますし、また極力ディレクターの個性を抑え、外国の方にスポットライトを当てたいということもあります。

――今となっては、この格好を見れば『YOU~』のロケだと分かってもらえますよね。

番組当初は、僕らが成田空港でロケをしていると「誰か有名人が来るんですか?」と言われていたのですが、今となっては、ありがたいことに「いつも見ています」と。それは励みになりますね。

――あと、これは視聴者も聞きたいことだと思うのですが……密着する外国の方へのギャラは、本当に支払われてないのですか!?

払ってないです。そもそも彼らは"観光ビザ"で入国しているので、ギャラをもらう……つまり働くには"就労ビザ"が必要になってきますから。法律上のことは関係ないにしても、「ごめんなさい、謝礼とかないですけど」と僕たちは必ず前置きします。ですが「欲しい」って人には僕は会ったことがありません。会っても「ごめんなさい」とお別れするだけです。

――次に「外国の方に密着する」ということについてですが、やはり日本人に密着することと比べて、なにかしらの苦労は伴うのでしょうか?

まず単純に言葉の壁があります。また、彼らは日本人のように「きっちりとスケジューリングをして楽しむ」ということをしない方も少なくないので、成田空港で密着の約束をして、待ち合わせ場所に彼らが訪れるかどうかが僕ら的には大きな山場になります。来ないときは本当に来ないですから(笑)。

――DVDに収録されている「指さし編」でも、ディレクターが待ち合わせ場所に来たら、彼らはもう旅に出発した後だったとか(笑)。

そうなんです(笑)。彼らは僕らの撮影のために旅をしているわけじゃないので、基本僕らは関係ないんです。

旅のラスト、マーティンとの別れの際に思わず涙した森ディレクター

――撮影のために彼らを邪魔しないことも基本ルールですよね。

はい。僕たちは彼らに合わせることしかできません。ですから密着の前に彼らに言ってあります。「分からないこととか、相当なトラブルがあったら勿論、僕たちも助ける。でもそれ以外は君たちの自由にやってもらってもいいし、逆に、あんまり僕らを頼らないでね」と(笑)。ノーギャラでこの条件でダメならこちらも諦めますし、でも「いいよいいよ」ってノリの方は意外と多いですよ(笑)。

――相手は外国の方、さらには素人さん。しかもこちらが演出をしないという条件でのロケ番組で、番組が成立するか不安になりませんか?

めちゃめちゃ不安になります(笑)。例えば"大家族もの"のように、皆が興味あるテーマだとかドラマ性がなければ映像としては見ていられない。この番組でも実際に密着をして、ストーリーとして「ただ観光をしただけだよね」ということは多々あって、お蔵入りになることも山ほどあります。

――お蔵入りになると、密着されたほうがガッカリしませんか?

カメラが回ってないときの会話などで、お互いが理解し合えるよう、しっかり関係性を作っておくことも大切です。こちらの力足らずでお蔵入りになるわけですし。お金を払えない分、僕たちも気を使いますし、踏み込んではいけないところには踏み込まない。彼らの"お気持ち"で密着が成り立っていることに意識を置いています。